2021年6月21日(月)より東京、大阪で上演される舞台『天才てれびくん the STAGE 〜バック・トゥ・ザ・ジャングル〜』。NHKの人気子ども番組「天才てれびくん」の舞台版第2弾では、矢部昌暉(DISH//)が主演を務める。2010年から2年間、同番組で“てれび戦士”として活躍した当時の思い出や本作への意気込みなどを聞いた。

ーー約10年ぶりに『天てれ』に戻ってきたお気持ちは?

今の自分があるのは『天てれ』のおかげなんです。その恩返しのような気持ちで、いろいろお世話になった気持ちを込めてしっかりやっていきたいです。

ーー本作の出演が決まった時の感想を教えてください。

第1弾が上演していたことはもちろん知っていて「舞台をやるんだ!」と注目はしていましたが、まさか第2弾にお声がけいただけるとは。しかも、主演をやらせていただけることに驚きました。『天てれ』時代も毎年夏頃にイベント公演があったんです。どこか似ているような、懐かしい感覚です。

矢部昌暉

矢部昌暉

ーー台本を読まれて、どんなメッセージを感じましたか?

いろいろと制限や自粛を求められている世の中、コロナ禍の今だからこそやる意味があると感じました。テーマは「娯楽」。娯楽が失われていく世界を舞台に、エンタメの重要性をわかりやすく描いているので、子どもが観ても楽しいですし、大人の方も考えさせられる内容だと思いました。

ーー本人役での出演という点はいかがでしょうか。

矢部昌暉役という自分の役を作るのは難しいですね。ただ、演出の小林(顕作)さんとお話ししたときに、演出方法として役者のパーソナルな部分をもっと出したいとおっしゃっていました。キャラクターを作るというよりは、素の自分に近い感じにやっていけたらと今のところは考えています。

ーー長江崚行さんとは共演歴も長いですが、本作について何かお話はされましたか?

先日まで“青オペ”(舞台『青山オペレッタ THE STAGE 〜ノーヴァ・ステラ / 新しい星〜』)で共演していたので、お互いに「懐かしいね」という話をしました。当時、僕と崚行ともう一人で歌っていた楽曲を「覚えてるかな?」って久しぶりにちょっと踊ってみたんです。すごく盛り上がりました!

矢部昌暉

矢部昌暉

ーー『天てれ』時代の思い出を教えてください。

今でもよく覚えているのが、当時ドラマパートの撮影で行った地方ロケ。泊まりだったので盛り上がってしまって、次の日にみんなで撮影に遅刻してしまったんです。もちろん、スタッフさんにめちゃくちゃ怒られて(笑)。その当時はすごく怖かった経験で、そこからはやむを得ない事情がある以外の遅刻は一切していません。

ーー当時の経験が、今の矢部さんの土台になっているんですね。

舞台、芝居、音楽、トーク、バラエティ、ロケ……言ってしまえば、この世界で活動するためのすべてをやらせてもらいました。表側だけではなくて、例えば目上の方と話す言葉遣いや現場でのマナーも含め、小さなことから大きなことまで全部を『天てれ』で教わりました。

ーー特に「『天てれ』のおかげだな」と実感した瞬間は?

やっぱり、歌での変化は大きかったですね。本当に音が取れなくて、下手だという自覚もあった。『天てれ』に歌が必須だということはもちろん知っていたので、オーディションの時に「すごく音痴です」と申告したんですが、なぜか受かってしまって(笑)。そこからレッスンを経て、ちょっとずつ歌えるようになっていきました。今もうまいわけではないですけど、『天てれ』への出演がなければ歌も成長してなかったはず。最初のうちはダメダメでしたけど(笑)。

矢部昌暉

矢部昌暉

ーー苦手を自覚している分、踏み出す勇気は相当必要だったのでは?

それがですね、当時歌が下手という自覚はあったんですが、それを恥ずかしいとは思ってなかったんです(笑)。小さい頃、母と二人で自転車に乗っている時も「下手なんだからやめなさい!」って言われても気にせず、ずっと歌ってたくらい(笑)。自分の歌を聞いてもらうことは今でもちょっと恥ずかしさはありますけど、人前に立つこと自体に対する恥ずかしさは感じてませんでした。

ーー出演当時は中学生。どんな子どもでしたか?

すごい反抗期で、親には迷惑をかけてしまいました。たぶん、テレビに出て調子にのっていた部分もあったのだと思います。毎日親と戦ってましたし、時には騒いじゃいけないマンションの廊下で追いかけっこもして。高校生の頃にようやく落ち着きました。3歳下の弟がいるんですけど、弟も中学生で反抗期を迎えたのがきっかけでしたね。弟を制さなきゃいけないのが僕の役目でしたし、自分も一緒になって迷惑をかけちゃいけないと思えたので。

ーー大きくなったてれび戦士に再会できるのも本作の醍醐味。あの頃、思い描いた大人には近づけていますか?

まだまだ自分は子どもだなと思ってます。僕の中では30歳からが大人だと思っているので、向かっている最中です。

ーー30歳が大きな節目なんですね。

世間一般では20歳から成人して“大人”という扱いなのかもしれないけど、社会人としてはまだまだスタートしたばかり。先輩や上司がいないと仕事もできないし、自分一人の判断でやれることが少ないと思うんです。自分で考えて行動できたりとか、後輩を指導できたりとか、そういうことができ始めるのが30歳くらいだろうなと。

矢部昌暉

矢部昌暉

ーー10代からテレビの世界に携わり、大人たちの中で生きてきた矢部さんでもそう感じられるんですね。

はい、まだまだです。周りの方の話をうかがうと、30歳くらいから視野が広がった感覚があるってよく聞くんです。僕も早く30歳になりたいですね。

ーーあらゆるジャンルで活躍されていらっしゃいますが、舞台ならではの魅力とは?

生でお芝居をして、生で届けるというリアルさがすごく好きなんです。何度も稽古で同じシーンを演じていても、本番ではまったく違う進化をすることもある。お客さんの拍手やリアクションでテンションが上がりますし、もう一段ギアが上がった芝居にもなる。そういうやりとりが好きですね。幕が上がってから最後まで、役として気持ちを通していけるのも、その人物になりきれるというリアルを味わえるのも魅力的です。

ーー本作も、そのリアルさが光る作品になりそうですね。

役名が自分自身の名前というところも、またリアルですよね。歌ありダンスありで、華やかな舞台になりそうで楽しみです。

ーー公演を楽しみにされている皆様へメッセージをお願いします。

僕にとって『天てれ』は原点。こうしてまた原点に帰ってこられて本当にうれしいです。あらすじのメッセージに“大人になったきみたちへ”とある通り、大人になったてれび戦士の姿を、大人になった矢部自身の成長を感じてもらえたらいいなと思います。座長としてカンパニーを引っ張っていくことはもちろん、みんなで笑いあえる楽しい作品にします!

矢部昌暉

矢部昌暉

取材・文=潮田茗   撮影=中田智章