柿喰う客の新作本公演『滅多滅多』(めっためた)が2021年5月21日(金)、東京・本多劇場で開幕した(5月30日まで)。SPICEでは、前日に行われたゲネプロ(総通し稽古)の模様をお届けする。

多彩な劇作を発表してきた作・演出の中屋敷法仁による柿喰う客の最新作は、大人と子供と怪異が交錯する、ホラー・スリラー・ミステリーとなっている。2021年に加入した新メンバー7名を含む怪優20名が、時空間の歪むようなスペクタクルの空間を立ち上げた。

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

舞台は、夕闇がせまる4時44分の「高天原市立秋津島小学校」。恨み、憂いが渦巻く学校で起こった、忌まわしい過去が明らかになっていく。

登場するのは、高天原市立秋津島小学校の教員7人、5年3組の7人の子供、そして6人の学校の七不思議だ。冒頭から息もつかせない怒涛の勢いで繰り出されるセリフに、柿喰う客ではお馴染みのテンションだと分かっていても、思わずのけぞってしまう。

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

卒業式のシーンから始まるが、この時点で観客は学校で起きた悲劇を知らされていない。彼らが話す言葉には腑に落ちないものもあるのだが、思考を働かせる余裕を与えず、待ったなしで観客を学校の不可思議な異空間に引きずり込んでいく。

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

7色の照明が特徴的だ。役者たちに不穏な空気をまとわせ、舞台をホラーに照らしている(照明は松本大介、照明操作は長谷川 楓)。舞台上の時間が逆行しているかのような感覚にも陥るが、ある出来事をきっかけに卒業式から時間が止まっているのだという。

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

野球が始まったかと思いきや、金属バットを振り回して殴打し、補習に来た教師は生徒を続け様に殴る。とはいえ暴力的な描写よりも凄まじいのは、やはりセリフの掛け合いだったりする。バイオレンス、エロ、ナンセンス、ユーモアがたっぷり詰まった、ハイカロリーな言葉の数々を堪能したい。

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

この血塗られた学校のミステリーを紐解く登場人物は、教育実習生の井笠真白(いかさ ましろ/田中穂先)。謎の中心にいる少女・五輪瑠子(いつわ るこ/永田 紗茅)の身に起きたことが、次第に明らかになっていく。

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

五輪を気にかけている養護教諭のセクシーなお姉さん・洞 福乃(ほら ふくの/福井 夏)の過去にも何かあったようだ。しかし、物語は二転三転する。「怖いのは、理性と知性と平常心がある証拠」というセリフにスッと背筋が寒くなるが、平静に理解したつもりでいると意外な展開に振り回されるので、怪異以上に厄介な設定もお楽しみに。そもそも登場人物たちの名前が不審すぎる!

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

そして少女はグラウンドにたどり着く。リコーダーを盗んだのは誰か? 心も体も穴が空いたドーナツとは? 子供たち6人がこっくりさんの力を借りて成し遂げようとしていることとは何か? 彼らを襲った不幸がまたエグい。

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

そんな中、少女の想いが叶えられたときに流れる静かな時間は、爽やかな風が吹くように感じられる。硬直した空間も解体されていく。救いのない展開が続き、メチャメチャになった心に訪れるカタルシスをここで味わいたい。

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

また劇後半の歌のシーンも見どころになっており、楽しませてくれる。時間が流れる感覚も戻ってくるようだ。

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

さて、物語は幾重にも仕込まれたトリックによって、最後まで本性を見せない。「あれは伏線だったのか」と思った直後に裏切られるのだからたまらない。そういえばミステリーではモノローグで語られる言葉は、信用できるとは限らないのだった。滅多滅多の「めた」は、メタフィクションのメタにもかかっているのだろうか……?

七不思議以上に人間の方が曲者揃いだったりする。いい意味で裏切り続けてくれる作品に、心して挑もう。

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

柿喰う客『滅多滅多』(撮影:神ノ川智早)

最後に、主演の田中穂先より届いた開幕コメントを以下に紹介する。

田中穂先(主演)
『滅多滅多』はホラー・スリラー・ミステリーと銘打った劇団の最新作にして野心作。背筋も凍るような恐怖の物語ですが、その奥底には切実な愛、人間への優しいまなざしがあります。劇団結成15周年、新たなメンバーも加えた総勢20名で、本多劇場からイマジネーションの扉を開きます。絶望感や無力感に苛まれることの多い現代社会、この作品が皆様の心をほがらかにするものとなることを願っています。
劇場で!あるいはライブ配信で!どうぞお楽しみください!!
 

取材・文=石水典子  写真撮影=神ノ川智早