舞台を見つめる観客たちは、それぞれどんな思いでチケットを求め、劇場に足を運んだのだろうか……?
舞台上ではなく“客席側”にあるドラマにスポットを当てる異色の舞台、『観劇者』が6月30日(水)〜7月4日(日)まで、池袋のシアターグリーン BIG TREE THEATERにて上演される。作・演出は構成作家・脚本家として幅広く活躍する開沼豊。そしてキャストにはベテランから若手まで、個性豊かな男女9人の俳優が揃った。

公演初日をおよそ4週間後に控えた6月某日。キャスト陣の中から堀田竜成、林明寛、長戸勝彦の3名に集まってもらい、“男子会”と称して特別インタビューを行った!

M列9番 高木 蓮の場合/諦めきれない夢との向き合い方

堀田竜成

堀田竜成

ーー今回は舞台の客席側を描くという、ちょっと珍しい趣向の作品ですね。お客さん役の皆さんひとりひとりがドラマを抱えていらっしゃるそうですが……堀田さんが演じる「蓮(レン)」は、“主演を務めることになった友人を見に来た男”だそうですね?

堀田:蓮くんはとても努力家で真面目で、すごく負けず嫌いなんです。でもだからこそ、過去にその軸が折れてしまって、自分に自信が無くなってしまってるんですね。
僕はどっちかっていうと、うわーって明るいタイプなので、蓮の友達の「祐二」(主演を務めることになった友人)の方が実は近いかなって。僕、めちゃめちゃ根っから真面目ってわけではないんで(笑)今回は普段の自分とはちょっと違ったところを引き出していけるチャンス。なので、そこを自分なりに表現できたらって思います。

ーー日頃は明るいタイプとのことですが、すごい落ち込んだりすることってありますか?

堀田:そりゃありますよーーー!もう、毎日落ち込んでますよ、僕。

ーー蓮のように、堀田さん自身は何か大きな夢を諦めたことは……?

堀田:ああ、でも一回僕、芸能を諦めましたね。だから20歳で看護師になって、4年半働いて、でも諦めきれなくて……そこは蓮と一緒かもしれないですね。諦められなかったんですよ。でもひとつのきっかけがあって、マジで後悔したくないなって思って、即仕事辞めて1ヶ月後には東京出てきて。それで路上ライブからスタートして、この業界に挑戦したんです。

ーーその、きっかけについて聞いてもいいですか?

堀田:結構重い話になってしまうんですけど……看護師時代に、救命救急にいて。自分より若い人の死に触れたことが大きいです。いろんな夢があって、いろんな未来を想像して生きてた人が、急に亡くなってしまうことがあるんだって。俺も明日死ぬかもしれないし、もしかしたら今日死ぬかもしれない。いつやろう、明日やろうじゃなくて、すぐ行動しないと本当に後悔するなって思って。それをきっかけに、何も考えずこの業界に飛び込みました。

M列5番 大澤 亮太の場合/パートナーと「好き」を分かち合うこと

林明寛

林明寛

ーー林さんが演じる「亮太」は“彼女候補の女に連れられて、彼女の推しを見に来た男”とのことですね。亮太について教えてください。

林:いるんですかねぇ、こんな天然な人!東京にはいないんじゃないかな(笑)。岩手の端っことかにギリギリいる可能性がある? ってくらい、相当ピュアですよね。そのまっすぐさをいかに相手役(舞)に伝えて、惚れてもらえるかっていうのが勝負ですね。

ーー自分の好きな人が推してる俳優の舞台を一緒に観に行く……って、ちょっと嫉妬というか、心中穏やかでない状況なのでは?

林:実は僕も、かつてこの物語みたいな感じを体験したことがあって! ファンの子が一回、「私の彼氏なんですけど、今日は一緒に応援できたらと思って」って、自分の彼氏を(僕の出演する)舞台に連れてきてくれたことがあったんですよ。

ーーそのときの、彼の反応はどんな感じだったんですか?

林:「あ、どうも……」みたいな。その彼も必死で闘争心を隠してるつもりなんだろうけど、明らかにバッチバチに敵視されてしまっているという……そんなつもり無いのに(泣)。

長戸:俺のお客さんでも、恋人ができて来られなくなっちゃった人いたなあ。彼氏側からすると、そこは複雑な思いがあるかもしれないね。

林:そうなんですよね。

ーー果たして、亮太の場合はどうなるのか……気になります! ちなみに林さん自身は、自分の趣味の世界にパートナーを引き入れたいタイプですか?

林:入れたいっすね!僕はめちゃめちゃ引き入れたいです、寂しがり屋なんで。釣りとか一緒について来てほしいな。

M列10番 一条 勉の場合/子どもと、その夢を守るには

長戸勝彦

長戸勝彦

ーー長戸さんが演じる「勉(ツトム)」は“出演する娘を見に来た父”とのことですね。

長戸:ええ、ごく普通のお父さんです。俳優を目指しても、それで食べていける人は本当に少ないわけで、子を持つお父さんなら誰もがきっとこういう気持ちになると思うんですよ。僕だってもし娘がいたら、勉と同じことを言ってると思いますね。

ーー「パパ、私演劇やりたいの!」って言われたら……?

長戸:止めますね。全力で止めますね。特に劇団系には入れたくない(笑)僕が劇団出身ってこともあって、苦労がわかるというか(笑)!

きっとそういう反対を押し切ってでも、夢を追いかけてこういう世界に飛び込んだ若者ってたくさんいて、お客さんの中には僕の役と同じような立場の親御さんもいらっしゃると思う。そういう人たちの気持ちを救ってあげられるような、そんなお芝居ができればいいなって思ってます。

ーー長戸さん自身が役者の道に進むときは、ご家族から反対されたりしましたか?

長戸:僕はなかったですね。それこそ40年くらい前の話ですけど、高校の時にオーディションに受かって、それで四国から東京に出てきたんです。親に話をしたら、やりたいことやれと言ってくれて。それで新宿で住み込みでバイトしながら、っていうのが役者人生の始まりです。

もう亡くなってしまいましたが、すごく子どものやりたいことを尊重してくれる親でしたね……でもだからといって、今回僕が演じる勉が、子どもの夢に理解が無いわけではなくて。理解したいんだけれども、なかなかそうもいかないっていうね。

俳優が客席にいるとき 〜劇場のお作法〜

左から 堀田竜成、林明寛、長戸勝彦

左から 堀田竜成、林明寛、長戸勝彦

ーー普段、みなさんは劇場に演劇を観に行かれますか?

林:よく観に行きます。

長戸:昨日も行きましたよ、下北沢に。

ーー堀田さんは?

堀田:僕、それこそ2年前に東京に出てきて、それまでは舞台っていう文化がまずなかったんです。

林:文化って(笑)。

堀田:もともと愛媛出身で、そこから大阪に出たんですけど。東京で自分が舞台に携わるようになって初めて「こんな世界があるんだ!」って。ホントに、全く見たことなかったんです。

やっぱり映像と違って、舞台は毎回空気感が変わるじゃないですか。あと、生だからこそ伝わるもの、表情とかエネルギーとか……そこが舞台の良さだなって思う。気持ちがストレートにトンッと(心に)来るというか、そこが素敵だなって。

ーーよく観劇されるという林さん、長戸さんは、観客席での思い出って何かありますか?

林:ほんっとに演劇始めたばっかりの頃、演劇学校の講師の舞台を観に行ったんです。夏で、僕何か冷たい飲み物を持ってて。当たり前のように自分の隣の席に置いてたんですよ。で、人が来たからどかして……そしたら(結露で席が濡れてたらしくて)座ろうとしたミニスカートの女の子が「冷たあっ!」って(笑)。アタシの席になにすんのよー!みたいに、ずっと超怒ってて。そうだよな、そこは人の席だもんな〜ってしみじみ反省しつつね、そんな怒んなくても、涼しくてええやろ!なんて内心で思ったりして(笑)。

左から 堀田竜成、林明寛、長戸勝彦

左から 堀田竜成、林明寛、長戸勝彦

長戸:僕が20代くらいの頃の劇場って、今みたいにキレイじゃなくて、いわゆる“桟敷席”っていうのがあったんですよ。今は基本的に一列目からちゃんとイスじゃないですか?桟敷席はもう床にただ座布団とかで、こう体育座りして2時間観るのね。キツイんだけど、なんかこれぞ演劇!みたいな感じでしたよ、当時はね(笑)。

空調も整備されてないから暑いんですよ夏は。もう終わった後は(座布団が)びっしょり。でもって、マチソワの間に乾かないから、誰かがいた跡が残ってる上に座るのがねぇ……これも演劇かぁ(苦)なんてね、思いながら。

ーーなるほど、そういった時間や場所を観客どうしで共有することこそが演劇体験だったんですね。どうですか、堀田さんも桟敷席、座ってみたいですか?

堀田:いや……頭の中で想像しましたけど、うーん、一回経験してみたいですね(笑)。

僕は以前、共演者の出ている舞台を観にいった時に、マナーとかを全然知らなくて。コロナが流行する前だったんですけど、普通に帽子かぶってマスクして客席に座ってたんですよ。そしたら、たまたま僕の真後ろに知り合いの舞台関係の方がいらっしゃって、いきなりスパーンってはたかれて。帽子やマスクをつけたまま観るなんて舞台に失礼だろうって。

林:まっすぐな人だなぁ!

堀田:すぐ帽子もマスクも外したんですけど、もうはたかれた衝撃で全然舞台の内容が入ってこない!っていう(笑)。

長戸:帽子はともかく、マスクは喉のケアのためにつけてる人も結構いるけどね……きっと知り合いだからこそ、厳しく教えてくれたんだろうね。

堀田:はい。だからすごくいい勉強になった思い出です。

座席の数だけ生まれるドラマを、楽しんで

左から 堀田竜成、林明寛、長戸勝彦

左から 堀田竜成、林明寛、長戸勝彦

ーーそれでは最後に、劇場へ足を運んでいただく「観劇者」の皆さまへメッセージをお願いします!

堀田:このお芝居は、日常であり得るような、あり得ないような、そういうすれすれのリアリティの話だと思うんです。だからなんていうか、どの人物のどのストーリーにも、共感できるところがたくさんある。この舞台を自分の日常と重ねることで、ありふれた毎日の中にあるポジティブなものを見つけるきっかけになったら嬉しいなって思います。

林:ありきたりなことしか言えないんですけど……このご時世に来ていただけるお客さんには本当に感謝したいなって思っていて。僕らのお仕事は、実際にお客さんがいないと成り立たない仕事です。もちろん、地方の方や来られない方もいらっしゃるとは思いますけど、劇場に足を運んでいただいた方には全力で楽しんでもらいたいって思ってます。

スタッフさんも感染症対策を徹底してくださって。これはルールが一個、強くなった中での(ニューノーマルの)戦いだと思ってるんで。その中で、これが革命的なお芝居になったらいいなって思います。

長戸:ふたりのおっしゃる通り!あと、今回のお芝居の楽しみ方というか、見方について言うなら、もしかしたら普通のお芝居とはちょっと違うかもしれない。全員で何かをするシーンはあまりないので、その分一人一人の役者としての力が試される。誰も助けてくれないんです。だからと言ってスタンドプレーをしたらダメで、ちゃんと全体のバランスの中で、自分の役のポジションを守り抜くっていうことが、このお芝居を成功させる鍵だと思う。

皆さんにはその辺りにも注目していただいてね。役者が苦労している姿を、ほくそ笑みながら観ていただけたら楽しいんじゃないかと思います。ぜひ、お楽しみください。

『観劇者』は6月30日(水)〜7月4日(日)まで、池袋のシアターグリーンBIG TREE THEATERにて上演される。公演情報を知り、チケットを求め、劇場へ足を運び、開演の瞬間を待つ。
あなたならそこに、どんなドラマを見るだろうか。

文=小杉美香 撮影=池上夢貢