舞浜アンフィシアターで行われたファーストライブから約2年を経て、斉藤壮馬が初のライブツアー『斉藤壮馬 Live Tour 2021 “We are in bloom!” 』を開催した。そのファイナル公演となる、2021年5月23日の東京公演の模様をレポートする。

“季節のうつろい、世界の終わりのその先”をテーマに、斉藤自身が作詞作曲を手がけたアルバム『in bloom』。独自の歌詞世界と、内省的でときにエモーショナルな楽曲を、さまざまな表情で歌った斉藤。『We are in bloom!』東京公演の模様は、2021年6月30日にMUSIC ON! TVで放送されることも決定している。

“世界の終わり”に芽吹く、アーティスト・斉藤壮馬の新たな挑戦

静謐なピアノのSEが響く会場に青緑色のペンライトが幻想的に揺れる。コロナ禍で無観客ライブが新たな様式となった今だからこそ、開演を待ちわびるオーディエンスの息を詰めるような緊張感が心地よい。期待感の高まりと共に、ステージの正面と左右に設置されたスクリーンには緑が芽吹き、森へ──。それらが白く弾けると、キューブ状に形作られた光のオブジェの中に斉藤壮馬が登場。


その姿を縁取る蔦が「We are in bloom!」のタイトルを描き、始まりの曲「フィッシュストーリー」へ。「皆さん、『We are in bloom!』にようこそ! 今日は千秋楽です。思う存分楽しんでいってください!」とライブの開幕をコールした。白いドレスシャツ姿で朗々と歌う傍ら、曲が転調するパートでは内省的な表情を滲ませ、観客の心を自身の世界へ一気に引き込んでいく。そして、そのまま加速するように「シュレディンガー・ガール」へ。焦燥感を孕んだギターに掻き立てられながら、甘く切実に歌い上げる。続く「デート」では一転、明るくポップに。軽快に身体を揺らしながら、もどかしい感情を時に「てへぺろ♪」と悪戯めいた笑顔と突き抜ける高音で歌った。

2021年4月17日の福岡公演を皮切りに、愛知公演を経て東京ガーデンシアターで千秋楽を迎えた斉藤。MCでは残念ながら中止となってしまった大阪公演への想いを述べながら、「今回のツアーで行けなかった場所にも、その場所で奏でる音楽をお届けしたい」と前向きなメッセージを贈った。今回の公演では、4曲目を日替わりで演奏してきた斉藤。千秋楽では2ndシングル「夜明けはまだ」を披露した。「デート」にも通ずる、シティポップス色の強い楽曲で、明るく軽快な印象を残した。


ここまでは青い空を彷彿とさせるようなパフォーマンスだったが、ここから少しずつダークで内省的な心象世界へと深く踏み入れていく。雨の演出と共にしっとりと紡がれるのは“世界の終わり”をモチーフにした「ペトリコール」。明度を押さえた紫陽花がワイドに映されたステージで、6月のじとっとした空気を逆説的に妖艶に奏でる。アルバム『in bloom』のリリースに際したインタビューで、「内省的で主観的な、一筋縄ではいかない楽曲が多い」と語った言葉通り、「Vampire Weekend」では不穏な浮遊感と、多面的な歌唱で会場全体を飲み込んでいく。そして「林檎」で危うさが最高潮に高まると、ライブは後半パートへ。


「林檎」に関しては続くMCパートで「『my blue vacation』をリリースした時、“もう1杯も変わんないでしょ?”のフレーズをライブでは皆さんに歌ってもらいますと冗談めかして言っていたんですけれど、実際に歌うとやっぱり息が足りないんですよ」と語り、笑いを誘うシーンも。「世が世ならみんなで歌いたいとか、みんなと一緒にやりたいことが自分の中に自発的に芽生えてくることが新鮮だった」と語り、自身のアーティスト活動を通してあらためてリスナーと共に幸せな時間を積み重ねてこられたと感謝を伝えた。その気持ちは配信を含め、会場中のオーディエンスに笑顔を届けようとする斉藤の行動に込められていて、ギターのコードの長さを気にしながらステージの左右を移動して手を振るなど、茶目っ気のある温かい人柄が伝わってきた。今回のツアーを通して、どんどん前向きな意欲が生まれたと語る斉藤。その“欲”の1つとして、新たなギターを購入したことを発表した。今後のライブでのお披露目が楽しみだ。

ライブ後半は斉藤がギターボーカルを務めるバンド編成に


歓声を発せない状況下でのライブではあるが、「真剣に聴いてくれるみんなの熱い情熱が伝わってきます」と告げた斉藤。それに応えるように、ライブ後半戦は自らギターをかつぎ、バンド編成で臨んだ。その1曲目は「memento」、かき鳴らすギターの音に合わせて会場のペンライトの光が再び躍動すると、カタルシスたっぷりに「メメントモリ」を歌う。


青いスポットライトが差す「エピローグ」では、郷愁を誘う歌い出しから徐々に感情を開放し、バンドサウンドならではの高揚感を放つ。そして、それは「パレット」のシャウトと共に最高潮へ──。

アーティスト・斉藤壮馬の音楽性を醸成させた抒情的バンドのシーンを孕みながら「いさな」へと続いていく。ピアノの旋律にのせて囁くように「ここまで聴いてくれてありがとう、最後の曲です」とタイトルコール。「ゆーあーいんぶるーむ」と曖昧な境界線を優しく撫であげるような歌声で、ギターの旋律がリフレインする。スクリーンに咲き誇る白い花と、衝動的にかき鳴らされるギター、内側から溢れ出すようなシャウトの対比。アルバム『in bloom』の実質的なラストトラックである「いさな」でライブの本編が締められたのも印象的だった。


声に出来ない想いを乗せて、鳴りやまない拍手。すると、軽快なドラミングに合わせて、ツアーTシャツ姿の斉藤が再びステージに登場! タンバリンを掲げ、「めちゃくちゃ楽しいから終わりたくないけど、全力で楽しんでいってください!」と呼びかけた。


アンコールの1曲目は「Summerholic!」、斉藤が歌う「乾杯」のフレーズに乗せて、オーディエンスが一体となって心のグラスを掲げた。「クーラーがんがんの密室」で飛び跳ねる、斉藤ならではのサマーソングで夏を先取り。続くナンバーはアルバムのリード曲「carpool」。キラキラした夏の日々の儚さをポップに歌った。

アンコール2曲を経て、「10代の頃、“ここではない何処か”や“自分ではない何か”を求めていた斉藤少年が、まさかライブをもっとやりたい、この時間を終わらせたくないと思う日が来るとは……。本当に皆さんのおかげです、ありがとうございます」と率直な思いを告げた斉藤。「自分の曲を聴いて、考察してくれる受け手がいなければ、エンターテインメントは成立しない」と今この時期にだからこそより強く響く言葉を続けた。


初めて歌に託したメッセージは“次につながる夜”

そんな斉藤が贈る、アンコールのラストは「最後の花火」。今回のツアーでは全公演少しずつアレンジや表現を変えてライブを構成したと語る斉藤。そんななかでも、千秋楽となる本公演は計算や作戦のない感情のままの表現を大切にしたという。これまで楽曲制作において、「メッセージソングを書かないと決めていた」と語る斉藤だが、「最後の花火」を演奏するにあたって、「今日ここで終わらせるのではなく、次につながる夜にしたいという前向きな想いを込めて書きました。幸せな夜をありがとう。次の素敵な日に会えることを祈って、この曲を最後に聴いていただきたいと思います」と心のこもったメッセージを贈った。

ライブの余韻を味わう、漂うようなメロディに遊び心たっぷりなフレーズが浮かぶ「最後の花火」。斉藤は「さよならはまだ 次にとっておくよ」と歌ったあと、ファンに向かって「この景色は絶対に忘れない、みんなでin bloomです!」と呼びかけた。そして、曲終わりにマイクをステージに置き、自身の肉声で「本日は誠にありがとうございました!」と初のライブツアー・千秋楽を締めくくった。


アルバム『in bloom』をリリースした際、楽曲の解釈について「作り手が意識していない無意識の領域から出てくるものもきっとあると思う」と語った斉藤。今回のツアーで直に音楽を届けることで、またさらにアーティスト・斉藤壮馬の世界が深くオーディエンスの心に花開いたことだろう。『斉藤壮馬 Live Tour 2021 “We are in bloom!”』東京公演の模様は、2021年6月30日(水)にMUSIC ON! TV(エムオン!)にて放送される。ぜひ『in bloom』の一員になってほしい。 

【セットリスト】「斉藤壮馬 Live Tour 2021 “We are in bloom!”」

01.フィッシュストーリー
02.シュレディンガー・ガール
03.デート
04.夜明けはまだ
05.ペトリコール
06.Vampire Weekend
07.林檎
08.memento
09. エピローグ
10. パレット
11. いさな
En01. Summerholic!
En02. carpool
En03.最後の花火 

原稿=本多恵 撮影=浜野カズシ