「出来上がった作品を見るより、稽古場の方が絶対おもしろい!」そんな岩井秀人の発想からスタートした『いきなり本読み!』。本番の舞台上で初めて台本を開いた俳優たちが、岩井の進行のもとでさまざまな”役”を演じ、普段は観客に見せることのない”素”の表情をさらす「初見本読みライブ」だ。

第6回の舞台となったのは渋谷ユーロライブ(2021年6月4日)。客席稼働は50%以下に抑えられていたが、今年初めての有観客開催ということもあり、場内のテンションは高まるばかり。

ここでは、2021年6月11日〜9月23日のアーカイブ配信に向け(極力ネタバレにならないように)当日の模様をレポートしたい。

WARE『いきなり本読み!』

WARE『いきなり本読み!』

まず登場したのは本企画の仕掛け人であり、進行と演出を担う岩井秀人。『いきなり本読み!』お約束の法被をひっかけ、「コロナとともにはじまった『いきなり本読み!』も、とうとう6回目を迎えました」と客席に向かって挨拶。続いてゲストを呼び込んでいく。

この日登壇したのは本企画初参加となる仲野太賀と常連の猪股俊明、後藤剛範の3名。あともう1名、告知の段階ではシークレットになっていたゲストがいるのだが、スケジュールの関係で上演時間中にギリギリ到着できるかどうかとのこと。なにそれ怖い。

と、最後のゲストの名が伏せられたまま、4人が席につき、いよいよNO下読み、NO準備の本読みが始まる。

今回使用された台本は『出所不明の大衆演劇』。というのも、もともと岩井がふと入った浅草木馬亭で観劇し、そのあまりのブっ飛びぶりに触発されて記憶を頼りに自分でも台本化してしまったといういわくつきのホンなのだ(我こそがオリジナル作者!という方はWAREまで連絡してください)。

物語はこんな感じ。

時は江戸。幕府の命で隠れキリシタン狩りが行われ、幼い子供を含めた村人たちが容赦なく斬り殺されていく。そんな中、髑髏の洞窟と呼ばれる場所に謎の化け物が出るという噂が出回り、武士の天宮と山中、そして天宮の右腕・お雪は彼の地へと向かうのだが、そこにいた化け物とは、キリシタン狩りで幼い我が子を斬り殺された十字郎と名乗る男だったーー。

こう書くと、なにやらシリアスなモードを思い浮かべるかもしれないが、そこは『出所不明の大衆演劇』。ストーリーの流れとは関係のないところで、突然、俳優が見得を切るシーンがあったり、劇団☆新感線ばりのハードロックがガンガン流れたりと、完全に出たとこ勝負のエンターテインメント。さらにオリジナルでは、冒頭の30分が”劇団員紹介の舞タイム”だったらしい。完全にパンクである。

WARE『いきなり本読み!』

WARE『いきなり本読み!』

岩井の進行で3人の俳優に役が振られるのだが、ここでいきなりスタートダッシュをかけたのが、ハイバイ初期からさまざまな公演に参加し、岩井の最高の父親役としても名をはせる猪股俊明。「要人(ようじん)」を「要人(ようにん)」と何度も読み間違えてしれっとしているわ、演出の指定に「やりたいようにやってみたい」と逆らうわ、振られた役を忘れて間を作るわ……最高オブ最高のハジけぶり。

と、会場が爆笑に包まれる中、本読み開始から20分ほど経過したところで当日発表ゲスト、松本まりかが登場し臨戦態勢に。

WARE『いきなり本読み!』

WARE『いきなり本読み!』

いきなりお雪役を振られた松本だったが、すぐに役に入り込んで驚異の憑依ぶりを見せる。が、岩井からのオーダーは「もっと力持ちな感じで」。その演出もすぐに落とし込み、見えない体重を30キロ増やした松本はもはや敵なし。声優の経験を活かした見事なマイクさばきで、さまざまな表現を魅せる。

また、ここに来て、後藤剛範が本作を以前観劇していたことが判明。「”いきなり本読み”じゃない」とのツッコミをものともせず、独自のカラーを出しまくる(この人、毎回、狙いなのか天然なのかわからないところで攻めてくるのが凄い)。

WARE『いきなり本読み!』

WARE『いきなり本読み!』

本企画初参加の仲野太賀。ドラマ『コントが始まる』では3人組コントグループ「マクベス」の潤平役としてキレっキレの演技を見せているが、舞台上で初めて触れる台本と向き合う姿を見ると、ホイホイ器用になんでもこなす俳優ではないと感じる。1度目に台本を読んだ時と、岩井の演出を聞き、それを自身で飲みこんでからの芝居の深度がまったくと言っていいほど違うからだ。きっと普段は丁寧に作品や役を咀嚼し、芝居を積み上げていくプレイヤーなのだろう。

そんなこんなで、舞台上に”ザ・京本政樹”が2人登場したり、筋肉系がかぶったりとたくさんの爆笑が生まれ、自在に変化する俳優たちのポテンシャルに感動したところで約2時間の「本読み」が終了。

これまでも何度か『いきなり本読み!』で奇跡が生まれる現場に立ち会ってきたが、6回目となる今回にキャッチフレーズをつけるとしたら「全員、飛び道具」。これだけ良い意味で着地点が見えなかったのは初めてかもしれない。

その「飛び道具」たちをポジティブに引き上げながら、時にツッコミを入れ、時に思いもよらない演出をつける岩井秀人の采配。俳優個々に1番適した言葉のボールを投げ、その瞬間しか見られない世界を創り上げるさまは今回も見事だった。

『第6回 いきなり本読み!』の模様はアーカイブ配信にて視聴可能。4台のカメラで撮影された一夜の”祭り”の模様を画面にツッコミを入れながら観るのもオツかもしれない。個人的にお薦めしたいのは、なぜか時代が江戸から現代(?)に飛び、某デュオっぽい人たちが出てくるあのシーンです。

取材・文=上村由紀子(演劇ライター)