2021年8月12日(木)、この日1回限りのコンサート『リビングルーム・コンサート 1st Anniversary  岡幸二郎 ミュージカル スペシャルコンサート』がサントリーホール 大ホールにて開催される。

リビングルーム・コンサートの始まりは、2020年6月〜7月の『Streaming+ LIVING ROOM CONCERT』。岡が企画・構成・MCを務め、全5回の配信が行われた。その後はリニューアルされ、9月に『岡幸二郎 ミュージカル・ナイト』、12月に『岡幸二郎が聴きたい ミュージカルの醍醐味、魅惑のコーラス!』として、配信とリアルで同時開催されて好評を博した。そんなリビングルーム・コンサートの1周年を記念し、岡を中心としてコーラスの吉川恭子、水野貴以、尾川詩帆、上野哲也、田中秀哉、間 聖次朗、ピアニストの山中惇史らが集い、華やかなコンサートが開催される運びとなった。

本シリーズの企画・構成、さらにMC・歌唱で出演を控える岡に、ミュージカルコンサートの魅力をたっぷりと聴くことができた。

リビングルーム・コンサートシリーズで感じた手応え

ーー2020年に始まったリビングルーム・コンサートシリーズ。その手応えをお聞かせください。

私は長らくコンサートをずっとやってきましたが、昨年は配信ならではのコンサートというものをいろいろ考えてやってみたんです。すると案外、お客様は喜んでくださいましたね。最初は私が出るから、ゲストに○○さんが出るから、というきっかけで観てくださっていたかもしれません。でも何回かコンサートを繰り返すうちに、「あ、岡さんの企画って面白いな」と感じていただけたようなんです。

ーーリビングルムーム・コンサートは、最初から岡さんが企画していらっしゃるんですよね。

そうです。私はコンサートを通じて、日本の音楽界やミュージカル界の素晴らしい方たちを全力で推したいんです。こんなに素敵な方がいるんだ、こんなにいい曲があるんだ、ということをお客様に発掘していただきたいなと。

岡幸二郎

岡幸二郎

ーー過去のコンサートの実績から、今回のスペシャルコンサートに繋がったのでしょうね。

2020年12月に『岡幸二郎が聴きたい ミュージカルの醍醐味、魅惑のコーラス!』というコンサートを開催したのですが、その反響が結構大きかったんです。配信とリビングルームカフェでの開催でこれだけすごいんだから、それがホールで聴けたらどれほどすごいことになるんだろうと。そして今回、サントリーホールという場所でコーラスメンバーと一緒にコンサートをやることになりました。

ーー1階のスペシャル席(限定50席 20,000円)は既に完売していらっしゃるとか。

限定50席ですからねえ。このスペシャル席を狙っていたのに買えなかったという方が、多くいらっしゃるようなんです。私はポジティブシンキングな人間なので、そう言ってくださるということは「岡がやることだから20,000円を出してもきっと楽しめるだろう」と思ってくださっているんだろうなって。勝手にそう思っています(笑)。

ーーコンサートホールの殿堂と名高い、サントリーホール 大ホールでミュージカルのコンサートが行われることも貴重ですね。

とにかく場所がすごいですよねえ! そんな場所でミュージカルの人間が、ピアノ一台でコンサートをやろうとしているわけです。誰でも借りられるホールではないですし、本当にありがたいですね。きっと同業者は「また何をやってくれているんだ岡は」と思っているはずです(笑)。

ーー岡さんがこうして新たな道を開いてくださることによって、いずれ次に続いていく方が出てくるかもしれません。

そう甘くはないですけどね(笑)。でも、何事も先にやるっていうのはいいですね。誰かが道を作っていかないと。今回はオーケストラコンサートではないですが、私が初めてオーケストラでコンサートを開催したのが20年くらい前のこと。4K nightsという、私と石井一孝、戸井勝海、吉野圭吾の4人のユニットでCDを出したときなんです。おそらくそれが、ミュージカル俳優がフルオーケストラで歌い始めた最初の頃だったと思います。そういったコンサートも今ではどんどん増えてきましたね。

ーー本公演に参加するコーラス6名(吉川恭子、水野貴以、尾川詩帆、上野哲也、田中秀哉、間 聖次朗)は、やはり岡さんが選んだのでしょうか?

はい。私が全員選びました。

ーーなぜその6名を?

まずはバランスを考えました。あとは「この曲のこのパートを歌ってもらおうかな」といろいろ頭の中で想像しながら決めました。みなさん役もバリバリできるような方ばかり。上野くんは『ミス・サイゴン』でクリスを演じていたし、尾川さんは劇団四季の『ウエスト・サイド・ストーリー』でマリアを演じていました。でも、一番は人間性ですね。個々をフューチャーして、誰が主役とか誰がアンサンブルとかない感じで、みんなが活躍できるようなコンサートにしたいです。

岡幸二郎

岡幸二郎

ーーきっとみなさんの人間的な魅力も感じられるようなコンサートになるのでしょうね。

自分が企画するときにいつも大事にしているのは、参加した人たちの力がそこでちゃんと出せるということ。岡幸二郎のコンサートだからといって、岡だけが目立っていてもつまらないでしょう。出演する人たち全員の実力が100%出るように持っていきたいんです。例えば僕が選曲をしてコーラスの方にお願いするとき、「こう歌ってね」「こう歌っちゃダメだよ」なんてことは一切言いません。その人自身の世界観で表現してくれると思うので、私も楽しみです。

ーーコンサートのタイトルに“ミュージカル”と入っているということは、やはり全曲ミュージカルナンバーを?

全部ミュージカルです。まだ曲目は決めている最中なのですが、『オペラ座の怪人』の「マスカレード」や『ライオンキング』の「サークル・オブ・ライフ」辺りは必ず入れたいなと考えています。

ーーこのシリーズでずっとピアニストを務めていらっしゃる、山中さんが再登場します。

彼は対応力が素晴らしい。譜面を渡せば素晴らしい演奏をしてくれるし、「ちょっとキーを変えたい」と伝えれば一瞬にして変えてくれます。山中くんはミュージカルを一度も観たことがないのに、何十回も観ているかのようにピアノを弾いてくれるんです。

ーーえ! 一度も観たことがないんですか?

ないんです、本当に。観ろと言っても観ない(笑)。「うちの姉が『レ・ミゼラブル』のDVDを持っていました」と言いながら、彼は観ていないんですよ(笑)。

ーーピアノ一筋の方ということですね。

そうですね。今回はコーラスを入れてオーケストラで演奏するような曲が多いので、結構大変だと思うんです。でも山中くんは物怖じしない人ですし、彼ならやってくれるだろうと。

ーーお二人の信頼関係はバッチリですね。

はい、大丈夫です! こうやってどんどん彼のハードルを上げておかないとね(笑)。

「私はMCで笑わせて、歌で泣かせるタイプの人間なんです」

ーーこうしたコンサートやイベントの企画は、いつ頃から興味があったのでしょうか?

企画するのって昔からすごい好きなんです。小学校6年生のときに生徒会長をやっていたのですが、ちょうど学校で秋祭りというイベントが始まったんです。そこで企画に携わって、仮装大会とかいろんなコンテンツを盛り込んだお祭りにしました。

岡幸二郎

岡幸二郎

ーー子どもの頃から企画することがお好きだったんですね。

そう、プラモデルが嫌いな子どもだったんですよ。なんでプラモデルが嫌いかと言ったら、誰が作っても同じ形になっちゃうから。よく兄がプラモデルを作っていましたが、何が面白いのかさっぱりわからない。それよりも「その人にしか作れないものを作る方が楽しいじゃん」と子どもの頃から思っていました。

ーー今回のコンサートで、岡さんはMCと歌唱の両方を担当されます。

私はMCで笑わせて、歌で泣かせるタイプの人間なんです。MCがつまらないコンサートほど、つまらないものはないですよね(笑)。たとえどんなに歌がうまくても、MCがダラダラしていたらもったいない。さだまさしさんのコンサートなんて、4時間近い上演時間の中で半分以上MCに時間使って喋るんですよ。でも、お客様は超満足で帰るんですよね。やっぱりMCって大事だなあと。

ーーMCをするときに心掛けていることはありますか?

私が心掛けているのは、その人のキャラや魅力がちゃんと出るような話に持っていくということ。MCに台本はありませんが、その点は自分の中でちゃんと考えています。考える中で「ここは触れていいのかな?」と思ったときは、事前に本人に確認します。ただ「歌うまいですね」「何の作品に出ていたんですか?」なんて話しても、白々しいしつまらないと思うんです。なので、聞いている人の印象に残るような話をするようにしています。MCのトークって意外とお客様は覚えていてくださるんですよ。今回のコンサートでも、お客様を飽きさせないように歌とMCの緩急をつけながら、サントリーホールの品位を落とさない程度に(笑)、楽しめるものにしたいと思います。

ーー岡さんが考える“ミュージカルコンサート”ならではの魅力をお伺いしたいです。

ミュージカルって、1作品観ると大体2〜3時間くらい。でもコンサートとなると、その作品の中から1曲ずつ、あるいは場面だけを切り取って歌うわけですね。歌う人間としてはただその曲を歌うだけではなく、曲の前後のストーリー、作品の持つメッセージなどを全部網羅して歌います。だからお客様にとっては、本当においしいところのダイジェスト版のミュージカルのようになると思うんです。もちろんその作品の衣裳もセットも照明もないけれど、曲を聴くことで見えないものが見えてくる。それがミュージカルコンサートの魅力だと思います。こちらも想像力を働かせて歌いますし、お客様もより想像力を持って曲を聴いていただけるので、さらにその作品の世界に浸れるのではないでしょうか。

ーー最後に、コンサートを楽しみにしているお客様へメッセージをお願いします。

とにかくミュージカルの音楽を楽しむためにいらしてください。それに尽きます。きっとミュージカルをたくさんご覧になっているお客様がお越しになると思いますが、今回初めてミュージカルに触れる方もいらっしゃるかもしれません。そういう方がコンサートで曲を聴いて、その本編を観てみたいと思ってくださったらベストですね。素敵なホールの贅沢な空間で、声の力と音楽の素晴らしさを堪能していただきたいと思います。

岡幸二郎

岡幸二郎

取材・文=松村蘭(らんねえ)  撮影=中田智章