go!go!vanillasが3月24日にリリースした最新アルバム『PANDORA』を携え、4月の大分公演を皮切りにスタートした全国ツアー『PANDORA TOUR 2021』が、7月3日(土)のZepp Haneda公演でファイナルを迎えた。当公演は振替公演もあり事実上のファイナルでは無くなったものの、当ツアーの節目にあたる公演であり、コロナ禍で会場に足を運べない人々にも『PANDORA TOUR』のライブを届けたいという想いから、YouTubeでの無料生配信も実施。有観客・配信視聴者含め2万人以上が熱狂した圧巻のパフォーマンス、そして初のアリーナツアー開催という超重大発表が行われた当公演の模様をレポートする。

『PANDORA TOUR 2021』オフィシャルレポート

【※この記事には演奏曲目や演出の記述があります。振替公演にご来場予定の方はご注意ください】

go!go!vanillasの全国ツアー『PANDORA TOUR 2021』の東京・Zepp Haneda公演が7月2・3日に行われた。今年4月に始まった同ツアーは、新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインに沿った形で開催中だ。そんななか、東京2日目の7月3日公演では、YouTubeでの生配信も実施。2時間超に及んだ熱いステージ、そしてステージ上で行われた“超重大発表”は全国のファンにも届けられた。


これまでのツアーとは異なり、ステージの幕が下りた状態で開演。照明の光が牧 達弥(Vo/Gt)のシルエットを浮き彫りにさせるなか、「アダムとイヴ」でライブが始まった。アルバム『PANDORA』のリード曲ながら、バンドの新機軸といえる曲調だった「アダムとイヴ」。タイトなビート、クールな照明演出が鮮烈な印象を残していく。MCで本人も言及していたので先に書いておくと、このとき牧のボーカルは本調子ではなかった。しかしそれより重要なのは、すぐにペースを取り戻してみせたこと。人の本質はピンチのときにこそ出るものだ。


弾き語りでの歌い出しで「東京の未来に〜♪」と歌詞を替え、それを聴いた観客が拍手で返したのは「アメイジングレース」。こういうライブならではの光景はいつ見てもたまらないが、ライブ感といえば「お子さまプレート」も外せない。「This is Rock 'n' Roll !!」と牧が叫び、ジェットセイヤ(Dr)が中指を立ててからのアウトロでは、ギラギラの照明の下、全員がガムシャラに楽器を鳴らしまくる。柳沢 進太郎(Gt)がひたすらに弾き倒すラストまで最高だった。爽快な「SUMMER BREEZE」。それぞれのソロも熱量マックスだった、4人ボーカル曲「デッドマンズチェイス」。長谷川プリティ敬祐(Ba)の「E」「M」「A」ポーズからの「エマ」。これらはいずれもライブ定番曲だが、フレーズの絡み方やグルーヴ、そもそもの音の鳴りが以前とは大きく違っていて、ツアーでの進化が読み取れる。シンガロングがなくても寂しくないのは、私たちが声を出せない分、メンバーが大きな声でコーラスしているからだろう。結果、観客のジャンプで床が揺れるほどの盛り上がりに。牧が「楽しんでますかー!?」と尋ねれば、わーっと拍手が発生する。


7曲目の「倫敦」は、歌詞に大量の固有名詞を盛り込むことでカルチャーへの愛を表現した曲だ。今回のツアーでは鉄板曲が早い段階で演奏されていて、その代わり、後半は『PANDORA』収録曲がメインになっていた。それは、“サイシンサイコウ”を地で行く自分たちのことを、誰よりもメンバー自身が誇っている証だろう。子は親の鏡、ファンはバンドの鏡というわけではないが、観客もそれぞれにライブでの『PANDORA』の楽しみ方を見つけている様子。例えば「倫敦」では、歌詞に因んで牧が乾杯のしぐさをする→前方の観客が同じようにする→牧が「いいね」と返すという場面があった。


柳沢、プリティ、セイヤが曲間を繋げるなか、「俺らが音楽鳴らしてみんながこうして受け取ってくれる。そういうシンプルなことが今一番大事なんじゃないかと思います」と牧。そこから、“世の中が苦しくなるほど、夢をはじめとした不完全なもの、発展途上のものは求められなくなってしまう”、“しかしプレイヤーの体調によって音が変わるバンドのように、泥臭くて偶発的なものの方が面白い”という持論を展開。そして「ca$h from chao$」に繋げた。柳沢ボーカル曲「伺いとキス」のサイケデリックな世界観は、生で聴くとなお強烈(そしてメンバーが超楽しそう)。フォーク調のメロディに癒される「ロールプレイ」は、きっと相当訓練したのだろう、コーラスワークも美しい。


「鏡」から後半へ。(コール&レスポンスならぬ)コール&手拍子から始まった「カウンターアクション」、牧&柳沢のツインボーカルで疾走する「クライベイビー」、“ハードロックもスカもパンクも、なんでもござれ!”的な音像が笑っちゃうほど楽しい「one shot kill」と曲数を重ねていく。2021年を生きる私たちのテーマ曲として「No.999」、「平成ペイン」が鳴りわたると、本編ラストのMC。ここでは牧が、ライブ冒頭で声が詰まってしまったことについて「悔しかった」「申し訳なかった」と言及。さらに「その悔しさで、そのあとの自分を奮い立たせてみんなにぶつかれた」とし、「言い訳にしたくないけど、全部繋がってる。だから大丈夫!」と言いきった。自分を大きく見せようとせず、等身大のまま、目の前の一人ひとりと向き合う牧を見て改めて思う。その身から出てくるものだけを言葉にし、音楽にして鳴らすバンドだからこそ、バニラズのことは信頼できるのだと。


「今日は遊びに来てくれてありがとう。最後に、俺たちの希望をみんなに歌って終わります」(牧)。本編を締め括ったのは、アルバムのラストに収録されている表題曲「パンドラ」だった。牧が言っていたように、バンドと観客は「絶対に活動し続けます」「絶対に聴き続けます」と約束しているわけではない。しかし契約や血縁ではなく、意思と選択で繋がる“愛すべき他人”同士の絆は、少なくとも今このときは固いのだと信じたい。彼らがライブに来た人に対して「兄弟のように思っている」と伝える理由は、そういうところにあるのではないだろうか。


アンコールではまず、一つの恋を二者の目線で描いた楽曲群「ひどく雨の続く午後の寝室より」〜「手紙」〜「馬の骨」を演奏。これを以って『PANDORA』の収録曲が全曲披露された。なお、この3曲では、牧はキーボードを、プリティはアップライトベースを演奏。さらに、「FUZZ LOVE」の歌詞が引用されていた。そのあとのMCでは、牧が、プリティが事故に遭った2018年末以降の道のりを振り返り、「何かに希望を持つ、夢を託す気持ちがないとダメだと思うのよ」と語った。さらにそこから「だから一緒に夢見てもらっていい?」と切り出すと、初のアリーナツアー『Yokohama, Kobe Arena Tour 「Life is Beautiful」』を今年11月に開催することを発表。そう、“超重大発表”とはこのことだったのだ! 観客が拍手で喜びを伝えるなか、メンバーも「やったー!」「楽しみすぎ!」「羽田から飛んでくわ!」とそれぞれに気持ちを表現している。


最後に届けたのは「ギフト」。〈今日という日をただ繋いでく これからも変わらずに/新しい陽 その輝き浴びて笑う/それだけだよ〉――バニラズがずっと守ってきた、シンプルだけど何よりも大切な想いを綴った歌が、未来へ橋を架けた。YouTubeでの配信はここで終了したと思うが、実はそのあと嬉しいサプライズがあった。終演後、牧が自ら影アナを行い、会場の人たちに伝えたのは「本日の公演は以上をもちまして終了となりま……せん!」。こうしてメンバーがもう一度登場。「来たお前たちが一番いい思いして帰れー!」(牧)と「Hey My Bro.」を鳴らし、観客とともに笑い合ったのだった。

2年ぶりの全国ツアー、各地で待つ人たちと顔と顔を突き合わせ、バンドにとって本当に大事なものを確かめてきたgo!go!vanillas。このツアーで得たものを抱きしめながら、彼らは初のアリーナツアー、もとい新しい夢へと向かっていく。

※原文ママ

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=西槇太一