2021年7月14日(水)、東名阪ツアーを盛況に終えたばかりのthe peggiesが東京・TSUTAYA O-EASTで対バンイベントを開催。4年前のイベントで知り合い、交流を続けてきたSaucy Dogsを招いての一夜となった。気心の知れたスリーピースバンド同士の競演とあって、この夜はフレンドリーな空気が流れていた。

優しさと心意気で笑顔を作ったSaucy Dog

まずは今年2月に日本武道館公演を成功させたSaucy Dogが登場。せとゆいか(Dr)、秋澤和貴(B)に続き、石原慎也(Vo, G)がリラックスした笑顔でステージに上り、3人がドラムセットの前で拳を合わせる。

幕開けは「真昼の月」。胸の奥がキュンとなるみずみずしいメロディが軽やかに流れ出す。伸びやかで疾走感のあるサビのフレーズが繰り出され、すぐにフロアは暖まった。「楽しんでいきましょう!」を石原が声を挙げ「雀ノ欠伸」に。優しいメロディに乗せて届く「君の良い所はみんな知ってるよ」「自分らしく歩いて行こう」と背中を押すメッセージが、コロナ禍のうっぷんが溜まった胸に響く。「盛り上がって行こうぜ!」と叫ぶ石原に観客が大きな拍手で応える。轟音のイントロから引き込む「ナイトクロージング」では、スリーピースバンドとは思えない表情豊かなバンドアンサンブルで達者ぶりを見せる。

MCでせとがthe peggiesとの出会いを懐かしそうに披露して「最近、対バンイベントに出る機会が減っていたので、こうやって呼んでもらって一緒にできるのは嬉しいです」と今夜を迎えた喜びを語った。ステージはここからメランコリックなフィーリングが心の奥をソワソワさせる「シーグラス」。せとのコーラスが美しく彩りを添える。「BLUE」では荒波を乗り越えるために今があるんだ! と心意気を発散した。

本日2度目のMCに。「ライブは人と人との触れ合い、心が干渉しあってるじゃないですか。今まで当たり前にできていたことができないことにモヤモヤする日々ですが、ライブでこうしてみんなが楽しんでくれていて、みんなの拳や手のひらが見えることが嬉しいです」。石原が音楽を求めているみんなの心を代弁して、今年6月にリリースされたばかりの「週末グルーミー」に。隣でささやきかけるようなハートウォーミングな声で寄り添い、サビはエモーショナルに爆発。Saucy Dogの持ち味である「声」「歌」「メロディ」、そして巧みなバンドアンサンブルが存分に発揮される。

せとが高速で刻むビートでフロアを盛り上げ、ステージは佳境に。ラウドなギターにタイトな8ビートで迫る「雷に打たれて」、僕がお前を救ってあげるよと歌う「ゴーストバスター」、不透明な行き先をものともせずに歩みを進める“青春の向こう見ず感”に心が高ぶる「バンドワゴンに乗って」を続け、「the peggiesと出会ったときに演奏した曲」と紹介して披露した「いつか」で今宵は終演。優しさと心意気がぎゅっと詰まったSaucy Dogのパフォーマンスで会場に笑顔が広がった。

「ありのままの自分が一番素敵なんだ」とみんなを肯定したthe peggies

全会場ソールドアウトに終わった東名阪ツアー『the peggies tour 2021“Feel Black”』のファイナル公演を7月10日、本イベントの4日前に終えたばかりのthe peggies。大きな拍手に包まれながら大貫ミク(Dr)、石渡マキコ(B)、北澤ゆうほ(Vo, G)の順で手を振りながらステージに登場。北澤が突きあげる腕からも気合満点のコンディションであることが伝わってくる。

オープニングナンバーはハツラツとした胸キュンラブソングの「センチメートル」。あと何センチ近づけばいいんだろう? 君が好きだと“あなたとの距離”を歌ったナンバーだ。人と触れ合うことがはばかられるコロナ禍にあって、ここで歌われる「あなたとの距離」が恋愛模様を超えて、「私たちの日々に大切なこと」として様相を変えて響いてくる。私たちはもっと近づきたい、そんな思いが、来るべき晴れやかな日への願いのようにフロアに広がっていく。

北澤の「Saucy Dog、最高のライブをありがとう!」という一声に続いてタイトなバンドアンサンブルで「青すぎる空」が始まる。the peggiesはコロナ禍のなか、1度のツアーの中止を経ての2度のツアーで、声を上げられぬ各地のファンと「最高の場所」を築いてきた。互いに精一杯の力を通わせながら。そのなかで北澤の歌が、the peggiesの演奏が格段にパワーアップしたことが伝わる熱演を見せる。「そうだ、僕らは」では「僕らは自由なんだ 腕を上げろ!」「僕らは生きてやるんだ 声を上げろ!」ともどかしさを振り払うように迫ってくる。曲調はチャーミンングだが、荒ぶるような気合の乗り具合は満点だ。

北澤がMCで仲のいいバンドとの対バンイベントを初開催した嬉しさを語り、「Saucy Dogからもらったパワーをみんなに返します。いい1日にしましょう!」と続ける。普段の北澤は「the peggiesという船」にファンを乗せて、大海原に漕ぎ出す船長のような凛々しさに満ちているが、この夜は、それとはちょっと違う素の部分も垣間見られ、新鮮だ。

ステージは中盤戦に。生き急ぐような性急感で爆音を鳴らす「ネバーランド」。“まだ見ぬ未開の地がどこにあっても見つけ出すんだ!”とフロアのみんなをフックアップする。ディスコティックなthe peggies流パーティーチューンの「Unleash」では、Saucy Dog同様にスリーピースバンドとは思えない、多彩なアンサンブルの引き出しを開けてみせる。切ない恋心を歌う「花火」にスケールの大きなバラードの「アネモネ」でグッと気持ちを惹きつける。

この日のクライマックスとなった「足跡」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第5期エンディングテーマ)を歌う前、北澤は去年1年間、惑いのなかで書き上げたこの曲に込めたメッセージについて、切々とMCで語りかけた。「「誰もがそのままがいいんだ。ありのままが一番素敵なんだ。それをしつこいくらい言っていきたい。みんな、自分の手で選んで生きていけばいいんだ。そんな気持ちをこめて歌います」と。自由であることが許されない日々で、北澤が見つけた答えは、厳しい責任感を背負った肯定感だった。フロアのみんなが息を飲むように「足跡」を歌う北澤を見つめていた。

「こういう機会を一瞬、一瞬、大切にしていきたい」。最後のMCが終わり、ここからステージは一気呵成に突き進む。ライブを盛り上げる鉄板ソングの「スタンドバイミー」「LOVE TRIP」「君のせい」を立て続けに繰り出し、フロアは熱狂。最高潮に高め続けてステージは幕を閉じた。北澤は誇らしそうに、こう叫んだ。「最高に楽しかったです!」

本イベントはthe peggiesの終演後に両バンドのメンバーがステージに集まり、フロアのファンを背景に記念写真を撮影して終了。the peggiesとSaucy Dogが存分に本領を発揮した夜となった。

 

文=山本貴政 写真=西槇太一