片岡愛之助、今井翼が、大阪松竹座『十月花形歌舞伎「GOEMON 石川五右衛門」』に出演する。公演は2021年10月5日(火)より27日(水)まで。作・演出は、水口一夫。

本作は、2011年に徳島県・大塚国際美術館『システィーナ歌舞伎』の第三弾として初演された。天下の大盗賊の石川五右衛門が、スペインの宣教師と、明智光秀の重臣である四王天但馬守の娘との間に生まれた子だったら……という大胆な設定の物語だ。歌舞伎とフラメンコのコラボレーションが話題となり再演を重ね、今回が5回目。愛之助、翼のほか、歌舞伎界からは出雲の阿国に中村壱太郎、加藤虎之助に中村種之助、石田局と名古屋山三の2役で上村吉弥、そして豊臣秀吉に中村鴈治郎が出演する。

8月24日(火)に制作発表が行われ、愛之助、今井、水口、そして松竹株式会社の専務取締役・山根成之氏が登壇した。冒頭に山根氏は、「松竹は、感染症センターの医師の方の具体的なご指導により、安全対策をしています。お客様の客席、ロビーでの安全はもちろん、出演者の楽屋、スタッフの導線やバックヤードにおいても身の安全を守るための対策を施して公演いたします」と説明した。

■GOEMONは幸せな作品です

水口は『GOEMON』について「5回目の上演が叶った幸せな作品」と紹介。初演のシスティーナ歌舞伎では、客席が舞台を囲むアリーナスタイルで上演されたことをふり返る。つづく大阪松竹座公演では、初演の一体感を、劇場公演で再構築するべく、客席通路を活用した演出を取り入れたという。しかし、感染症対策が欠かせない今、一体感を使う演出はできない。

水口「そこでまた、新しい演出による新しい姿の五右衛門を創ります。友情、親子の情、夫婦の愛といった、人の心や情を打ち出していくことで、新たな上方歌舞伎としての『GOEMON』を創り上げていきたいです」

■より歌舞伎味溢れる作品に

五右衛門役の愛之助は、いま舞台をやることについて皆で話し合い、出演者とも相談し、徹底した感染対策をとることで、公演を決めたと明かす。

愛之助「この作品は、初めて歌舞伎をご覧になられる方にもわかりやすく作られています。実は歌舞伎のお芝居のパロディーが色々入っていますので、普段から歌舞伎をご覧のお客様は、あのお芝居のあれだ!と見つけていただく楽しみもあります。五右衛門という人物は、大泥棒ではありますが、悪い人ではないと思っています。強きをくじき、弱きを助ける。懐の深いところが大好きです。勤めていて気持ちのいいお役です」

片岡愛之助

片岡愛之助

初演から10年で、5回目の再演となる。

愛之助「新作を作るときは、再演されるような作品を創りたいという思いが、誰しもあるものです。この作品は5度目の再演。嬉しいことです。歌舞伎では同じ役を何度も勤めさせていただくことが多い中、この役ほど回数を勤めたお役はありません。10年分、体は年をとりましたが、トレーニングもしております。6回、7回、10回と、このメンバーで続けていけたら嬉しいですね」

今回、客席の頭上を行く宙乗りや客席でのお芝居はできないが、「マイナスとは受けとめていない」と愛之助はいう。

愛之助「演出を新しくしておみせします。これはお芝居としての進化だと思っています。水口先生と『ああしよう、こうしよう』と話しているのは楽しい時間でもあります。やってみないと分からないこともありますが、これまで以上に歌舞伎味溢れる作品になるのではないでしょうか。楽しみにしていただきたいです。私自身、非常に楽しみです」

■新しい景色がみられるように

3度目の出演となる今井。本作と今井をつないだのは、今井がライフワークとしているフラメンコだった。

今井「フラメンコのご縁で、2013年の大阪松竹座の公演を拝見しました。奇想天外でありながら、歌舞伎の魅力を強く感じ、愛之助さんの大ファンになりました。おこがましくも終演後の楽屋にお邪魔し、僕はこの作品が大好きであることをお話させていただきましたところ、『それであれば、来年一緒に』と愛之助さんに言っていただきました」

そして2014年に、神父カルデロン役で初出演。今井は「愛之助さんは有言実行の方ですね」と信頼を寄せてコメントする。さらに2016年の公演では、カルデロンと霧隠才蔵の2役を勤めた。

今井「歌舞伎の芝居もやってみないかとお話をいただき、僕も身の引き締まる思いがある中、皆さんに手ほどき頂きながら、霧隠才蔵のお役で歌舞伎の芝居に挑戦させていただきました。日本の伝統芸能を守り、常に鍛錬されている方々の世界です。とにかく必死に、歌舞伎のお芝居、型に向かっています」

3回目の出演となる今回も、神父カルデロンと霧隠才蔵の2役を勤める。

今井「水口先生もおっしゃるように、新たな作品としてお見せします。愛情や人との繋がりというテーマで、お皆さまのエネルギーとなる作品にしていきます。愛之助さん、皆さんの胸をお借りし、2つの役を通して新しい景色を見られるよう、一生懸命勤めさせていただきます」

■愛之助のフラメンコ、今井の歌舞伎

愛之助は、劇中でフラメンコを披露する。

愛之助「佐藤先生が、毎回レベルアップした振付をしてくださいます。パワーアップしています。翼君は余裕のようですが、僕らは必死。今回もどんな振りができあがるか楽しみです!」

今井は、前回初挑戦した、歌舞伎特有の台詞回しについてエピソードを明かした。

今井「歌舞伎のお芝居は今回で2回目となりますが、いまだに緊張します。前回は、最前列のご高齢のお客様が、僕の七五調の台詞にあわせて手で拍子をとってくださっていたんです。目に入った瞬間……(一同笑)。皆さんは目も耳も肥えていらっしゃいます。気持ちが引き締まりました」

今井「僕にとっても、僕を応援してくださっているファンの方々にとっても、歌舞伎のお客様と並び、観る、新しい時間をいただいています。歌舞伎のファンの方々のご期待に、まだ答えられまでの余裕はないのですが(愛之助、隣でイヤイヤと首をふって笑う)、きちんとしたお芝居をお見せできるよう一生懸命準備します」

■今井が愛之助に残したもの

愛之助と今井、お互いの人となりについて問われると、愛之助はプライベートでのエピソードを披露した。

愛之助「翼君と僕は、たまたま美容室が同じなんです。ある時、僕の前に、ついさっきまで翼君がいたと。そういう時、よろしく伝えてと言付けをしたり、LINEやメールで一言送ることが多いと思うんです。翼君は、お手紙を置いていってくれたんです。翼君の真面目さや、すごく熱いものを感じることができました。とても嬉しくてこちらから結局お電話をして(笑)。出会った頃から今も変わらず、熱い男です」

今井によれば「お先に失礼します」といったシンプルな内容だったという。

今井「本当に好きだという方には、勝手ながらメモなりお手紙を書くことを、大事にさせていただいていて」と笑顔で答える。そして、主演ミュージカル『GOYA』の名古屋公演に、「愛之助さんが日帰りで観にきてくださいました。この世界の大先輩であり、公私に渡りいつも明るく気にかけてくださる、お兄ちゃんというと失礼ですが……何でもお話できる先輩です」

会見では、14日に他界した、ジャニーズ事務所の名誉会長メリー喜多川氏への思いを問う意図の質問もあった。その中で今井は、高校生の頃に歌舞伎座に連れてきてもらったことを振り返る。

今井「幕が開く前、『あなたがまだ歌舞伎を知らないのは、当然だと思う。けれど歌舞伎役者の重心のとり方とか、そういったところだけでも良いから見ておくように』と。エンタテインメントだけでなく、伝統文化も直に観る機会をくださっていたことを思い出します」

10月5日(火)から27日(水)まで、大阪松竹座での公演となる。

今井「生きていられることにも、尊さを感じられる時代だと思っています。この状況で舞台に立てるありがたみを感じます。しかも僕が歌舞伎に出させていただける。決して当たり前ではありません。表現者は、お客様の前で表現できて生かされると思っています。色々な対策をきちんと取り、その中で、思い切ってやらせていただきたいです」

愛之助「大阪で歌舞伎の1か月興行、身が引き締まる思いです。どうなっていくか分からない状況ですが、一歩ずつ踏み出していくしかありません。お客様、スタッフの安全を一番に、お芝居ができるよう身を引き締めて勤める思いでございます。細心の注意を払いながら千穐楽まで駆け抜けて行きたいです」

取材・文・撮影=塚田史香