音楽劇『海の上のピアニスト』が2021年9月16日(木)から東京芸術劇場シアターイーストほかで開幕する。初日を前にした15日(水)、ゲネプロ(総通し舞台稽古)と記者会見が行われ、出演者の内博貴、藤本隆宏、ピアノ演奏の西尾周祐が作品への意気込みを語った。

(左から)西尾周祐、内博貴、藤本隆宏  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

(左から)西尾周祐、内博貴、藤本隆宏  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

ーーいよいよ初日を迎えますが、いまのお気持ちをお聞かせください。
内:今はいよいよ始まるなぁという気持ちですね。

藤本:ここまで来れて本当に良かったです。こういうご時世なのでどうなるかわからなかったで。実際にお客様の前でやるわけですが、どういう風に観てくださるのか、それを感じながら演じることを楽しみにしています。精一杯やりたいと思います。
 
西尾:もう本番かという気持ちですね。あっという間だなと感じます。毎日稽古をして、楽しいなと思ったんですが、稽古が終わってしまって、ちょっと寂しさもあります。
 
ーーそれぞれの役について、どのようなことを意識して演じられているのでしょうか。
 
内:役を意識ですか。そうですねぇ、僕はもともとそんなに難しく考えるタイプではないので、自然にナチュラルに演じられるように常に思っていまして、演出の星田(良子)さんとディスカッションして作り上げていった形なので、そんなに、これという意識はしていないですかね。
 
藤本:僕はトランペッター役で、(内さんが演じる)ノヴェチェントのことを大好きになる役なので、そういうことも意識しなきゃいけないかなぁと思ったんですが、もう稽古場から大好きになっちゃって(笑)。格好いいんですよね、本当に。稽古場でも格好いいお兄さんだったんですけど、見てください、この格好いい衣裳と……。
 
内:やめてください、やめてください。
 
藤本:ドキドキするぐらい素敵で。その気持ちを忘れないように演じていきたいなと思います。

音楽劇『海の上のピアニスト』ゲネプロの様子  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

音楽劇『海の上のピアニスト』ゲネプロの様子  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

ーー本作のピアノ演奏で意識しているのはどのようなことでしょうか?
 
西山:もう1人のノヴェチェントという意識も強く持っているんですけども、たまに違う登場人物が出てきて、ちょっと弾き分けをしてみたりということもあります。自分以外のピアニストを演じることを楽しんでやっています。

藤本:……ちょっとひとついいですか? 内さんはあまり(役を)作ってないというじゃないですか。でも僕からすると、本当にノヴェチェントのキャラクターそのものなんですけど、実際はどうなのかなぁと思って。
 
内:なんで今掘り返したんですか?(笑)
 
藤本:孤独なピアニスト、芸術肌で。そんなイメージを持っているんですけど、(内さんご本人も)そのままなのかなぁと。そういうところ実際あるんですか? どうなんですか、普段はちゃらけている感じ?
 
内:いや、ちゃらけているところ、見せましたっけ?(笑)。役が描かれているじゃないですか、台本に。それにちゃんと従おうという気持ちで向き合っているので、変にこうやって作ろう、ああやって作ろうというのはないんです。
 
藤本:でも、見ていると、ノヴェチェントそのものですよ。
内:今回の作品に関しては、僕なんかよりも、藤本さんが本当に大変なんですよ。僕がレベル1だったら、レベル100なんですよ。トランペッター役というのもそうですし、ステージテラーの役割だったりとか、他にもいろいろな役をやられるんですよ、1人で。本当に大変なんです。番組で言ったら、MCもやりながら雛壇もあるみたいな(笑)。僕は雛壇に座っているだけで。

音楽劇『海の上のピアニスト』ゲネプロの様子  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

音楽劇『海の上のピアニスト』ゲネプロの様子  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

ーー西尾さん、内さんと藤本さんの印象を教えてください。
 
西尾:今の会話で垣間見えたところがあると思うんですけど、藤本さんはみんなのお兄さんですよね。あと、意外にムードメーカーかな。
 
内:おちゃめですよね。
 
西尾:そうなんです。笑いをとってくださるし、雰囲気をよくしてくださる。僕がずっとピアノ弾いていると、「飲み物大丈夫?」とか言ってくださって。内さんの印象は、彫刻ですね。
 
内:どういうことや。彫られている感じということですか?(笑)
 
西尾:立ち方もすごく綺麗です。
内:意識しているんですよ。僕、猫背なので。
 
西尾:(内さんと)同い年なので、距離を縮めていっているところです。

(左から)西尾周祐、内博貴、藤本隆宏  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

(左から)西尾周祐、内博貴、藤本隆宏  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

ーー今作で注目して欲しいところや見どころを教えてください。
 
内:本当に僕自身こういったタイプの作品に携わったことなくて、不思議な舞台なんですよ。西尾さんのピアノが素晴らしいですし、藤本さんのセリフ量もそうですし、見て、いろいろなものを感じられるんじゃないかなと。不思議な空間になっている舞台だと思います。
 
藤本:内さんが言ったように、ピアノが真ん中にあって、我々のやっているミュージカルは芝居の中に音楽があとからついてくることが多いんですけど、(本作は)音楽主体で、我々が芝居を作り上げていくというのは違いますし、難しいところでもあります。あとね、音楽がいいんですよ。本当に素敵な音楽。心を動かされながら、演じています。見所としては、最後の内さんの長台詞と歌。最後にぎゅっと凝縮されています。
 
内:本当にやめてください。
 
藤本:やりながら、涙が出てしまう。
 
内:ちょいちょいハードル上げてきてますよ(笑)。
 
西尾:聴きどころとしては、ピアニストが主役の舞台なので、そこでピアノをずっと弾いているのは、ピアニストとしてこれ以上ない舞台だと思うんですけど、最初に流れるメインテーマがありまして。それが繰り返し何度もいろんなシーンで出てきたり。そのほかの見せ場としては、ジェリー・ロール・モートンというジャズピアニストと、ノヴェチェントとのピアノ対決のシーンですね。ピアノを交互に対決して弾いていくシーンが聴きどころだと思います。

(左から)西尾周祐、内博貴、藤本隆宏  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

(左から)西尾周祐、内博貴、藤本隆宏  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

ーー最後にメッセージをお願いします!
 
内:このご時世にもかかわらず、こうやって舞台ができることは本当に幸せなことだと思いますし、我々は感染対策ばっちりした状態で、お客様をお迎えして、あとは皆さんに楽しんでいただこうという気持ちでいっぱいでございます。
 
いろいろ感じてもらえる作品になっていると思いますし、僕の勝手なイメージなんですけど、クルージング旅行と言いますか、船に乗っているような気分になれるような作品なんです。そういう意味でも、ご覧になられる方々に楽しんでいただけたらなぁと思います。

音楽劇『海の上のピアニスト』ゲネプロの様子  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

音楽劇『海の上のピアニスト』ゲネプロの様子  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

音楽劇『海の上のピアニスト』ゲネプロの様子  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

音楽劇『海の上のピアニスト』ゲネプロの様子  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

 
音楽劇『海の上のピアニスト』ゲネプロの様子  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

音楽劇『海の上のピアニスト』ゲネプロの様子  (C)2021.海の上のピアニスト(撮影:五月女菜穂)

舞台は、大西洋を往復する豪華客船ヴァージニアン号。その一等船客用のダンスホールのピアノの上に、レモン箱に入れられた、生まれて間もない赤ん坊が捨てられていた。
 
黒人機関士のダニー・ブードマンが、その赤ん坊を見つける。箱には「T・D・レモン」と書かれてあり、ダニーはそれを「サンクス、ダニー(Thanks Danny)」の意味に違いないと受け止め、まず自身の名前を頭に並べ、1900年という新世紀の最初の出来事にちなんで、900=ノヴェチェントまで盛り込んだ「ダニー・ブードマン・T・D・レモン・ノヴェチェント」という立派な名前をつけて我が子のように大切に育てる。
 
ノヴェチェントが8歳になったある日、ダニーは事故で亡くなってしまう。再び孤児となったノヴェチェントだが、ピアノと出会い、やがて、この船の専属楽団のピアニストとなる。そして、その楽団のトランペッターと親友になる。
 
船で生まれ、ただ一度も陸地を踏んだことのないノヴェチェントが奏でる音楽は前代未聞の音楽。いまだかつてこの世に存在せず、彼がピアノの前から離れた瞬間にはもう存在していない音楽でーー。
 
原作は1人芝居であるが、それを濃密な2人芝居に仕立てており、本作では、内博貴がノヴェチェントを、藤本隆宏がトランペッター役のほかストーリーテラー的な役割を担う。
 
内のノヴェチェントは、けがれを知らない美しさと天才肌のピアニストの風格がありながら、ふとした時にどこか影を感じさせる。多くを語らずとも、ノヴェチェントの人生のすべてを匂わせる魅力があった。一方の藤本は、時にコミカルに、時にシリアスに、ノヴェチェントの人生に関わるさまざまな役を演じ分ける。とにかくずっと喋っている印象で、膨大な台詞量だが、落ち着いて、物語を進めていた。
 
楽曲は西尾周祐のピアノ演奏のみ。シンプルではあるが、クラシック、ラップ、ジャズなどさまざまなジャンルの音楽が盛り込まれているので、飽きはない。ピアノが物語を語る瞬間が多々あり、聴きどころも多いと思う。
 
上演時間は約1時間35分(途中休憩なし)。原作や映画を知らずとも、初見でも全く問題なく楽しめる。お見逃しなく!

 取材・文=五月女菜穂