tricot『爆祭2021(-Vol.14-)​』2021.9.26(sun) 渋谷O-EAST

tricot主催の定期イベント『爆祭2021(-Vol.14-)』が、9月26日(日)にShibuya TSUTAYA O-EASTにて行われた。14回目の開催となる今回のゲストアーティストは、シナリオアートとポルカドットスティングレイの2組。シナリオアートは、急遽出演キャンセルとなったCrystal Lakeのピンチヒッターとして呼ばれた形ではあったが、3組の信頼関係がひしと伝わってくるイベントとなった。

tricotのメンバーによる感染症対策についての事前説明を経て、トップバッターとしてステージに登場したシナリオアートは、青い照明が会場を照らす中「サヨナラムーンタウン」をプレイし、ライブをスタートさせる。メロディアスなサウンドにハットリクミコ(Dr/Vo)とハヤシコウスケ(Gt/Vo)の女声/男声のツインボーカルが乗ることによって、楽曲の中で描かれている物語がより鮮明に浮き立っていく。そこから、アグレッシブで攻撃性の高い「シニカルデトックス」をドロップ!ヤマシタタカヒサ(Ba/Cho)とハットリが繰り出す力強いビートが否応なく身体を揺らし、ギターのタッピングや不協和音が胸に刺さる。

「デトックス」という言葉の通り、風刺的でエッジの効いた歌詞が、不条理に疲弊した心の膿を出す為の助力となる。怪獣の襲来を経た世界を舞台にした「ホワイトレインコートマン」や、エイリアンとの邂逅を描いた「アダハダエイリアン」など、独創性のある世界観が描かれていながらも、聴き手のリアルとしっかりとリンクするのがシナリオアートの個性だ。現実と非現実、そのふたつの世界を紡ぐような彼らの楽曲は、極上の浮遊感とエナジーを与えてくれる。MCでは、これまでも幾度となくtricotのピンチヒッターとしてシナリオアートが呼ばれていることについて、ハットリが「うちらあってのtricotやと思っています」と堂々と宣言。その言葉を受けて、フロアからは「まさに!」と言わんばかりの拍手が沸き起こった。そうした信頼関係は一朝一夕で築けるものではないし、互いが互いの音楽を敬愛しているからこそ得た絆だろう。馴れ合いではなく、高め合いを経て進んできた戦友だからこそ託されたトップバッターという役目を、ラストの「シーユーネバーランド」まできっちりと果たしたシナリオアートは、猛烈に格好良かった。
シナリオアート

シナリオアート

次に登場したのは、ポルカドットスティングレイ。この日のライブが約2年振りの有観客ライブとのことで、ステージに登場するとすぐにフロアに向かって手を振った雫(Vo/Gt)はとても嬉しそうだった。そうしたポジティブなエネルギーを「トゲめくスピカ」の清涼感と疾走感のあるメロディに託しつつ流麗に歌い上げると、ダンスチューン「FREE」を投下してフロアの熱をさらに上げていく。エジマハルシ(Gt)の軽妙なカッティングギターと、ウエムラユウキ(Ba)とミツヤスカズマ(Dr)が織りなす軽快なビート、雫の伸びやかなボーカルが合わさり、オーディエンスの足元を揺らす。

「久々の有観客ライブがtricot兄さん姐さんたちの企画で良かった!」と喜びを露わにしつつ、ドラムパッドや打ち込みを取り入れた「ストップ・モーション」やアダルティックでムーディーな「FICTION」など、ポルカドットスティングレイの様々な表情を次々と見せていく。さらに「バツゲームのつもりで、一番やりたくないツラい曲をやります」と、高速BPMで猪突猛進的に突っ走る「化身」をプレイ!スリリングなスピード感の中でも、各々のテクニックをしっかりと効かせているところが流石だ。曲が終わると雫が息切れしており、“ツラい”という言葉が本心であることを実感しつつ、2年振りの現場でのライブかつ、尊敬するtricotのイベントでしっかりと魅せるポルカドットスティングレイ渾身のガッツを感じた。そしてラストには、声を出さずに出来る振付をレクチャーしつつ、「温めてtricotに繋げましょう!」と最新曲「ダイバー」を披露。全身全霊、会心のアクトでバトンを繋げた。
ポルカドットスティングレイ

ポルカドットスティングレイ

そして、トリを担うのはtricot。動物園の清掃員をイメージしたというオレンジのセットアップに身を包んだ4人がステージに登場し、中嶋イッキュウ(Vo/G)の弾き語りから「おまえ」をドロップ。この中嶋の伸びやかなボーカルの後に待ち構えるのが、ヒロミ・ヒロヒロ(Ba/Cho)と吉田雄介(Dr)の強烈な重低音とドラミングだと頭では分かっていても、いざそのタイミングを迎えるとしっかり喰らうし、この「やられた!」感がたまらない。
吉田雄介(tricot)

吉田雄介(tricot)

さらにそこからエキセントリック&アグレッシヴな「スーパーサマー」と「爆裂パニエさん」を連続でプレイされるのだから、アドレナリン大放出状態だ。ポルカドットスティングレイの雫もMCで言及していたが、tricotの楽曲はどれも難解だ。けれど、変拍子の狭間でキメの一音がハマった時の気持ち良さは半端じゃない。それは中毒性と呼ぶのとはまた違う、もっとポップで、遊び心のある彼女たちのセンスの賜物だ。
tricot

tricot

MCでは、シナリオアートに対して「(シナリオアートは)ピンチを笑いに変えてくれるし、ピンチヒッターというのはピンチでもヒットを打ってくれるバンドじゃなきゃダメだと思うんです。こういう時に絶対に良いライブをしてくれるバンド」と言葉を贈り、ポルカドットスティングレイに向けては「2年振りのライブなのに快諾してくれたし、そういう場所を作れたことを誇らしく思えました」と率直な想いを伝えた。こうした事態の中でイベントを組むことや実行を決断することは、いつも以上に責務を感じるものなんじゃないかと思う。けれど同時に、こうしてピンチを救ってくれる仲間や、大事なタイミングを託してくれる仲間がいるというのは、何よりも心強いはずだ。活動を続けていく上で、そういった信頼関係を自然と作り上げてきたtricotだからこそ迎えられた14回目の爆祭なのだと思う。
キダ モティフォ(tricot)

キダ モティフォ(tricot)

中盤では、メロディアスな「サマーナイトタウン」や「右脳左脳」、キダ モティフォ(Gt/Cho)のカッティングギターが疾走感をもたらす「WARP」をプレイ。さらに中嶋が「今日でうちの犬が、うちに来て2年になるんです」と話し、最新曲「Dogs and Ducks」を披露。変拍子を繰り出すタイトなベースラインに乗るのは、《ワンワンワンワンワンワン》という歌詞と、ワウが効いたギターで鳴らすアヒルの鳴き声という、これまたユーモラスな楽曲。
ヒロミ・ヒロヒロ(tricot)

ヒロミ・ヒロヒロ(tricot)

tricotの自由な発想が体感できる、浮遊感たっぷりのナンバーだ。そしてここで中嶋が、通算6作目となるフル・アルバム『上出来』のリリースと、それに伴う全国&ヨーロッパツアー『WALKING × WALKING TOUR 2021-2022』の開催をさらりと発表。「(海外に)行くつもりだと発表することが大事やし、今日のライブだってそう。やると決めることが大事!」と力強く言葉にしつつ、ラストに「悪戯」と「メロンソーダ」を届け、14度目の祭りを堂々と締め括った。
tricot

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文=峯岸利恵