SOLO Performance ENGEKI『僕とメリーヴェルの7322個の愛』が2021年10月6日(水)、東京・CBGKシブゲキ!!にて開幕した。“ひとり芝居”という形で、最少人数での演劇を構築するプロジェクト。今作は、脚本を吉田恵里香、演出を毛利亘宏(少年社中)が務め、生駒里奈と松田凌が出演する。初日開幕直前に行われた囲み取材と、生駒が出演したゲネプロの様子をお伝えしよう。

先立って行われた囲み会見には生駒と松田、毛利の3名が登壇。初日を迎えた心境を聞かれ「普段はしないが、昨日の場当たりからめちゃめちゃ緊張した」と生駒。松田は「一人で舞台に立つのはこれ以上ない重圧と責任感。体一つ、心一つでどうにか作品として届けなきゃいけないという役者の力は見どころ」と、ひとり芝居ならではの醍醐味を語った。

(左から)松田凌、生駒里奈、毛利亘宏

(左から)松田凌、生駒里奈、毛利亘宏

生駒と松田は、ともに2021年でデビュー10年目を迎えた。両名の初主演舞台でも演出を手掛けた毛利は「二人の成長を噛み締めながら稽古してきた。役者として力をつけた姿を見てもらいたい」と感慨深げ。「出会った当初は全力の体当たりでぶつかっている状態だった。努力と出会いを重ね、技を身に着けた二人とこの場で向き合えるのはうれしい」と喜んだ。

(左から)松田凌、生駒里奈、毛利亘宏

(左から)松田凌、生駒里奈、毛利亘宏

自身のキャリアを振り返った生駒は「毛利さんに出会って演劇の素晴らしさを知り、奇跡に恵まれた」と話した。松田からは「もっと舞台の上に立ちたい、カメラの前でお芝居したいとデビュー当時より何十倍も欲深くなった。それくらいお芝居に没頭する人生にしたい」と熱のこもった言葉が飛び出した。

質疑応答では「この先10年の展望は?」という問いが。「絶対に俳優をやっていたい」(生駒)、「やっぱりお芝居に溺れていたい」(松田)と役者魂を露わにしつつ、「いい家に住めるようになりたい」と語る生駒と同調する松田が、会場の笑いを誘った。


初日公演前に行われたゲネプロには、生駒が出演。近未来的な雰囲気ながらも、四方を強調するシンプルなセットが舞台上に佇んでいる。やがて現れた“僕”ことソラ(生駒)は、目を覚ますとパニック状態。両親を呼ぶが、応えたのはアシストAI・メリーヴェルの機械的な声のみだった。乗っていた宇宙船が事故に遭い、緊急避難用の小型宇宙船に乗り移り、たった一人で漂流しているという。


ソラには以前の記憶がなかった。10歳の子供らしい混乱と怒り、悲しみが入り混じった感情が爆発する。孤独な状況を理解した瞬間の、諦めたように力の抜けていく表情には胸が締め付けられた。



実体のないAIとのみ過ごす、永遠にも思える時間はどれほど寂しいだろう……と悲観に浸る間もなく、ソラがメリーヴェルに振り回される日常が始まった。起床後すぐにラジオ体操、筋トレとなかなかにハード。味気のない栄養食に、勉強に映画鑑賞にと充実した一日のスケジュールが組まれている。


最初のころは反発しっぱなしだったソラだが、メリーヴェルを出し抜こうとするなどタフなメンタルを発揮していく。絶望的な状況に飲まれず、自力で切り開こうとするソラの逞しさには見ているこちら側が救われていく気分だ。



遭難しなければいつかは経験するはずだった、青春時代を疑似体験する場面も。友情や恋、学校生活をバーチャルながらも追体験するソラは、ベタなストーリーにツッコミつつもスピーディーにこなしていく。

本作の見どころを「吉田さんの脚本は、包み込むという言葉が印象的。言葉の力、温かさを見てもらいたい」と語っていた生駒のコメント通り、シリアスな状況ながらコミカルに展開されていくハートフルなストーリー。喜怒哀楽を、コロコロと変わる表情で表現する生駒自身の、みずみずしいパワーが全力で伝わってくる。


やがて、明らかになっていくソラの過去と未来の話も。長い時間を閉鎖された宇宙船で過ごすソラの成長、AIと心通わせていく様は、いつまでも見守っていたくなった。小道具は一切使わず、芝居の力だけで観客と向き合う75分。全身全霊をかけて舞台に立つ生駒の姿が目に焼き付いた。

10月7日(木)19時より開幕する松田の出演回では、“ほぼほぼ同じ”ながらも異なる脚本で描かれるという。ぜひ両方の物語を体感してみたい。同作では、ライブ配信も実施。10月16日(土)・17日(日)の4公演で、イープラス「Streaming +」ほかにて配信される。

取材・文・撮影=潮田茗