1992年に日本公開されたホイットニー・ヒューストン、ケビン・コスナー主演の大ヒット映画『ボディガード』は、2012年にミュージカル化され世界中で上演。2019年9月には本場英国キャストによる初の来日公演が行われた。2020年春、新演出にて日本キャスト版が制作され、東京・大阪にて初演を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で全33回公演の内、大阪5公演のみの上演となった。今回待望の再演が決定し、吉本新喜劇・内場勝則はマネージャー役として続投することに。9月に行われた大阪市内の取材会で再演の喜びと意気込みを語った。

内場勝則

内場勝則

■再演が決まって夢のよう!

映画でホイットニー・ヒューストンが演じた人気絶頂のポップシンガー、レイチェル・マロン役は前回に引き続き、柚希礼音・新妻聖子が演じ、さらに新キャストとしてMay J.が加わりトリプルキャストとなる。映画でケビン・コスナーが演じたレイチェルを守るボディガード、フランク・ファーマー役は大谷亮平、レイチェルを支えるマネージャー、ビル・デヴァニー役は内場勝則。ほかAKANE LIV、入野自由、大山真志等が続投、そして猪塚健太が新たに加わり再演が叶うこととなった。

再演が決まったときに「やったー!」と喜んだという内場は「前回は、コロナの影響で5回のみの上演で終わってしまったので、今度こそ最後まで走りきれるように頑張りたいです。たくさんの人に観にきていただきたい。舞台はその時しか集まれないキャストもいて、同じメンバーがまた集まれるのはめったにないこと。こうして2年後に再演できるのは夢のようで絆や縁を感じます」とコメント。

20年にわたって吉本新喜劇の座長を務め、新喜劇のみならず、NHK連続テレビ小説『わろてんか』(2017)、ドラマ『下町ロケット2』(2018)など俳優としても多くの作品に出演している内場。前回の作品で初挑戦したミュージカルへの印象について「(ミュージカルの舞台は)夢の世界にいるような感じ。うち(新喜劇)は動物園みたいな世界ですから。まわりをみても「なんじゃこれ!」という個性的な人がたくさんいるけど、ミュージカルは、景色が違う、予算が違う、空気が違う、匂いが違う、女性がきれい(笑)! 自分が同じ舞台に立っていることが不思議でした」と語る。

■ミュージカルも新喜劇もお客さんに伝えるものは同じ

内場勝則

内場勝則

初めてづくしの現場のため「最初はプレッシャーしかなかったです。標準語で芝居をするのも初めてで、共演者も初めて会う人ばかり。名前も外国人の名前やし……最初はセリフがなかなか入ってこなかった。標準語を一度大阪弁に書きなおして、さらに標準語で覚えるという作業をやって」と苦戦していた様子を見せた。

しかし新喜劇での経験とキャリアが活かされた部分もあったとし「新喜劇と笑いのポイントは似ていると感じました。新喜劇は間違ってもごまかせるけど、ミュージカルはきちんと稽古したことをやらないといけないので大変ですけどね。舞台慣れをしているので、緊張で脚が震えるというようなことはないです。ただ迷惑をかけないようにと。新喜劇とミュージカル、内容は違うけどエンタメとして生のお客さんを前に演じるという面では同じ。この場所が自分に向いていると感じました。自分のキャパでできることを最大限にやって頑張ります」と意気込んだ。

■父親のような目線で演じたい

内場勝則

内場勝則

内場が演じるのは、スーパースターのレイチェルを支え続ける人望厚きマネージャー、ビル・デヴァニー。この役は昨年オーディションで勝ち取ったと言い「オーディションは吉本の社員に相手役をしてもらって、オンラインで挑みました。手ごたえなくて絶対ダメやと、帰りのタクシーで落ちたなと話していたんです。選ばれたときは本当にビックリしましたよ。ありがたいなあと。絶対やる! やる! と返事しました。役づくりに関しては、稽古を重ねていく中で、自分なりの味を出していけたらいいですね。僕が出ている意味があるようなシーンをつくっていきたいです。レイチェルとビルは、映画ではビジネス中心の関係でしたが、僕は彼女のことを大切に思う父親のような感覚を意識しています。包み込むような雰囲気を出せたら」と、内場ならではのビル・デヴァニーに期待が高まる。

ギャグや笑いの要素については「笑いのエッセンスは少しでも入れられたらいいですね。緊張感のある芝居が続くので、リラックスした息抜きのできるシーンで「緊張と緩和」の「緩和」を表現できたら面白いものになると思います。重厚な役者さんではなく、僕を選んでくれたということは、期待もあると思うので応えたいですね」と話した。

レイチェル・マロン役は、華やかなルックスと圧倒的なカリスマ性で魅了する柚希礼音、抜群の歌唱力を誇る新妻聖子、そして、今回は日本を代表する歌姫として幅広い世代から支持を集めるMay J.が新キャストとして加わる。「それぞれの個性が出ると思うので楽しみ。柚希さんはダイナミックなダンスと色気のある演技、新妻さんは歌唱力に圧倒されます。稽古の段階からすごかったです。May J.さんは初めてなので、どんなお芝居をされるのか今から楽しみです。3人のレイチェルにあわせたそれぞれの稽古があるので、稽古を3倍せなあかん! 新喜劇は3時間くらいやのに(笑)。新喜劇では主役がトリプルキャストということはないので、とにかく稽古量がぜんぜん違います。それぞれのレイチェルにあわせたマネージャーを演じられたら」と自身を鼓舞していた。

■ミュージカルの魅力は「日々進化していくところ」

内場勝則

内場勝則

グラミー賞受賞曲「I will Always Love You」をはじめ、映画の楽曲をふんだんに使いグラマラスにショーアップされたステージ。華やかで迫力ある歌唱やダンスシーンがこの舞台の大きな見どころでもある。「いつもミュージカルは客席から観ていましたが、舞台の上から観るのは新鮮。やる側が楽しくないと伝わらないと思うので歌がうまいなあ、ダンスすごいなあ、プロやなあと、お客さんのように観ています。前回のカーテンコールはとても盛り上がりました。これ、終わらへんがな! と(笑)。お客さんと一体化して、すごいことをやり遂げたなと感じました」と前回を振り返り「ミュージカルは千秋楽に向かうにつれてどんどん進化していきます。初日からもちろんクオリティは高いのですが、こんなふうに仕上がっていくのかと刺激を受けました。みんなプロフェッショナルですが最初から全部できるのではなくて、失敗もしながらどんどんうまくなっていく。新喜劇は初日からピークの力で走りだすので、途中で飽きてくるからアドリブをいれて自分に刺激をあたえています(笑)。もしかしたら、千秋楽には僕も歌っているかもしれません。いや、ないない(笑)!」とミュージカルの魅力を語った。

60歳を過ぎても舞台に俳優業にパワフルに活躍。「今回の経験を活かして、いろんなことをさせてもらえるならやりたいです。知らない世界を知ることができる、普通なら経験できないことをさせてもらえるのがこの仕事のいいところ。体力作りや健康面で気をつけていることはとくにないですが、とにかく病気と怪我に気をつけるだけ。毎日楽しいことをして、お金を頂けるというのはありがたいという気持ちです」と、今後もミュージカルなど新たな挑戦をしていくことに意欲を見せる。

最後に大阪公演を楽しみにしている人へ「今まで自粛で外に出られなかったと思うので、ぜひ生の舞台を観て気分を晴らしてください。エンディングは一緒に踊って楽しんでもらえたら。トリプルキャストなので、よかったら3回観て、それぞれのレイチェルを楽しんでください。一回目と千秋楽では、歌い方も踊り方も違うと思います。何回観ても楽しめる舞台になっていると思います!」とコメントを残した。

取材・文=岡田あさみ 撮影=田浦ボン