東京・CBGKシブゲキ!!にて上演中のSOLO Performance ENGEKI『僕とメリーヴェルの7322個の愛』。生駒里奈が出演した初日公演に続き、松田凌による公演が2021年10月7日(木)に幕を開けた。直前に行われたゲネプロの様子をレポートする。

 “ひとり芝居”という形で、最少人数による演劇を構築するプロジェクト。今作では、脚本を吉田恵里香、演出・毛利亘宏(少年社中)が務める。宇宙を漂流する“僕”こと主人公・ソラが、小型宇宙船に搭載されたアシストAI・メリーヴェルと愛を探していく物語。生駒が演じた主人公・ソラを男性版に変換し、構成やセリフなど脚本はほぼ同じ内容となっている。



劇中では一切の小道具は使われず、派手な舞台装置にも頼らない。世界観に説得力を持たせることができるのは、板の上に立つたった一人の役者だけ。キャリア10年目を迎えた松田にとって、本作は初めてのひとり芝居となる。


年齢や見た目にとらわれず、あらゆる役柄を演じられる演劇の醍醐味を楽しめるのが見どころのひとつだ。冒頭から感嘆させられたのが、乗船前の記憶を失っている10歳のソラ(松田)の幼さ。しぐさや口調だけでなく、纏う空気そのものを変化させている。



閉鎖空間における最大の敵は退屈。運動に勉強、食事に休息とメリーヴェルの指示に従い、ソラは規則正しい生活を送り始めた。健やかな精神を取り戻していくと、ソラの表情や立ち振る舞いがどんどん華やかになっていく。



青春と恋愛を体感していく疑似体験プログラムは、セリフ量も運動量も相当ハード。ダンスにラブコメにと、コミカルな芝居で笑いを誘う。機械であるメリーヴェルとのやりとりが、いつの間にか血の通ったコミュニケーションとなり、心がほっと温かくなる。


広大な宇宙の中で、閉ざされた狭い宇宙船内で生きていくソラ。ちぐはぐだった体と心の成長速度が、やがて足並みを揃えていく。AIであるメリーヴェルの助けによって大人になったソラもまた、成長することでメリーヴェルに喜びを与える。機械と人間でありながら、確かに愛で繋がった絆を感じた。


前日に行われた囲み取材で、ひとり芝居に挑む心境を問われ「正直、まだ実力不足なんじゃないかなと思う節はありますが……この作品で、一番挑戦したい壁にまた出会うことができた。実力不足じゃなかったってお客様に言ってもらえるよう、千穐楽まで頑張りたい」と打ち明けた松田。「10年を迎えた達成感もあるが、まだまだこれから。11年目以降も始まっていくという気持ちが強い」との言葉からも、今後の躍進を予感させた。

本作では、ライブ配信も実施。10月16日(土)・17日(日)の4公演で、イープラス「Streaming +」ほかにて配信される。75分間、途切れることなく続くひとり芝居をたっぷりと堪能してほしい。

取材・文・撮影=潮田茗