2021年7月に新制作上演されたオペラ『カルメン』の公演映像が、2021年10月18日(月)から3か月間、OperaVisionおよび新国立劇場ウェブサイトで無料公開されることが決定した。OperaVisionは、EUの文化支援プログラムCreative Europeの支援の下、Opera Europeが監修するヨーロッパ最大級のオペラ映像配信プラットフォームで、新国立劇場のオペラがOperaVisionにて配信されるのは今回が初。

魔性の女カルメンとホセの破滅的な愛がドラマティックに描かれるビゼーのオペラ『カルメン』。スペイン・バルセロナ出身のアレックス・オリエ演出による本プロダクションは、主人公カルメンを現代のシンガーになぞらえて「勇気と自由の象徴」として描き出した。

演出家:アレックス・オリエ

演出家:アレックス・オリエ

原作における舞台はスペインのセビリア。今日でもスペインと聞けばすぐに想起する闘牛士といったアイコンや、カルメン=スペイン人女性という設定は尊重しつつも、オリエは「世界のどこでも起こりうる普遍的なドラマ」であることを今回の新たなコンセプトの重要な点として挙げている。とりわけ、古典的な演出では煙草工場の労働者として紹介されるカルメンを、現代のショービジネスの世界に生きるロックシンガーとして読み込んだ点がオリエらしい独創的な発想によるもの。本来はフラメンコ歌手(カンタオラ)である一芸術家としてのカルメン像がよりくっきりと映し出された演出だ。このアイディアを探求する中で、オリエはさらにカルメンを実世界で有名な、身近で理解しやすい人物に見立てるために、人気絶頂の中早逝したイギリスの歌手、エイミー・ワインハウスをビジュアル的なモデルとした。

写真:寺司正彦(2021年公演)

写真:寺司正彦(2021年公演)

写真:寺司正彦(2021年公演)

写真:寺司正彦(2021年公演)

誰しもが聞き馴染みのあるビゼーの名作オペラを、現代人の視点から再構築し世に送り出した意欲的な演出、また、表題役ステファニー・ドゥストラックの説得力に充ちた人物造形をはじめ、出演者陣の表現力とダイナミクスに富んだ大野和士芸術監督の音楽創りも観客の興奮を呼んだ本作。今回の無料配信決定の背景として新国立劇場は、新型コロナウイルス感染症拡大により多くの影響を受けた2020/2021シーズンに照らし、「苦境にも負けずに、 感染対策を講じながら意欲的な舞台を創り続けてきたシーズンの集大成とも言える本公演を、日本国内のみならず世界中の方にご覧いただき、『オペラには様々な可能性があり、物事には多様な見方がある』というオリエ氏と大野和士芸術監督の願いを、 オンラインを通してお伝えできれば」としている。