『鬼滅の刃』初の原画展となる『「鬼滅の刃」吾峠呼世晴原画展』が、2021年10月26日(火)より、六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーにて開幕した。

近年世間を賑わせた漫画・アニメ作品の一つで、ここで説明しなくても多くの方がその人気をご存知であろう本作。『鬼滅の刃』は2016年〜2020年にかけて週刊少年ジャンプで連載された少年漫画であり、2019年に『「鬼滅の刃」竈門炭治郎 立志編』がテレビアニメ化されて以降、2020年10月には『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が全国の映画館で公開(全世界での興行収入が500億円を突破)。現在は(2021年10月より)『「鬼滅の刃」無限列車編』がテレビ放送中であるほか、同12月からは『「鬼滅の刃」遊郭編』のテレビ放送が控えているなど、今なお多くのファンを楽しませている。ちなみに筆者も映画公開当時に映画館に出向き、帰りに大興奮してコミックスを買いに走ったところ、街に3件ある書店全てで品切れを起こしていてその人気ぶりに悶絶したひとりである。

エントランスでは、描き下ろしのキービジュアルがお出迎え (C)吾峠呼世晴/集英社

エントランスでは、描き下ろしのキービジュアルがお出迎え (C)吾峠呼世晴/集英社

この『「鬼滅の刃」吾峠呼世晴原画展』では、作者の直筆原画を450点以上展示。会場は没入感を高めてくれる空間演出もされており、各々のエリアで心が躍るのもポイントの一つだ。この記事では、開幕に先駆けて実施されたメディア内覧会の様子をレポートする。それでは……、全集中で見ていこう!

※以下、展示のネタバレがございます。ご注意ください。

序章 煌(きらめき)〜不滅への旅立ち〜

序章フォトスポット (C)吾峠呼世晴/集英社

序章フォトスポット (C)吾峠呼世晴/集英社

展覧会のオープニングを飾るのは、『鬼滅の刃』全23巻のコミックス表紙に囲まれた、主人公・竈門炭治郎&妹・禰豆子のフィギュアだ。「第0巻フィギュア」と銘打たれたこの兄妹像は、連載開始より前に描かれたイラストを元に制作されたのだそう。

壱ノ章 絆(きずな)〜兄と妹、そして仲間たち〜

壱ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

壱ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

壱ノ章では、炭治郎と仲間たちそれぞれが順番にピックアップされ、印象的なシーンを原画とともに振り返っていく。

壱ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

壱ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

主人公・竈門炭治郎。子供らしくツルリと描かれていた初期の頃と終盤を比べてみると、死線をくぐり抜けるたびに勇ましさが上がっているのが分かる。

壱ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

壱ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

続いては禰豆子。かすかな線の揺らぎや、陰影がダイレクトに伝わるからだろうか、原画だとキャラクターの可愛さが10倍増しに感じる! 禰豆子が日光を浴びて「おはよう」と微笑むシーンの原画(写真右上)は特に繊細に仕上げられていて、日のあたたかさまで描いているように見えた。

壱ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

壱ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

なお、展示の下のほうにはコミカルな名シーンがずらりと並んでいるので、そちらもお見逃しなく。上の写真は我妻善逸のセクション。個人的に大好きな「ア゛ーーーッ(汚い高音)来ないでェ!」のひとコマを発見できてニヤニヤしてしまった。

「鏡餅ごっこ」ミニフィギュア (C)吾峠呼世晴/集英社

「鏡餅ごっこ」ミニフィギュア (C)吾峠呼世晴/集英社

展示室を進んでいった途中にフィギュアを発見。炭治郎・善逸・伊之助・禰豆子が重なった「鏡餅ごっこ」のミニフィギュアだ。これは公式ファンブックに掲載されたイラストを元にしているのだそう。

さらに本展では、キャラクターの裏設定や豆知識を語る「大正コソコソ噂話」の “原画展特別版” も展示。壱ノ章の「大正コソコソ噂話」では、「顔が優しすぎて鬼に舐められるから、いつも天狗のお面をつけている」という師匠・鱗滝左近次の素顔がついに明かされる……!

弐ノ章 鬼(おに)〜人の果て、悲しみの果て〜

弐ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

弐ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

続いては、上弦の鬼たちにフィーチャーする弐ノ章へ。中央で異様な存在感を放っているのは「鬼舞辻無惨「血の支配」立体造形」だ。近くで見てもなかなか凄い迫力である。

本章の副題に “〜人の果て、悲しみの果て〜” とあるように、『鬼滅の刃』に出てくる「鬼」たちは皆かつては人間であった。それぞれ人の心をなくして鬼になってしまった悲しい背景があり、ここではその対比が見どころだ。

弐ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

弐ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

例えば、上弦の参である猗窩座のセクションを見てみよう。荒々しい戦闘シーンの原画が並ぶパネルの裏面には、白を背景にして人間時代の猗窩座=狛治(はくじ)の姿が散りばめられている。右下の、鬼化する前と後でハーフ&ハーフになっているカラーイラストが切ない。

特別章ー陰(かげ)ー無限城顕現

べんべんべべんっ! 現地ではその音響にも注目してほしい。 (C)吾峠呼世晴/集英社

べんべんべべんっ! 現地ではその音響にも注目してほしい。 (C)吾峠呼世晴/集英社

鳴り響く琵琶の音。会場の奥へ進むと、敵の本拠地「無限城」がフォトスポットとして再現されている。

特別章ー陰ー展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

特別章ー陰ー展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

鏡を使って奥行きを表現しているので、パッと見るだけより、中まで入り込んでゆっくり見回したほうが没入感アリ。いい意味で混乱することができるだろう。

特別章ー光(ひかり)ー不滅

特別章ー光ー展示風景(写真=オフィシャル提供) (C)吾峠呼世晴/集英社

特別章ー光ー展示風景(写真=オフィシャル提供) (C)吾峠呼世晴/集英社

無限城の対面には、「お館様」こと産屋敷耀哉と、鬼舞辻無惨の対話シーン原画が掲げられている。ここでお館様が語る “繋がれてゆく人の想いこそ不滅” という内容は、この物語の最大のテーマである。鬼殺隊の背中に記された「滅」の文字は、「鬼滅」と同時に「不滅」も表しているのだろうか……と、原画を眺めていてふと思った。

参ノ章 柱(はしら)〜絶対なるその呼吸〜

いよいよここで、最強の9剣士であり、主人公の(そして読者の)心の先輩である「柱」たちの登場だ。壱ノ章と同様、キャラクターごとに名シーンの数々が綴られる。特に目をひかれるのは、柱が使う呼吸のエフェクトが立体造形としてそれぞれのパートに展示されている部分だろう。

参ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

参ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

音の呼吸は爆発を交えながらリズミカルに、恋の呼吸はしなやかな新体操のリボンのように。呼吸によって異なる特性をお見事に視覚化している! ああやっぱり全員カッコイイ。

参ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

参ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

炎柱・煉獄杏寿郎の炎の呼吸エフェクトも! このねじれっぷりは「奥義 煉獄」ではないかと思われる。他の呼吸の造形と比べてもとりわけ力強く、勢いと威力を物語るようだ。

参ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

参ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

蟲柱・胡蝶しのぶの終盤名シーンも。コミックスで読んだ当時は涙で曇ってそれどころではなかったけれど、原画をじっくり眺めると、小柄な女性ならではの素早い戦い方が躍動感たっぷりに描かれていることに改めて感動した。

肆ノ章 繋(つなぐ)〜全てを懸けて〜

肆ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

肆ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

ほのかな灯りが美しいこの章は、死んでしまった登場人物を弔うための “お盆” パートである。ちなみに写真右手は、鬼になってしまった善逸の兄弟子・獪岳のパート。引導を渡す善逸の必殺技「火雷神」の見開き原画が熱いので必見だ。

肆ノ章展示風景(写真=オフィシャル提供) (C)吾峠呼世晴/集英社

肆ノ章展示風景(写真=オフィシャル提供) (C)吾峠呼世晴/集英社

盆灯篭のようなモニュメントには、命を散らした人物たちの想いが込められているようだ。そして、各原画の下に描かれているのは「悲しき思い出」という花言葉を持つ彼岸花。よくよく見ると、炭治郎と縁壱の描かれたカラーイラストの下には青い彼岸花が咲いていた。

伍ノ章 刻(とき)〜千年の夜明け〜

伍ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

伍ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

本展の中で、個人的に最も心が震えたのはクライマックスにあたる伍ノ章だ。鬼殺隊と鬼舞辻無惨との最終決戦を、漫画のイメージを増幅させる演出の中で追体験することができる。

伍ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

伍ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

展示室は、暗い状態から徐々に夜明け前の薄明かりに包まれていく。壁に描かれた鎹鴉の「夜明けまであと◯◯分!」のコールが緊迫感を煽る。

無惨との決戦は、始祖の鬼ひとりVS鬼殺隊全員(+人間の味方の鬼)の恐るべき持久戦。ラスボスを夜明けまで地上に足止めするのが勝利条件という、ちょっと少年漫画らしからぬ “守りの戦い” なのである。主人公の究極の必殺技でドーンとフィニッシュ! ……ではないリアルさは、『鬼滅の刃』の大きな魅力なのではないかと思う。

伍ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

伍ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

右下は、炭治郎&冨岡義勇による赫刀発現シーンの原画。万感の想いが込められているであろう、集中線の一本一本にぜひ注目して見てほしい。

ヒーローひとりの力ではなく、裏方含め登場人物全員でラスボスを追い詰める必死さには、コミックスを読んですでにこの後の展開を知っているはずなのに何度でもアドレナリンが出る。そう、心が燃えるのだ。

伍ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

伍ノ章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

やがてついに訪れる夜明け。右手のカラー原画で見ると、太陽がパーッと輝くわけでなく、驚くほど静かで何気ないのが印象的だった。全てを懸けた鬼と人間との戦いも、ただ日が昇って沈む自然の営みの1ページであると物語るようで、作者のその客観性にしびれる。

終章 継(つぐ)〜幾星霜を越えて〜

終章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

終章展示風景 (C)吾峠呼世晴/集英社

終章では、満開の藤の花を模したオブジェのもと、無惨討伐後の結末が綴られる。仲間たちの腕に押し上げられ、引っ張り上げられる炭治郎の姿にまた涙が……。

さらに終章の後半では、「大正コソコソ噂話」の “原画展特別版” や、本展初公開となるイラスト7点が待っている。描き下ろしイラストはどれも登場人物への愛に溢れていて、自然と笑みが浮かぶものばかりだ。「ありがとう」という気持ちが止まらない、幸せな後味の鑑賞体験となった。ありがとう、そしてごちそうさま……。

ごちそうはまだ続く

展覧会のあとは、公式ショップやコラボカフェへ足を運んでみては。会場併設のコラボカフェ「『鬼滅の刃』展 鬼殺隊休憩所」では、キャラクターをイメージしたオリジナルメニュー9品が登場する。

禰豆子の箱のフレンチトースト(税込1,420円) (C)吾峠呼世晴/集英社

禰豆子の箱のフレンチトースト(税込1,420円) (C)吾峠呼世晴/集英社

凝った意匠のメニューの中でも、この「禰豆子の箱のフレンチトースト」がすごく可愛い! 粉砂糖で禰豆子の着物の麻模様が描かれているところもニクイ。六本木ヒルズ52階からの景色を眺めて、鬼のいない世の中に感謝しながら舌鼓を打つのも一興だ。

「六本木」駅の広告には、足を止めて眺める人の姿も (C)吾峠呼世晴/集英社

「六本木」駅の広告には、足を止めて眺める人の姿も (C)吾峠呼世晴/集英社

『「鬼滅の刃」吾峠呼世晴原画展』は2021年10月26日(火)から12月12日(日)まで、東京・森アーツセンターギャラリーにて開催。翌年2022年7月14日(木)から9月4日(日)には、大阪・グランフロント大阪へ巡回予定。待ってました! ヨッ、たっぷりと!

※本展は全日日時指定制、完売次第終了となります。詳しくは公式サイトをご確認ください。
※「禰」は「ネ+爾」、「辻」は一点しんにょう、「煉」は「火+東」が正式表記
文・写真=小杉美香 写真(一部)=オフィシャル提供