2022年、ウィリアム・フォーサイス『THREE QUIET DUETS』(2月)、ピナ・バウシュ『春の祭典』(5月)の来日公演が決定した。

先ず2月は、巨匠ウィリアム・フォーサイス振付の『THREE QUIET DUETS』。今なおバレエ、コンテンポラリー・ダンス界の最先端を行く舞踊家フォーサイス待望の近年最も評価の高い傑作群の初来日公演となる。

そして、5月は、舞踊家ピナ・バウシュの『春の祭典』。舞踊演劇(ダンス・シアター)の巨星ピナ・バウシュ振付による伝説の代表作で、ストラヴィンスキーによる近代バレエ音楽の最高傑作といわれる『春の祭典』。今回はアフリカ13か国から結集した精鋭ダンサー32名が踊り、迫力の群舞を見せる。さらに元ピナ・バウシュ・ヴッパタール舞踊団で、同団の主要パートを歴任したマル−・アイラド、アフリカ現代舞踊の母ジャメイン・アコニーによる新たな作品『common ground[s]』 (読み方:コモン・グラウン[ズ])も同時上演される。

■2022年2月 ウィリアム・フォーサイス 『THEREE QUIET DUETS』

ウィリアム・フォーサイス「THREE QUIET DUETS」舞台写真 (C)Bill Cooper

ウィリアム・フォーサイス「THREE QUIET DUETS」舞台写真 (C)Bill Cooper

ウィリアム・フォーサイスは、45年以上にわたり振付家として活躍し、その作品は、バレエを21世紀のダイナミックなアートフォームへと方向転換させたことで知られる。1984年にフランクフルト・バレエ団のディレクターに就任し、わずか3年で世界トップレベルのカンパニーに成長させ、その鋭い現代的感覚と芸術性で“バレエ界のウルトラ・モダン”と称される。92年と99年にはローレンス・オリビエ賞、02年にはニジンスキー賞を受賞。05年にはフォーサイス・カンパニーを設立し、翌06年の来日公演でも、「安定に抗う極限の技能」「舞踊界において突出している」(朝日新聞/石井達朗氏)と高く評価されている。

今なお舞台芸術の最先端を行く巨匠フォーサイスが、今最も信頼を置く最高のダンサー達5名と見せる新たな極地―究極の静謐なダンス。フォーサイスの振付を極限まで堪能できる、近年最も評価の高い傑作群の初来日公演。上演は東京、京都、福岡の3都市にて。

■2022年5月 ピナ・バウシュ 『春の祭典』 / ジャメイン・アコニー&マル―・アイラド 『common ground[s]』

ピナ・バウシュ「春の祭典」舞台写真  Photo Maarten Vanden Abeele ©Pina Bausch Foundation

ピナ・バウシュ「春の祭典」舞台写真 Photo Maarten Vanden Abeele ©Pina Bausch Foundation

ピナ・バウシュは、2009年に逝去した後の日本でも、コンテンポラリー・ダンス、バレエ、演劇など幅広い分野で、今なお大きな影響力を誇る不世出の舞踊家。その数ある作品の中でも最も激しいダンスと、舞台に敷き詰められた2トン以上の土の上で踊り続けるダンサー達の迫力のパフォーマンスで知られる代表作が「春の祭典」だ。この楽曲は、“音楽の天才”ストラヴィンスキーによる近代バレエ音楽の最高傑作と言われ、バレエ、クラシック界のみならず、広く一般に知られており、世界中のカンパニーによる上演が後を絶たず、特にピナ・バウシュ振付版(75年初演)は、パリ・オペラ座・バレエ団など世界最高峰のカンパニーによっても上演されるなど、その評価を確固たるものにしている。

ダンスと演劇を融合した「ダンス・シアター」の巨星ピナ・バウシュの伝説の代表作「春の祭典」を、今回は、アフリカ13か国から結集した精鋭ダンサー32名が踊る、全舞台ファン必見の最重要作。加えて、ピナ・バウシュ・ヴッパタール舞踊団の主要パートを歴任したマルー・アイラドと、アフリカ現代舞踊の母ジャメイン・アコニー振付・主演の新作『common ground[s]』 (読み方:コモン・グラウン[ズ])も同時上演する。

〈特別寄稿〉ピナ・バウシュ & ウィリアム・フォーサイス

作家・ヤサぐれ舞踊評論家 乗越たかお

数あるコンテンポラリー・ダンスの振付家の中でも、巨人と呼ぶにふさわしい二人、ピナ・バウシュとウィリアム・フォーサイスの作品が上演される。

この二人は、いったい何がスゴイのだろうか?

ピナ・バウシュはタンツテアター(演劇的ダンス)という手法で、演劇とダンスの垣根を超えた振付家だ。舞台上で踊る人々の感情の機微が、観客の胸にスッと入って突き刺さる。しかもダンスなので、どのシーンも美しい。ダンスには、こんなことまでできるのか…… と世界中のダンス関係者を驚愕させたのである。とくに今回の『春の祭典』は初期の傑作で、約2トンの本物の土を舞台に敷き詰めて踊る。元はロシアの大地の神へ生け贄を捧げる作品だが、ピナは「生け贄を集団が選び出す」という現代的なテーマとして描いた。さらに今回は生前のピナが率いたヴッパタール舞踊団の指導のもと35名のアフリカ人ダンサーが踊る。画期的な挑戦で、ネットの有料配信は世界中で話題になった。

一方のフォーサイスは「バレエを脱構築させた」と言われる振付家である。バレエではセンターにあるべきとされる体軸や重心を自在に変化させ、バレエの新しい領域を切り開いていった。さらに作品も知的でソリッドな興奮に満ちている。今回の『THREE QUIET DUETS』はそんな彼の新境地ともいえる作品である。ストリートダンスのダンサーも加わり、かつタイトルの通り不思議な「静寂(QUIET)」と詩情が漂う。フォーサイス作品をよく知る人も、きっと刮目するだろう。

二人に共通するのは、様々なアートの領域横断的な刺激に満ちた作品という点である。コロナ禍で海外からの招聘公演が困難な昨今、巨匠達の新しい作品・新しい試みを観られる希有な公演だ。見逃すな!

〈プロフィール/乗越たかお〉
作家・ヤサぐれ舞踊評論家。株式会社ジャパン・ダンス・プラグ代表。06年にNYジャパン・ソサエティの招聘で滞米研究。07年イタリア『ジャポネ・ダンツァ』の日本側ディレクター。現在は国内外の劇場・財団・フェスティバルのアドバイザー、審査員など活躍の場は広い。著書は『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』(作品社)、『どうせダンスなんか観ないんだろ!?』(NTT出版)、『ダンス・バイブル』(河出書房新社)、『アリス 川畑文子物語』(講談社)など多数。