お知らせ:シュツットガルト・バレエ団日本公演は中止となりました。(2021.12.6)

2022年3月11日(金)〜21日(日)ドイツの名門シュツットガルト・バレエ団が2018年以来4年ぶりに日本公演を行い、ジョン・クランコ振付『オネーギン』とマリシア・ハイデ振付『眠れる森の美女』を上演する。ドラマティック・バレエの巨匠クランコが創り出したバレエ界の宝ともいえる名作群を大切にしつつ躍進を続けるカンパニーの中心的なプリンシパル(最高位ダンサー)として活躍するのがエリサ・バデネスだ。スペイン出身で、2008年のローザンヌ国際バレエコンクールにおいてスカラシップ賞に選ばれるなど早くから注目され、卓越したテクニックとしなやかな表現力を持ち味に飛躍を遂げている。SPICEでは、2021年8月の来日時にオンラインで単独インタビューを行い、近況や来春の日本公演に向けての意気込みを聞いた。
 

■2021年夏の〈世界バレエフェスティバル〉で飛翔した大注目のバレリーナ

――2021年8月、第16回〈世界バレエフェスティバル〉に参加され、1年半ぶりに日本の舞台に立ちました。日本の観客の前で踊った際の気持ちをお聞かせください。

本当に特別な機会でした。私たちダンサーとお客様が一緒になるまたとない機会だったので、忘れることはないでしょう。

――シュツットガルト・バレエ団はコロナ禍でも活動を再開していましたが、世界のスターがたくさん集まる公演は久しぶりでしたね。

有観客での活動が止まってオンラインで配信したりしてきましたが、ようやく少しずつ観客を入れての公演が始まりました。いかにお客様とつながりを持つのかが大事だと学んできましたが、世界中から参加したダンサーも同じような経験をしてきたので、そのことをお互いに話し合えて刺激になりました。

(C)Roman Novitzky

(C)Roman Novitzky

――〈世界バレエフェスティバル〉ではA・B両方のプログラムに出演し、3作品を踊りました。まず同僚のフリーデマン・フォーゲルさんとAプロで『オネーギン』より第3幕のパ・ド・ドゥ(振付:ジョン・クランコ)、Bプロで『悪夢』〈振付:マルコ・ゲッケ)を披露しました。プログラミングはどのように?

フリーデマンと一緒に何を踊るかについて考え、話し合い、シュツットガルト・バレエ団を象徴するような2つの作品にしました。1つはクランコの名作で日本のお客様も大好きだと知っていた『オネーギン』を選びました。もう1つは日本では上演されていないモダンな作品をということでマルコ・ゲッケの独特な作品を選びました。彼はシュツットガルト・バレエ団の常任振付家を経て現在ハノーファー州立劇場の芸術監督を務めている素晴らしい振付家です。『悪夢』は特別な作品で、今年6月、オンラインでの活動を経て行われた有観客公演で上演しました。カンパニーの60周年記念で、ゲッケも重要な人物の1人として作品を創ってもらったのです。

――フォーゲルさんとのパートナーシップに何か新しい化学反応はありましたか?

もちろんです。ここ数年フリーデマンと踊る機会が多く、より深い存在になり合ってきましたが、パンデミックで接触することが途絶えました。その間にいかに触れあうかということが大事かを感じたので、今回再び踊ることができて有難く感じました。

――Bプロでは、急きょ英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルのワディム・ムンタギロフさんと『白鳥の湖』より黒鳥のパ・ド・ドゥ(振付:マリウス・プティパ)を踊りましたね。

本当にサプライズでした! ワディムはロイヤル・バレエ・スクール時代の同級生ですが、卒業してから12年間出会うことがなく、踊るのもそれ以来でした。日本に着いてからリハーサルを始めましたが、楽しい時間を過ごすことができました。とてもとてもうれしかったです。

エリサ・バデネス photo Yuji Namba

エリサ・バデネス photo Yuji Namba

 

■名作『オネーギン』&色彩感豊かなハイデ版『眠れる森の美女』で来日!

――2022年3月にシュツットガルト・バレエ団日本公演が4年ぶりに行われ2つのプログラムが上演されます。カンパニーの十八番であるクランコの『オネーギン』(1965年初演)ではタチヤーナを踊り、タイトル・ロールのフォーゲルさんと共演予定です。プーシキンの韻文小説に基づき、貞淑さと芯の強さを合わせ持つロシア女性タチヤーナと麗しくも陰も感じさせる貴族の青年オネーギンの恋が劇的に描かれます。バデネスさんの考えるタチヤーナ像とは?

『オネーギン』はクランコ作品の中でもとりわけ傑作です。クランコのバレエが素晴らしいのは、舞台の上でバレリーナを見せるのではなく人物を見せるということ。その人物がストーリーを雄弁に物語るのです。タチヤーナは私にとっても大事な役ですが、時間と経験と人と人との関係における成熟が求められます。このパンデミックを経験したことによって、より違ったタチヤーナの側面をより深く理解できるようになってきたのではないかと思っています。

――タチヤーナは最初夢見がちな少女です。しかし、終幕では公爵夫人となり、かつて恋したオネーギンからの求愛を毅然として拒絶します。今回の〈世界バレエフェスティバル〉で披露された第3幕の"手紙のパ・ド・ドゥ"では、それを強く感じました。

そこが一番難しいです。5年間の人生の変化をたった20分で見せなければいけないのですから! それを見せるにためには、解釈と踊り方を全く変えていかなければなりません。自分の見え方だけでなく、人生に対する物の見方もどのように変わったのかを見せることが重要なのです。

シュツットガルト・バレエ団『オネーギン』 photo Wang Chong Wei

シュツットガルト・バレエ団『オネーギン』 photo Wang Chong Wei

――もう1つの演目が、数々のクランコ作品を初演したマリシア・ハイデが振付した『眠れる森の美女』(1987年初演)です。主役のオーロラ姫を踊り、デジレ王子のアドナイ・ソアレス・ダ・シルヴァと共演予定です。ハイデ版『眠れる森の美女』が日本で上演されるのは2008年以来ですが、コロナ禍に際してシュツットガルト・バレエ団がオンライン配信し話題となりました。魔女カラボスを歌舞伎の女形よろしく白塗りの男性ダンサーが演じることも特徴ですね。

数ある『眠れる森の美女』の中でもっとも美しい舞台の1つだと思います。特にカラボスのカリスマ的な存在感をチャーミングに引き出し圧倒的に表現しています。装置・衣裳(ユルゲン・ローゼ)も素晴らしいので、皆様にぜひご覧いただきたい作品です。

――カラボスと共演している時はどのような気持ちですか?

とても面白いんですよ! 変身している姿と向きあっているので、自分も取り込まれていくのを感じます。愛や憎しみを描いていますが、すべてのキャラクターが好きになる感じですね。

シュツットガルト・バレエ団『眠れる森の美女』 photo Stuttgart Ballet

シュツットガルト・バレエ団『眠れる森の美女』 photo Stuttgart Ballet

 

■「世界を見ること、さまざまな背景を学ぶことがダンサーにとって大事」

――芸術監督がリード・アンダーソン氏からタマシュ・デートリッヒ氏に代わり3シーズンが経ちました。デートリッヒ体制になって何が変わりましたか?

彼にとってこの3年間は非常に難しかったと思います。シュツットガルト・バレエ団らしさを引き継ぎつつ新しい作品をどんどん取り入れてきましたが、昨シーズンは途中から活動ができなくなりました。新シーズンからはまた新しい作品を取り入れていきたいと考えているでしょうし、そうあってほしいです。

――入団から10年以上経ちました。世界各地でも踊り、ミラノ・スカラ座バレエ団やオーストラリア・バレエ団に客演するなど活動の場を広げています。今後追求していきたいことは?

今まで通りにこのまま進んでいきたいです。よりいろいろなカンパニー、人と踊りたいですね。世界を見ることはとても大事です。異なる振付家、踊り手がいて、さまざまな背景があることを学ぶのがダンサーにとって大事です。

――日本の観客に向けてメッセージをお願いします。

今回が始まりであると願っています。これからはお客様をフルキャパシティでお迎えし、芸術と情熱を楽しんでいたきたいですね。どのダンサーにとっても日本のお客様は特別な存在なので、これから日本でもっともっと踊る機会が得られればと願っています。

シュツットガルト・バレエ団『眠れる森の美女』 photo Uli Beuttenmüller

シュツットガルト・バレエ団『眠れる森の美女』 photo Uli Beuttenmüller

取材・文=高橋森彦
※このインタビューはオンラインで実施したものです。
※ポートレート撮影は国の定めた規定にそって、ソーシャルディスタンスの遵守をはじめとする、感染症対策を十分に行い、実施したものです。