Yokohama, Kobe Arena Tour「Life is Beautiful」 
2021.11.21  横浜アリーナ

“人生って素晴らしい。人生って愛おしい。久しくそう思えてない人もたくさんいるんじゃないでしょうか。俺らもそうだった。けど、こうやってまた会えた”

観客一人ひとりとの再会を噛み締めるように、牧 達弥(Vo/Gt)がそう語る。楽しみながら音楽を鳴らし、その楽しみを様々な人と共有できる場が在ることは、やはり彼らにとって何物にも替えられない喜びであるようだ。牧の“会いたかったぞー!”を代弁するようなバンドサウンドの勢いは凄まじく、1曲目「マジック」は疾走感溢れる……どころか“爆発力のある”と言いたくなる感じ。2曲目「平成ペイン」が始まると、アリーナへ伸びる花道へ駆け出していくメンバー。観客と間近で対面し、きらきらとしたその表情からも彼らの喜びは伝わってきた。


go!go!vanillas初のアリーナツアー『Yokohama, Kobe Arena Tour「Life is Beautiful」』。昨年11月に日本武道館公演を成功させたバニラズによる、約1年ぶりのアリーナワンマンだ。客席を360°解放、会場中を駆け回りながら演奏した武道館に対し、今回のアリーナツアーでは、大画面を利用した映像演出など、音楽とリンクさせる形で舞台演出を取り入れることでバニラズ流のエンターテインメントを展開。世界各国の子どもたちの笑顔が映された「お子さまプレート」に象徴されるように、個人のルーツやカルチャーを尊び、多様性を讃えるメッセージをライブに込めた。昨年の武道館があの時点での集大成的なライブだったこと、そして今年3月のインタビューで、映像などと音楽を掛け合わせることの可能性について言及していたことを踏まえれば、このタイミングで新たな見せ方にトライしたのは合点がいく。また、4人全員が作った曲を収録した『鏡 e.p.』のリリースなどに象徴される“メンバーが個性豊かであるほどバンドは面白くなる”といった活動方針、これまで発表してきた曲で歌われていた内容を鑑みれば、“個人のルーツやカルチャーの肯定”という根幹にあるメッセージもバンドの生身の言葉として受け取ることができた。

go!go!vanillas/牧 達弥(Vo/Gt)

go!go!vanillas/牧 達弥(Vo/Gt)

おそらく、「Life is Beautiful」というツアータイトルのインスピレーション源はホロコーストを題材にした映画『Life is Beautiful』だろう。ユダヤ系イタリア人の親子が強制収容所で重労働を課せられるも、父は子に“これはゲームだ”“ゲームに勝てばおうちに帰れるんだ”と嘘を伝える。やがて父は死んでしまうが、子は父の嘘を信じ、最後まで希望を失わずに生き抜くことができた。

同じように、たとえ今苦しい状況にいても、ユーモアを交えながら違う視点から現状を捉えれば、希望を失わずに生きられるかもしれない。そしてそのユーモアとはまさにエンタメが担うべきものであり、音楽とは本来、人生をより楽しくさせてくれるもの。大規模演出を贅沢に使いながらのバニラズ流エンターテインメントが描くのは、夢であり希望だった。


ライブ1本の組み立て方として次のフェーズに入った手応えがあったものの、“新しいことをやるぞ”と気張っている感じはなく、大舞台に緊張している様子もなく、何よりも先に“ライブって楽しい!”という感情が溢れ出してしまっているのがバニラズらしい。そのテンションのまま、セットリストは進み、5〜8曲目では4人それぞれがボーカルをとる曲を順に披露。

長らく会えていなかった友人に語りかけるような唄い出しが今目の前にいる観客への言葉として届けられた、牧による「鏡」(メンバーはバニラズの音楽を求めてやってきた観客のことを信頼しているわけだから、それこそ“長らく会えていなかった友人”を前にするのと同じような感覚なのだろう)。“ささやかな幸せをみんなと共有してもっと大きな幸せに変えられたら”という柳沢 進太郎(Gt)の想いが込められたミドルナンバー「12:25」。 長谷川プリティ敬祐(Ba)は“自分の人生なんて美しくないと思っている人にも心からLife is Beautifulと思って帰ってほしい”と大分弁で熱く語り、「バームクーヘン」で炎をバックにシャウトした。「Ready Steady go!go!」でのジェットセイヤ(Dr)は、センターステージでドラムを叩きながらの歌唱。シンバルやタムが倒れるほどに奔放に叩きながら歌い、その熱にあてられたのか、プリティが床に寝そべりながらベースを弾いていたのも印象的だった。そして、“バニラズ名物全員ボーカル、いくぞー!”(プリティ)と始まったのが「デッドマンズチェイス」。センターステージ、上手花道、下手花道に1本ずつ置かれたマイクを椅子取りゲームのようなノリで奪い合うステージングはバニラズならでは。マイク争奪戦の裏で柳沢が背面弾きをするなど、はちゃめちゃに駆け抜けると、曲が終わり暗転したあと、ステージから“カオスすぎる……(笑)”という声が聞こえてきた。

go!go!vanillas/柳沢 進太郎(Gt)

go!go!vanillas/柳沢 進太郎(Gt)

“いや〜、好きなようにやらせてもらってます!”“何より今日開催されたこと! よう来てくれたね!”と牧。2度目のMCでは、今回のツアーでまわった神戸、横浜が港町=文化が往来する町であることに触れ、そこから、カルチャーへの憧れを詰め込んだ「倫敦」へと繋げた。スモークが立ち込める中、傘を片手にステージを練り歩きながら歌う牧。そのあとの「ca$h from chao$」、「アダムとイヴ」含め、『PANDORA』収録曲を3曲続けたこのセクションは、舞台演出との相乗効果もあり、濃厚なムードの中、曲の持つメッセージが強調される形に。アルバムツアーからの進化を感じさせられた場面だった。

go!go!vanillas/長谷川プリティ敬祐(Ba)

go!go!vanillas/長谷川プリティ敬祐(Ba)

3度目のMC。セイヤがギターを持ってきて“「JETT ROCK SCHOOL」やるか!”と言い始めたかと思えば、“いや、大丈夫”と笑って制する牧。どうやら柳沢がトラブルのため一時退出中とのこと。そこで急遽残った3人で「アクロス ザ ユニバーシティ」を演奏することに。レアな場面でバンドとしての頼もしさを見せ、観客をしっかり喜ばせると、柳沢復帰後の「カウンターアクション」以降はクライマックスに向けてアッパーチューンを続けた。本編ラストのMCでは、牧が、コロナ禍で本当にライブを開催すべきかどうか悩んだこと――しかし“コロナ禍であろうが、喜びや楽しむことは誰にも制限できない”という意思から、感染症対策を十分にとった上でツアーを開催することに決め、この日に向けて準備を重ねてきたということを明かした。

go!go!vanillas/ジェットセイヤ(Dr)

go!go!vanillas/ジェットセイヤ(Dr)

“命ある限り音楽を作り続けたいと思います。なので、みんなに新曲を聴いてほしい”。そんな言葉とともに演奏したのが、ツアータイトルと同名の新曲「LIFE IS BEAUTIFUL」。そして同じく人生の美しさを歌った「パラノーマルワンダーワールド」だ。人の一生、命が巡ることを描いたアニメーション映像の中で桜が舞うと会場内でも花吹雪が舞い、本編は終了。因みに、ライブのクライマックスを担った「LIFE IS BEAUTIFUL」とSEとして使用されていたインスト曲「RUN RUN RUN」は、今ツアーの会場限定で販売されていたCDに収録されていたもの。フィドルやピアノ、フリューゲルを取り入れた幸福感あるサウンド、アイリッシュ/ケルト系の音楽が今の彼らのトレンドなのだろうか。


アンコール前、セイヤが“会場の大きさに関係なく、来てくれるみんなと俺らのテンションが上がって、高次元に行けるのがライブ”“俺はこの空間を信じる”“この日のために俺は生きてる”と言っていたが、おそらくそれは4人共通の想いだろう。この日最後に演奏された――そしてこれまでのライブでもラストに演奏されてきた――「ギフト」のことを牧は以下のように紹介した。

“今横浜アリーナに立てていること、10年前の俺が見たらびっくりすると思う。もちろん努力を重ねてきたつもりだけど、いろいろな悲しいこともあった。いろいろなつらいこともあった。でもその都度、その気持ちを曲に詰め込んでやってきた。最初はちょっと強がったような言葉を使うことが多かったけど、いろいろな街に行って、俺らの音楽を待ってくれている人が1人、2人、3人……たくさん増えてきて。音楽っていうのは、誰かの力になって、なんかちょっと強くなった気持ちになれて、悲しい時に慰めてくれて、一人の自分をちゃんと肯定してくれるもの。そういう音楽を作ろうと思って書いたのが、今から歌う最後の曲です”

“またここにいる全員と会えるかは分からん。それぞれに歩いていく道があって、人生があるから。でも、またぜってー会いてえ。俺らが音楽を続けている間は今日会った全員幸せでいてほしいし、元気でいてほしい”


人生にはいろいろなことがあるから、どんな時でも自分の今を肯定できるとは限らない。しかし、それでもあなたの人生は美しいのだと伝えてくれる音楽、私個人の存在を肯定してくれる音楽がそばにいてくれたならば、それはどんなに心強いことか。彼らは、少なくともバニラズの音楽を求めてこのライブにやってきた、会場に来られずとも配信で受け取った、あなたにとって、そんな存在になることを望んでいるのかもしれない。暗闇も悲しみも、音楽で以って光や希望に変えていく。バンドの力強い意思を感じたライブだった。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=西槇太一