卓越したダンス力で知られる東山義久をリーダーに2003年、男性7人のダンスボーカルユニット「DIAMOND☆ DOGS」が発足した。メンバーの卒業・加入を経て公演を重ね、成長してきたグループが2021年12月、元宝塚歌劇団星組トップスター北翔海莉をゲストに迎え、旗揚げの地・博品館劇場(東京・銀座)で新たな挑戦への一歩を踏み出した。2.5次元などで活躍する、宇治川まさなりを脚本・演出に招いたオリジナル新作『KIRARI SHOW ACT☆PARADISE THEATER​ 夜想曲 ノクターン』だ。ゲネプロの模様をお届けする。

初日の開幕を数時間後に控えた12月5日昼過ぎ。「通し稽古を上演します」という舞台上からの一声でゲネプロが始まった。

ピアノと弦が奏でるミステリアスな音楽が流れ、漆黒の闇の中、下手寄りにすっくと立った北翔を、青い照明がやわらかく照らし出す。「こんなにも夜が美しく、静寂なものだとは知らなかった。深い闇夜の奥からきらびやかな星の光が差し込んできて、誰かをいとおしく思う気持ちが心を清らかにしている。生きてきた自身の旋律が音楽を奏でていることにさえ気づかなかったわ……」。紫色のエレガントな衣装が美しい。続いて中央ブロックに立った東山に照明があたり、モノローグから北翔との対話へ。抽象的だが、深い感情を伴った詩的な言葉の応酬。これから展開されるであろうドラマへの期待が高まっていく。


一瞬の暗転の後、情熱的な赤の照明に一転。アップテンポの音楽に乗ってバラを持った男性6人によるダンス。続いて4人、3人とコンビネーションを変えながら様々なダンスが繰り広げられ、これに銀色のスカートに黒いサッシュベルト、ポニーテール姿に装いを改めた北翔が絡む。さらに全出演者12人による総踊り、タップダンス、歌へ。観る者を、あっという間に劇世界に引きずりこんでいく。

企画・製作に関わる博品館劇場によると、今回は「ミュージカルでもなく音楽劇でもなく、あえて『SHOW ACT』と名付けた」のが今回の舞台だという。「SHOW ACT」とは何か、プログラムに掲載された出演者の言葉から探ってみると——「DIAMOND☆DOGS新体制となってからは、メンバー全員で挑戦する初めての芝居作品」(和田泰右)、「お芝居だけでなく、ショーもあるSHOW ACT」(咲山類)等々。ショーを得意とするDIAMOND☆DOGSにとって、より芝居色の濃い世界をめざしたものといっていいかもしれない。ちなみに「DIAMOND☆DOGS新体制」とは、東山をリーダーに中塚晧平、和田、咲山、そして2019年から加わった廣瀬真平、新開理雄、Homerの7人組。本公演にはこのメンバーに加え、卒業組の小寺利光、DIAMOND☆DOGSではおなじみのダンサー長澤風海、若手の川原一馬、若松渓太、そして紅一点の北翔が参加している。

プロローグのショータイムが終わると、一転、せりふ劇へ。

舞台は架空の街トーキョー。二人の男が闇カジノ「夜想曲」の倉庫で偽装パーティーの準備をしている。一人はエンターテイナーを目指すゲイの青年・ジェミニ(若松)、もう一人はその友人で、やはりエンタメ界に思い入れを持つピスケス(長澤)だ。やがて兄貴分のカプリ(和田)と、「夜想曲」経営者のライブラ(小寺)が登場。そこに様々な理由で莫大な借金に苦しむ男たちが連れてこられた。


もとは有能な証券マンだったが、離婚や失業に苦しむ中、持ち家が被災し、多額のローンを抱えたタウラス(Homer)、家業の蕎麦屋を継いだもののうまくいかず閉店寸前のサジ(新開)、風俗店経営のアクア(川原)、売上金を使い込んで逃亡中のホスト・スコーピオ(廣瀬)、ギャンブル好きが高じて闇金融に手を出して追い回されている営業マン・バルゴ(咲山)の5人だ。


彼らが集められたのは、組事務所に移送される大金強奪のためだった。企てたのは、秘密組織の主催者レオ(東山)、「夜想曲」の歌手で、大金強奪の司令塔・アリエス(北翔)、そして過去にアリエスと恋愛関係にあったキャンサー(中塚)。借金の5人のスマホを奪い、現金強奪作戦に着手したまでは良かったが、余りにも早い警察のサイレンに驚いたバルゴが誤ってアクアを撃ってしまったことから、事態は思わぬ方向に展開していく。

闇カジノ、現金強奪といったダークな世界を舞台に、本名を明かさず、星座由来のコードネームで悪事をたくらむ男女。これに思わぬ裏切り、どんでん返しを交えた物語を2時間弱で一気に描く。主軸は大人のハードボイルドだが、舞台としての魅力はやはり、その見せ方にある。


たとえば、ジェミニとピスケスが、パーティーの準備をしながら思わず踊ったり歌ったりしてしまう場面。ショーの世界を夢見ているという設定の二人だからこそ自然で、流れを妨げないし、何より、芝居とレベルの高いパフォーマンスが両立していた。脚本・演出の宇治川による「当て書き」が奏功した部分だろう。さらに、莫大な借金を抱えて「夜想曲」に連れてこられた5人の男による自分語りも然り。それぞれの個性を生かした構成で、元々はシンガーとしてDIAMOND☆DOGSに加入した咲山の、はっちゃけた三枚目的な要素をうまく引き出していた。また、優れたダンサー揃いのカンパニーにジャズ、ラテンからタップ、フラメンコ、タンゴまで多彩なナンバーを用意。さらに東山、北翔という三拍子そろった実力派に存分に腕をふるわせたうえで、このところ、進境著しい中塚を対峙させ、男と男、男と女のドラマを構築。プロローグとエピローグの呼応や、『ハムレット』ばりのせりふも含めて、スタイリッシュな仕上がりになっていたと思う。

莫大な借金を抱えてどうしようもなくなっても、セクハラやいじめに苦しんでも諦めないで——。「世の中、お金より大切なものがある」「人生、やり直すことができる」というメッセージとともに、「一夜の夢」である舞台への熱いも伝わるステージとなった。架空の都市が舞台で、役名もカタカナ中心。説明ぜりふは少なめのおしゃれな作品なので、何度も見て確認したくなってしまうかもしれない。


文=刑部圭           

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