日本のミュージックシーンの第一線で活躍した音楽家・加藤和彦の伝説的なアルバム『うたかたのオペラ』『パパヘミングウェイ』『ベル・エキセントリック』の3部作をベースに舞台化した幻の名作、ドラマティック・レビュー『うたかたのオペラ』が、12年ぶりに蘇る。

舞台は満州を思わせる新帝国の都。「シャトー・ド・レーヴ」というレビュー小屋で起こった出来事を若き兵士が裁判で語りはじめる。そのレビュー小屋で生きた人々と、戦争の悲哀──そして愛と悲願を。

2009年大阪松竹座で初演され、翌年2010年に東京日本青年館で再演されて以降、上演されることのなかった本作。謎めいた美しい歌姫・メイファ役は元宝塚歌劇団星組トップスターで歌・ダンス・芝居と三拍子揃った北翔海莉が務める。レビュー小屋「シャトー・ド・レーヴ」の道化師ドクトル・ケスラー/アマカス役は中村誠治郎。脱走兵であり、戦後裁判を受ける兵士・宗一役は神里優希。そのほか、シャトー・ド・レーヴの座員として佐伯亮、大隅勇太、鳳翔大、宮川安利、花陽みく、などが出演する。

今回、中村誠治郎、神里優希に作品についてうかがうことができた。

ーーこの作品への印象についてお願いします。

中村:前回の映像を見ましたが、もう圧倒されました。歌の力と表現力があまりにもすごくて、これを自分が演じるのかと思うとすごく怖くなりました。

神里:まだ映像は見ていませんが、曲数の多さに圧倒されました。さらに僕の役はセリフの量がすごく多いんです。

中村:そっか……ずっとしゃべってるもんね。

中村誠治郎

中村誠治郎

神里:そうなんです、ストーリーテラー的な役割を持っているので、そこがひとつの見どころじゃないかなと思っています。お客さまを引き込むことができるように頑張りたいです。

ーーご自身の演じるキャラクターはどのような人物ですか?

神里:僕は脱走兵です。そしてたどり着いた先がレビュー小屋の「シャトー・ド・レーヴ」なんです。ストーリーテラーの様に目撃者として説明しながら物語を進めていくセリフと、松田宗一として生きている部分のセリフとの切り替えを大事にしたいです。

中村:ケスラーとアマカスって、同一人物ではあるんですけど、人前での属性や立ち振る舞いが違うんです。陰と陽ってわけじゃないんですけど、邪の違いがあるなって感じています。ケスラーの無邪気の邪と、アマカスの邪悪の邪。それぞれ表裏一体だと思いますが、芝居中でそういう印象を受けました。前作の彼らを追いかける訳ではなく、自分自身が台本を読んで感じたケスラーとアマカスを表現したいです。

ーー今回は前回から演出も変わるとうかがっています。

中村:前回がレビュー主体だったんですけど、今回はより演劇や歌によった舞台になると聞いて安心しています。意外だって言っていただけるんですが、実はダンスはほぼ未経験なんですよ。殺陣はできますが、ダンスができなくて。お声掛けいただいた時に「ダンスは苦手ですよ?」って言ったくらいです(笑)ただ、カンパニーが変われば作品も変わるし、僕にしかできないことをやらないとなって思いました。できることだけやっていても意味がないので、新しい挑戦をします。新しい扉を開けます。

神里:再演ですけど、12年も経っているので初演のような感じがしています。演者も全員違うし、演出もかわると聞いているので、ゼロからしっかり作っていこうと思っています。

中村:僕はもう前作の映像は絶対見ない!(笑)

神里:見ない方がいいのかなぁ……うーん……。

中村:台本だけじゃ分からない部分が、舞台になった時のパワーが本当にすごくて、見たら前のケスラーたちを追いかけちゃうと思うんです。だから、自分たちで令和版の『うたかたのオペラ』を作ります。

神里:じゃあ、やっぱり見ないです! 終わってから見ます。

中村:僕2回も通して見ちゃったもん。本当にすごいんだよ、作品の雰囲気も曲も良くて、見てるとあっという間!

神里:え……すごく見たくなるじゃないですか……! うーん、どうしよう……。

(左から)中村誠治郎、神里優希

(左から)中村誠治郎、神里優希

ーーおふたりは今回が初共演とのことですが、お互いの印象をお願いします。

中村:さっきまで撮影してたんですよ、一緒に。「肌質が違うな……」って思いました。

神里:肌質……!(笑)

中村:「ごめんなさいね、こんなおじさんとね……」ってずっと言ってました。ひとまわり以上離れているんで(笑)。印象は、さわやかだな〜って、すごい格好いいですよね? マジ格好いいよなーって思ってました。

神里:中村さんはめちゃくちゃ「ダンディ」! 大人の男の色気があります!

中村:(声のトーンを落として)これからはこの感じでやっていきますか。神里くんはキュートだよね、セクシーとキュートで。

ーーそのほかのカンパニーメンバーへの印象はいかがでしょう。

神里:実は顔合わせもこれからですが(取材は12月上旬)、僕、全員はじめましてなんです。すごく緊張しています。

中村:そうなんだ! 今は飲みにもいけないしね……。

神里:お酒飲めるとすぐに仲良くなれたりしますもんね。

中村:僕は北翔さんをはじめ、亮も勇太も他の舞台で共演しています。北翔さんは『ふたり阿国』で夫婦役だったんです。僕が守って戦う役で。

ーーでは、今回の役どころではいかがでしょうか?

中村:『ふたり阿国』の時は僕、歌がなかったんです。殺陣担当って感じで。今回の『うたかたのオペラ』では、がっつり歌があるんです。北翔さんと歌うシーンもあるし、ソロもあるし……。北翔さんに引き出してもらいます! 以前ご一緒した時、北翔さんが扇子を投げて、僕が受け取るっていうシーンがあって。それの練習をずっと袖でもやっていらしたんです。僕は北翔さんは「天才」だと思っていますが、それも努力をしてやってきた本物の天才。稽古場から完璧なんですよ。すごく気も使える方で、僕が楽屋とかで寝ているとわざわざ起こしに来てくれるんです。「旦那様、ご用意はできておりますか?」って。「今起きたー!」って起きてました(笑)。

神里:(笑)。僕も北翔さんにお会いするのが楽しみです。

中村:「宗一様、お時間ですよ」って起こしてくれるかも。

神里:うわ〜、めちゃくちゃ言われたいですね(笑)。いい声で起こされたいです、がんばれますね。

神里優希

神里優希

ーー今回のタイトル「うたかた」の「オペラ」という単語について、どんなイメージがありますか?

神里:え〜!  む、むずかしい……。

中村:どっちがいい……?

神里:「オペラ」にします。勝手なイメージですけど、スーツとかかちっとした服で観に行くお堅いイメージです。実際に観たことがなくて……む、難しいですね。ただ、オペラって歌と演劇でできているので、今僕がやっているミュージカルの元になっているんですよね。あのアルバム(『うたかたのオペラ』をはじめとする3部作)自体がドレスアップした男女の出会いと別れを表現してる作品だそうで、いい時代のベルリンをイメージして加藤さんが作られたアルバムだとうかがっています。そういう意味でも、オペラという形式ではないですけど、オペラをイメージした舞台になるんじゃないですかね。……って、スタッフさんから聞きました!(笑)

中村:「うたかた」担当です。夢の中ってイメージです。演じていて思うんですけど、舞台に立ったらまさに「うたかた」です。自分じゃない自分、自分じゃない人として舞台に立つので、本当に「夢の中」って感じなんです。例えば、どんな役をやってもどんな作品をやっていても、役の大小関係なく、板の上にいる時は何回演じていても楽しいです。でも、袖から出るのはイヤな時があります。「何回やるんだよ! 飽きたわ!」という人間なので。でも、いざ、袖を出て板の上に立つと楽しくて、一瞬なんです。だから、本当に「うたかた」って感じがします。──うまいこと言えたなぁ……(笑)。

神里:(笑)。

ーー最後に、記事をご覧のみなさまへメッセージをお願いします。

神里:とても独特な世界で、「うたかた」とついているくらい儚いお話です。その中で生きている人々の生き様を見逃さないようにしていただきたいですし、僕はシャトー・ド・レーヴの目撃者としてみなさまに伝えられるように頑張りたいです。たくさんの歌やダンスがありますので、そのあたりを楽しんでいただきたいです。

中村:なんといっても見どころは北翔海莉さんでしょう。僕がこの舞台をセールスするなら北翔さんを売り込みます、彼女がどれだけすごい俳優さんかって。六行会ホールで北翔さんが本気で歌ったらどうなるんだろうって楽しみです、あのホールが壊れちゃうんじゃないかなって。チラシを見た時に、中身が想像できないと思うんです。だからこそ、それもひとつの見どころだと思っています。あとは中村誠治郎ががんばれるかって、僕のファンは心配してると思います(笑)、日々成長です。しかし、なにはともあれ北翔海莉です!

(左から)中村誠治郎、神里優希

(左から)中村誠治郎、神里優希

和やかなインタビューからは、カンパニーの作品への期待が感じられた。80年代に生まれたアルバムが、21世紀に舞台化され、今再演される。ドラマティック・レビュー『うたかたのオペラ』は東京・六行会ホールで2022年1月13日(木)〜23日(日)まで上演予定。

ヘアメイク=柗本和子

取材・文=森 きいこ  撮影=加美山莉奈