Spotifyから2022年の年賀状として、Spotify公式プレイリスト『Tiger』が公開された。今年の干支・寅にちなんだタイトルで、2021年を象徴するような楽曲のほか、2022年の音楽シーンで活躍を期待するアーティストと曲をミックスした100曲がリストイン。選曲には、Spotify Japanのエディトリアル・チームのほか、毎週水曜に新曲を紹介しているポッドキャスト『New Music Wednesday M+T Edition』のエディトリアルチームと同プログラムのナビゲーターであるMC竹内琢也、そしてSPICEチームが参加している。また、このプレイリストをさらに深掘りする公式プレイリスト『Tiger M+T Edition』も同時に配信がスタート。100曲から20曲を厳選して、プレイリストだけでは知ることができないエピソードをMC竹内琢也が紹介する。今回は、2022年も「新たなアーティスト、楽曲にたくさん出会ってほしい」という願いを込めて、ピックアップされた20曲を紹介しよう。

STUTS「Presence」


2021年はドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』の主題歌「Presence」で一躍ヒットしたSTUTS。同楽曲は女優の松たか子も参加し、5人のラッパーが毎週違ったバージョンを披露したことで、これまでにないドラマ・エンディングとして話題となりました。ちなみにSTUTSは、日本でスタートした次世代アーティストをサポートするプログラム『Spotify Early Noise』の初年度に選出され、2017年12月に開催されたイベント『Early Noise Night』にも出演。その直後に星野源にフックアップされブレイクしました。Spotifyには『大豆田とわ子と三人の元夫』のオフィシャルプレイリストが展開されており、STUTSに加え、劇伴・挿入歌の坂東祐大とドラマのプロデューサーの佐野亜裕美が座談会形式で主題歌誕生の経緯や、録音や撮影の裏話など、「とわ子」を彩る音楽について語っています。このトークの中で、1話目にKID FRESINOが起用された理由は、監督の坂元裕二とドラマプロデューサー佐野亜裕美の意見だったことも明かされています。

中村佳穂「アイミル」


2021年7月に公開され た、細田 守監督の映画『竜とそばかすの姫』では、主人公すず(ベル)役と劇中歌を担当した中村佳穂。メインテーマを手がけたmillennium paradeと共に、millennium parade × Belle(中村佳穂)名義で紅白歌合戦に出演するなど、2021年の音楽シーンで大きな注目を浴びました。中村佳穂名義としては2019年の「Rukakan Town」以来1年9ヶ月ぶりで、2021年唯一のシングルとなる「アイミル」が『Tiger』にリストイン。2020年の配信ライブで披露して以来、長らく音源化が望まれていた曲です。ちなみに2019年度の『Spotify Early Noise』に選出されていて、同年度にはKing Gnu、ずっと真夜中でいいのに。、Mega Shinnosuke、秋山黄色など今大活躍しているアーティストが多数フックアップされています。2022年の『Spotify Early Noise』アーティストは1月中旬ごろに発表予定です。

kiki vivi lily「Lazy」


10月に2ndアルバム『Tasty』をリリースしたkiki vivi lily。同アルバムに収録されている「Lazy」がTikTokヒットとなり、たくさんの動画がこの楽曲で作られました。同楽曲は2016年から温めており、kiki vivi lilyにとって初のバンド・レコーディング曲でもあります。Spotify上では日本の素晴らしい音楽を海外に紹介するプレイリスト『Tokyo Rising』で好パフォーマンスを記録しており、現在長期リストインしています。

Vaundy「踊り子」


2021年は2月リリースの「融解Sink」に始まり、「しわあわせ」、「benefits」、「花占い」、「Tokimeki」、「泣き地蔵」、「踊り子」と多数リリースしてきたVaundy。それ以外にもAimerとの「地球儀」、milet×Aimer×幾田りらの「おもかげ」、Chilli Beansの「lemonade」をプロデュースするなど本当に多くの作品を送り出してきました。そんなVaundyが「ひさびさにパッと出てきた曲で、いままでで一番好きな曲」と語るのがこの「踊り子」。『Tiger』にもリストインしました。2021年にSpotifyが国内サービス開始から5周年を記念して公開した、過去5年間に国内で最も再生された100曲を集めたプレイリスト『Go Stream』にも「不可幸力」、「napori」がリストインしています。

Yaffle「Reconnect」


2021年に、ゲームボーイ用ソフト『ポケットモンスター赤・緑』の発売から数えて25周年イヤーを迎えた『ポケモン』。2021年2月27日(土)のポスト・マローンのバーチャル・ライブを皮切りに、ポケモンを愛する世界各国のビッグ・アーティストがオリジナル楽曲やカバー曲を提供。その総括とも言える作品『Pokémon 25: ザ・アルバム』が10月にリリースされました。ケイティ・ペリー、リル・ヨッティ、メイベル、ジャックス・ジョーンズなど様々なアーティストが参加し、日本からはYaffleがDaichi Yamamoto、AAAMYYYをフィーチャーした「Reconnect」が収録されていました。この「Reconnect」は『ポケットモンスター 赤・緑』のゲーム音源をサンプリングしたトラックにDaichi YamamotoのフローとAAAMYYYのポップなボーカルが印象的な曲。リリース週には日本のみならず10カ国以上の『New Music Friday』にリストイン。海外のエディターからも高い評価を得たようです。そしてSpotifyの大型プレイリストである『Tokyo Super Hits』や、海外アーティスト中心のプレイリストにも関わらず高いパフォーマンスを獲得した『Hot Hits Japan』にもリストインしています。

エド・シーラン「Overpass Graffiti」


昨年は精力的に活動したエド・シーラン。アルバム『=(イコールズ)』や、エルトン・ジョンとのコラボで自身初となるクリスマスソング「Merry Christmas」のリリース、父親としての姿を映した動画で人気のYouTuberでブロガーのラドベイビーのクリスマスソング「Sausage Rolls for Everyone」にエルトン・ジョンと参加し(しかも、クリスマス週のUKシングルチャート制覇!)話題が絶えませんでした。アルバム『=』からは「Bad Habits」や「Shivers」などもヒットしていますが、「Overpass Graffiti 」がリストイン。80'sシンセポップムードのこの曲はアルバム内でも評価が高く、ニューヨーク・タイムズのレビューでは「アルバム内のベストソング」と評されています。ちなみに同アルバムリリース直後からストリーミングのパフォーマンスは非常に良く、Spotify上ではエド・シーランを特集する「Experience Equals」というハブが作られました。

ピンク・パンサレス「I must apologise」


2021年のライジングスター、ピンク・パンサレス。2001年にイギリス人の父親とケニア人の母親の間に生まれ、現在はイギリスを拠点に活動するアーティストです。Spotify次世代アーティスト応援プログラム『RADAR: Early Noise』のUKのものに選出されています。2021年のブレイクスルーシングルでもあるムラ・マサプロデュースの「Just for me」は『New Music Friday UK』でリゾの「Rumors feat.カーディ・B」に次ぐ2番目にピックアップされていました。90年代や00年代初期の曲たちに大きく影響を受けていて色んな曲を実際にサンプリングして楽曲を制作しており、「I must apologise」はクリスタル・ウォーターズの1991年の楽曲「Gypsy Woman (She's Homeless)」をサンプリングしています。

ザ・ビートルズ「Get Back - 2021 Mix」


1970年に発売されたザ・ビートルズによる、最後のオリジナル・アルバム『Let It Be』のスペシャル・エディションが、2021年10月に発売となりました。オリジナル・アルバムの音源がリマスターされ、リハーサル・テイク、スタジオ・ジャム等の未発表音源なども収録されており、大きく話題を呼びました。この作品はビートルズ作品のリミックスとハイレゾ化のプロジェクト『50周年記念エディション・アニバーサリーシリーズ』の作品となり、2017年の 『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』、2018年は『The Beatles (White Album)』、2019年は『Abbey Road』に続くものとなります。2021年は他にも、メタリカ『Metallica』、ニルヴァーナ『Nevermind』、U2『Achtung Baby』、 R.E.M『New Adventures in Hi-Fi』など、周年を迎える名盤にスポットライトがたくさん当たりました。

くるり「I Love You」 


2021年4月にリリースになったくるりのアルバム『天才の愛』から「I Love You」がリストイン。前作『ソングライン』から約2年8ヶ月ぶりとなるアルバムですが、作品制作自体は2017年頃から始めていたようで『ソングライン』と制作時期が重なっています。岸田繁が「『THE PIER』以来の勝負に出た作品」と語るように、挑戦的かつ実験的で、多くの音楽ファンに愛されている2021年重要作品です。

クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」


12月にリリースされたアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』から、「ナイトオンザプラネット」がリストイン。Spotifyでは、ボーカルの尾崎世界観による全曲解説を聴くことができる『Liner Voice+ クリープハイプ「夜にしがみついて、朝で溶かして」』がリリース日に展開されており、その中で尾崎世界観は同楽曲について「今回のアルバムをリリースしたのは、この曲をどうしてもCDとしてリリースしたかったというのも大きい」と語るほど大事な曲だそう。そしてこの曲の冒頭の歌詞<夜にしがみついて、朝で溶かして>が、アルバムタイトルになっているのですが、「ライブ前日に「ナイトオンザプラネット」を何度か練習している時に、この言葉はクリープハイプのアルバムっぽいなと思ってタイトルにした」と語っています。このタイトルはジム・ジャームッシュ監督の映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』から取られており、バンド名もこの映画のセリフから取っているそう。Spotify上では従来のファンに加えて、新たな10代のファンも増加傾向のようです。

(sic)boy「Last Dance feat.Wes Period(Prod.KM)」


Spotifyが大きな飛躍を期待する注目アーティストを選ぶ『RADAR:Early Noise 2021』に選出された(sic)boy。HIPHOPプレイリストだけではなくロック系プレイリストにもピックアップされ、2021年は大きく注目度もあがりました。12月8日(水)にはリル・アーロン、フェム、アリス・ロンギュ・ガオ、ウェス・ピリオドなどの海外アーティストや、AAAMYYY(Tempalay)やGottz(KANDYTOWN)、釈迦坊主といった国内アーティストを迎え、プロデューサーとしてKMが参加したた2ndアルバム『vanitas』をリリース。プレイリスト『New Music Wednesday」のカバーも飾りました。インタビューでは「これまで表現してきた内面的な鬱の感情から、より前向きになったイメージ」を目指したとコメントしています。Spotifyエディトリアルチームは『Early Noiseプログラム』やその他のプレイリストなどで「sicboyを知るきっかけのひとつを作れたことは誇り」とコメントしています。

KID FRESINO「Rondo」


2021年が始まってすぐの1月6日(水)に前作『ài qíng』から2年ぶりとなるアルバム『20,Stop it.』をリリースしたKID FRESINO。Seiho、JJJ、BIM、Campanella、カネコアヤノ、長谷川白紙などが参加し、生音とミニマルなトラックが共存した同作は間違いなく2021年重要作品の一つでしょう。KID FRESINOはインタビューで「『ài qíng』から地続きの作品。『ài qíng』以上にバラエティーに富んだ図鑑みたいなアルバムにしたくて、自分の頭の中にあるアイデアや自分の音楽的な歴史、その断片を散りばめて、1曲、1曲作っていった作品ですね。今のヒップホップは多様性をはらんでいるから、色んな要素が入り交じったシングルコレクション的な作品にどうしてもなってしまいがちなんですけど、自分はアルバムというフォーマットにこだわって、作品をまとめようと試行錯誤しました」と語っています。『Tiger』のプレイリスト制作時には、『20,Stop it.』収録曲から多数の曲が候補として挙げられましたが、最終的に「Rondo」がリストイン。KID FRESINOは「「Rondo」のメロディーの一部はフジファブリックの楽曲「Surfer King」に触発されたもの」だと語っています。

ビリー・アイリッシュ「Oxytocin」


衝撃的なデビューアルバムとなった2019年の『When We All Fall Asleep, Where Do We Go?』以来となる約2年半ぶりのセカンドアルバム『Happier Than Ever』を7月にリリースしたビリー・アイリッシュ。前作とムードを大きく変えたサウンドが詰まったアルバムで、リリース時の評価は割れていましたが、レビュー収集サイトのメタクリティックによるとレビューの平均点は86/100という高評価。ローリング・ストーンやインディペンデントなど多くのメディアがイヤー・エンド・リストにピックアップしました。そんな中この『Tiger』にリストインしたのは「Oxytocin」。「bad guy」と比較されることも多い、アルバムの中で異彩を放つエレクトロニックな楽曲です。エレクトロニックミュージックを扱う音楽メディア、Resident Advisorのイヤー・エンド・リスト『The Best Tracks of 2021』にリストインしています。

タイラー・ザ・クリエイター「RISE!(feat. デイジーワールド)」


タイラー・ザ・クリエイターが6月にリリースしたアルバム『CALL ME IF YOU GET LOST』から「RISE! (feat. デイジーワールド)」がリストイン。同アルバムはNMEの『The 50 Best Albums of 2021』5位、ピッチフォークの『The 50 Best Albums of 2021』3位、ビルボードの『The 50 Best Albums of 2021』2位、コンプレックスの『The Best Albums of 2021』1位など多くの音楽メディアのイヤー・エンド・リストでピック・アップされました。アルバム・ジャケットには「タイラー・ボードレール」というタイラー・ザ・クリエイターが扮する架空のキャラクターのトラベル・パーミッションが描かれています。またこのキャラはフランスの詩人・評論家シャルル・ボードレールの名前が由来などアートワークや設定も秀逸なアルバムです。

リンダ・リンダズ「Oh!」


2005年の日本映画『リンダ リンダ リンダ』(もちろん映画タイトルの由来はTHE BLUE HEARTS「リンダリンダ」)にちなんだバンド名でLAのティーンエイジャー・バンドのリンダ・リンダズ。2021年5月にアメリカロサンゼルス公共図書館でのライブで披露した、ドラム担当のミラが新型コロナウイルス流行直前に学校で同級生から受けた人種差別を基にして制作された曲「Racist, Sexist Boy」の映像が爆発的に拡散され、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーなどから賞賛されるなど世界的に話題になりました。アメリカのNPRなどこの楽曲をイヤー・エンド・リストにピックアップする音楽メディアも少なくなかったです。『Tiger』にリストインした「Oh!」は名門エピタフ・レコードと契約して初となるシングルです。

スピッツ「紫の夜を越えて」


1991年3月25日に「ヒバリのこころ」でデビューしたスピッツが、デビュー30周年となる2021年3月25日にリリースしたシングルがこの「紫の夜を越えて」でした。『NEWS23』のエンディングテーマとして書き下ろされた楽曲で、報道番組のテーマ曲に起用されるのは今回が初となります。草野マサムネさんは「新型コロナの影響で従来の価値観が揺らいで、社会全体が不安の霧で覆われそうな昨今です。そんな日々の締めくくりに『NEWS23』を見て一喜一憂した後に、この曲を耳にされた方々が今後少しずつでも霧が晴れて、明るい方へ向かっていけるイメージを持ってもらえたらという思いで作りました」とコメントしており、歌詞もやはり現在のムードを反映したものに。ニュース番組のエンディングテーマという制作背景も相まって、2021年を映す作品となりました。過去のニュース映像を観ながら、楽曲制作を行ったそうです。

銀杏BOYZ「少年少女」


TVアニメ『Sonny Boy』の主題歌として銀杏BOYZが書き下ろし、7月にリリースされたシングル「少年少女」。メロディがポップで聴きやすく美しい楽曲で、Spotifyエディトリアルチームは「2021年J-Rockのベストの一つだと思います」と語っていました。年末には2020年10月リリースのアルバム『ねえみんな大好きだよ』の収録曲「GOD SAVE THE わーるど」を12inchアナログシングルとしてリリース。このシングルに収録された、広末涼子「MajiでKoiする5秒前」のバンドアレンジカバーも秀逸でした。現在、Spotifyの一番人気プレイリスト『Tokyo Super Hits』にリストインするなど、ヒット中。

Nenashi「Scars」


ストリーミングで火がつき、日本のみならず海外でも多くのプレイリストにピックアップされるなど、2021年非常に注目されたNenashi。年齢や性別、国籍など一切の素性を明かさずに活動していましたが、この「Scars」のMVをもって素顔を明らかにしました。MV公開と同時にNenashi自らの言葉で語られるメッセージがSNSに掲載され、origami PRODUCTIONSに所属するアーティスト、Hiro-a-keyのソロプロジェクトであるということが発表されました。「レッテルや先入観なしに純粋に音楽を聴いて欲しいという思いから、顔を出さずにスタートさせたこと」や、「自分もマスクを外しアジア人としてのR&B/ソウルを追求していく時が来たと思ったこと」などがコメントの中で言及されています。SpotifyではNenashiのM+Tポッドキャスト『Sound Travel with Nenashi』も公開されています。

UMI「Introspection Reimagined」


日本人の母とアメリカ人の父の元に生まれ、LAを拠点に活動している1999年生まれのシンガーソングライターUMI(うみ)。Spotifyでは「Remember Me」が1億回以上再生され、「Love Affair」や「Butterfly」などの楽曲も数千万回再生されている注目のアーティストです。昨年は2020年にリリースしたEP「Introspection」を「Reimagined(再想像した)」新作「Introspection Reimagined」をリリース。ディアンジェロやエリカ・バドゥ、ローリン・ヒルなどからインスパイアされており、国内外で注目を浴びています。

藤井 風「旅路」


2021年の日本の音楽シーンの顔の一人、藤井 風。8月には配信シングル「きらり」のストリーミング再生回数が1億回を突破、9月に日産スタジアムで行った無観客の無料配信ライブ『Fujii Kaze “Free” Live 2021』は最大約18万人が視聴しSNSの世界トレンド1位を獲得、他にも洋楽カバーアルバム『HELP EVER HURT COVER』や紅白歌合戦出演など、大きな話題となりました。『Tiger』には「旅路」がリストイン。ノスタルジックなブレイクビーツと藤井 風のピアノの柔らかい響き、アフリカの親指ピアノ「カリンバ」が心地いい曲です。プロデューサーはYaffle、藤井 風の出身地である岡山県の里庄町(さとしょうちょう)や母校・岡山城東高校で撮影されたMVは、バンドyahyelのメンバーでもある山田健人が監督をしています。 

文=竹内琢也