Dragon Ashが主宰する、盟友たちとの対バン・ツアー『UNITED FRONT』。2018年に立ち上げられ、2021年7月から3度目となるツアー『UNITED FRONT 2021』を開催。

熱い競演を繰り広げた前半戦を経て、11月末からはBiSH、ハルカミライ、サンボマスター、Nothing's Carved In Stone 、SUPER BEAVERらを迎えた後半戦『UNITED FRONT WINTER 2021』がスタート。同時配信も行われた12月28日(火)の東京公演にはCreepy Nutsが登場。Zepp Tokyoにて対バン・ツアーの最後を華々しく飾った。

この日最初に登場したのは、Creepy Nuts。雑踏のノイズが響くステージに1人現れた、DJ松永。ほどよい緊張感に包まれる中、DJルーティーンプレイがスタート。世界のバトルで勝ち抜いたその凄まじいスキルと鋭いビートに、前のめりで聴き入るオーディエンス。さらに背中越しに手を使ってターンテーブルを操作し、“見せるパフォーマンス”でフロアを釘付けにする。場内から大きな拍手が沸き起こる中、「Creepy Nutsです!楽しんでますか?」と、ラッパーのR-指定が登場。「板の上の魔物」を皮切りに、楽器のごとく声色を変えて叩き出されるラップと巧みなビートに、場内の誰もが手拍子を叩いて身体を揺らせているのが見える。
Creepy Nuts  写真:TAKAHIRO TAKINAMI

Creepy Nuts  写真:TAKAHIRO TAKINAMI

「なんせ今日は、誰に何と言われようと自分たちの道を進んできたDragon Ashとの対バン。しかもZepp Tokyoでライブをするのも今日が最後。いろんな大役を仰せつかってやってきました」「よふかしのうた」、「合法的トビ方ノススメ」で場内が一体化した後、R-指定が言う。DJ&ラッパーである自分たちと、バンドであるDragon Ash。果たして受け入れられるか不安もあったと語るR-指定。だが、DJ松永による「曲でもなく煽りもないターンテーブル・ルーティーン」に、ステージ袖で盛り上がるKjと、フロアで熱狂するDAファンの姿を見て奮起。「いよいよ壁はなくなるぞ、じゃないけど」と、Dragon Ashの名曲「Deep Impact」の一節を引用して言葉を続ける。

「大先輩に何で対抗するか? DJとラップの腕前……俺らの武器で対抗するしかないんですよね」と語ると、「顔役」を皮切りにキレキレのラップとビートを畳み掛けるR-指定とDJ松永。ウッドベースとスクラッチが絡み合う「かつて天才だった俺たちへ」が鳴り響くと、場内はもはやワンマンライブ級の盛り上がりだ。

「今日はお客さんに助けられてます。大先輩のDragon Ashと対バンなんて怖過ぎる……。ずっとフェスのヘッドライナーであり続けてるなんてどんだけ化け物か(笑)」とつぶやく松永の声を受け、「そんな先輩とハンデなく音楽で勝負する。ヒリヒリするけど光栄。シンプルに言うと……めちゃくちゃやりやすいです!」とR-指定。確かに、ヒップホップユニット/ロックバンドと、両者のフォーマットはまるで別物だ。けれど、これまであらゆるジャンルの音楽を飲み込みながら進化し続けてきたDragon Ashにとっては、ヒップホップもそのオルタナティヴなバンドサウンドに大きな影響を与えたアートフォームのひとつ。しかも、最強のスキルを誇るラッパーとDJが歌い鳴らす音楽とその柔軟な姿勢が、ハイブリッドな音楽を愛するDragon Ashのファンに刺さらないわけがない。

「ただただ俺のヤバいラップを聞いてください」というR-指定のMCで披露された最後の曲は、「生業」。DJ松永のビートに乗せ、聞き手を虜にする言葉と声色で、自ら切り開いた軌跡をラップで叩きつける。笑顔でステージを後にする2人に、場内から大きなリスペクトの拍手が沸き起こった。スタイルは違えど、道なき道を進み続ける生き様はCreepy NutsもDragon Ashも同じだ。

BOTSのターンテーブルから「Majestic」が鳴り響く中、ついにステージにDragon Ashが登場。敬意を込めて毎回対バン相手のバンドTを着るKj。もちろんこの日はCreepy NutsのTシャツ姿だ。最初の1曲は、混沌の中で一条の光を見出す「Stardust」。ドラムの櫻井が叩き出す力強いリズムから、今回の対バン・ツアーでの濃密な成果が怒涛のようにあふれ出す。いつにも増してエッジィなスクラッチで始まったのは、<DA流ライブ>の心意気を歌い鳴らす「Mix it Up」。マイク×ターンテーブルで魅せるヒップホップショー VS バンドで魅せるロックショー。ジャンルやフォームを超えた本気の競演の幕開けだ。
 写真:TAKAHIRO TAKINAMI

 写真:TAKAHIRO TAKINAMI

苦難の中でも前を向き続ける決意表明の1曲「Run to the Sun」→今回の対バン・ツアーで最強のライブチューンへ進化した「New Era」→「The Show Must Go On」と続く場面で、この夜の選曲に大きなテーマが隠されていることに気づく。これまでどんな状況でもライブを、音楽を続けることを諦めなかった彼ら。「The Show Must Go On」の途中、Kjが叫ぶ。「ライブをやらせてくれよ!」。もみくちゃになって音楽を分かち合えなくても、マスク姿で歓声をあげられなくても、それでもライブを愛する人たちと音楽を共有し続けることを諦めない。今回の対バンツアーの意義はきっとそこなのだと思う。

「板(ステージ)の上も下も来まくったよ、Zeppに。ライブハウスにはマジで死ぬほど世話になったから、音楽でしか返せないけど、今日一日をかけて返したい」というKjの言葉で披露されたのは、「ダイアログ」。紛れもなくそこに込められていたのは、年内で閉館するZepp Tokyoとすべてのライブハウスへの熱い思い、だ。そして、モッシュやダイブはもちろん、声を出すことも禁じられたコロナ禍のライブハウスで出来ることを、席ありスタイル必須の現状さえも利点にしたのが、「Jump」だった。「出来ることをやるんだ!」というKjの声と共に、静かな場面では着席する観客。そしてサビで一斉に場内全員でジャンプ!続けて披露された最強のライブアンセム「百合の咲く場所で」では、<ここで歌ってる>と、KjがZepp Tokyoの舞台を指差して歌う。

「どう?Creepy Nutsかっこいいでしょ?Creepy Nutsだけじゃなくて『UNITED FRONT』で全国回った音楽を本気でやってるヤツ、みんなカッコいいでしょ?」「いつかマスク取れる日が来たら、Zepp系列のハコにCreepy Nutsと来るわ!」今回の対バン・ツアーとライブハウスへの思いがこもったKjのMCの後は、サポートベースのT$UYO$HIとKjが向かい合いジャンプを決めた「A Hundred Emotions」。そして最後に披露されたのは、「Curtain Call」。<ライブハウスでまた会おうよ>と、ライブハウスへの思いが即興で綴られたフレーズの後、HIROKIのギターリフが激しくも美しく響く。
ロックバンド、アイドル、そしてヒップホップユニットと、ジャンルを超えた競演が繰り広げられた『UNITED FRONT 2021』。かつてDragon Ashは『Total Music Communication』という異種格闘技的なイベントを主宰し、ジャンルの壁を軽々と超えてきた。ライブシーンにはまだ多くの制限やルールが課せられているのが現状だ。しかし、本気で音楽を愛する者たちが共に手を取れば、あの自由な空間を取り戻すための壁も、きっとぶち破れると信じている。

ライブ終演後、2022年2月21日(月)、メジャーデビュー25周年の記念日に、25thAnniversary LIVEが開催されることが発表された。楽しみな1年になりそうだ。

Text 早川加奈子