中野京子による『怖い絵』は、名画の中に隠された陰謀や殺人、聖書や神話の血生臭い物語、歴史上のドラマといった背景を解説した美術書。ベストセラーを記憶し、2017年には東京と兵庫で『怖い絵展』が開催されるなど、一大ブームを巻き起こした。

舞台『怖い絵』は、投資家であり、絵画コレクターでもある男が復讐執行人として活躍する物語だ。主人公を演じるのは、歌舞伎やミュージカル、ドラマ、映画、バラエティと幅広いジャンルで活躍している尾上松也。さらに、NHK連続テレビ小説『どんど晴れ』のヒロインを務めて以来映画や舞台で活躍している比嘉愛未、『HiGH&LOW』シリーズなど人気作に出演している劇団EXILEの佐藤寛太、2.5次元を中心に様々な作品で存在感を見せている崎山つばさ、『相棒』シリーズをはじめとする人気ドラマや映画、舞台に数多く出演している実力派・寺脇康文という、そうそうたるキャストが集結した。

取材時点ではまだ台本が完成しておらず、本人たちも役柄や詳しいストーリーについて知らない状態ではあったが、崎山つばさと佐藤寛太(劇団EXILE)に意気込みを聞いた。

■分からないことだらけですがワクワクしています

ーーまずは出演が決まった時の気持ちを教えてください。

崎山:純粋にワクワクしました。この作品を舞台化したらどんな作品になるだろうということにも、共演者さんたちと一緒にモノづくりができることにも。

佐藤:「劇団EXILE」に所属しているものの、僕は舞台の経験があまりないんです。だから、2022年の初めの時期にストレートで舞台のお仕事をできることが楽しみです。

(左から)佐藤寛太、崎山つばさ

(左から)佐藤寛太、崎山つばさ

ーー尾上さんが絵画コレクターの復讐執行人を演じるとのことですが、お二人の役柄はどんな感じでしょうか。

崎山:僕は刑事で、(尾上演じる主人公がしていることを)全て知っている。その上で、この状況を楽しんでいるようなキャラクターです。あと、「フェミニンな空気をまとっている」と配役表に書いてあって(笑)。

佐藤:僕らはプロットを読ませてもらったんですけど、フェミニンな要素は感じなかったですよね(笑)。

崎山:ここにきて急に。ちょっと様子がおかしい人なのかなって。

佐藤:この舞台に出てくる人たちみんな様子がおかしいんですよね。僕も記憶喪失の絵描き志望というくらいしか分からなくて。先にプロットを読んで、掴みどころがないというか、目的があまり見えない役だなと思っていました。登場人物一人ひとりが裏の顔をもっている作品なんですよね。僕が演じる剣 緑(つりぎ みどり)が抱えている闇も後半で露呈するんですが、どう演じようか悩ましいです。

ーーどんな風に役作りをしようと考えていますか?

崎山:僕は刑事なので、今のプロットの段階だと一番お客さんに近い立場というか。刑事目線で話が進んでいくのかなと思っています。お客さんに寄り添いつつ、裏切るところも作りながら演じられたら。

佐藤:僕は尾上さん演じる絵田 光とずっと二人でいるキャラクターです。どう演じるかは……(鈴木)おさむさんがまだ脚本を書いていないので(笑)。よくこの状態でこんなにたくさんの取材受けましたよね(笑)。誤魔化せないし嘘つけないじゃないですか!

一同:(笑)。

佐藤:僕は舞台経験が本当に少なくて、どうやってお客さんの視線を集めたらいいかも、他の人がメインの時にどう佇んでいたらいいかも、まだちゃんと分かっていません。だから、役を演じるというより、舞台を作っていくこと自体が楽しみです。

(左から)佐藤寛太、崎山つばさ

(左から)佐藤寛太、崎山つばさ

■実は鈴木おさむさんの演出をしっかり受けるのはこれが初めて

ーーお二人は初共演だと思いますが、お互いの印象はいかがですか?

佐藤:今日初めてお会いしましたが、(劇団EXILEの)小野塚勇人に会った時に崎山さんはすっごいいい人ってうかがっていたので、その印象です。僕が共演するって言ったら、こっちから聞く前にそう言っていて。

崎山:コミュ力が高そうってのはすごく思いました。僕は人見知りはしないけど猫を被るので。そこを破ってくれそうな感じがします。

佐藤:(作品の資料を見て)うわ、1日2公演ありますよ!

崎山:舞台だとそうだね(笑)。

佐藤:東京だけで20公演で大阪公演もある……!

崎山:自由ですね。僕も自由なのでうまくやれそうです(笑)。

ーー作・演出の鈴木おさむさんとはこの作品についてお話しされましたか?

崎山・佐藤:まだしていないです。

崎山:以前、鈴木さんが脚本を手がけたWOWOWオリジナルドラマ×舞台プロジェクト『ワケあって火星に住みました〜エラバレシ4ニン〜』に出演しましたが、ドラマの時は監督がいたので演出を受けたことはなくて、舞台もコロナ禍で中止になってしまって。でも、その作品でこの人の頭の中はすごいな、変態だなと思いましたね(笑)。今回も、脚本や稽古はまだですが、自分の中でめちゃくちゃハードルが上がっています。その期待値を軽く超えてくるんだろうなとも思っています。

佐藤:僕は朗読劇『BOOK ACT』で演出を受けましたが、その時は稽古1日だったので。動き以外でどうこうしてっていう指示はあまりなくて。昨年、(今田耕司×鈴木おさむの演劇シリーズ)『てれびのおばけ』を観に行かせていただいて、本当に面白い作品を書かれる方だと思ったんですが、演出家としての鈴木おさむさんのことはあまり知らないので楽しみです。

(左から)佐藤寛太、崎山つばさ

(左から)佐藤寛太、崎山つばさ

ーーそうそうたるメンバーが揃っています。カンパニーへの期待や楽しみなことは。

崎山:コロナ禍で、飲みに行ったりはできないですからね。でも、5人だから話し合いもしやすいでしょうし、5人とおさむさんで密に作っていけると思います。

佐藤:僕は単純に稽古が好きなので、稽古期間が楽しみです。本番は25公演もあって大変だと思うんですけど(笑)。座組みと音響さん、照明さんなどのスタッフさんも揃って、みんなで一つのものを作っていくのが楽しいなと思うので。

■絵画についてはこれから勉強していく予定

ーー舞台上に厳選された「怖い絵」が登場するということですが、美術書『怖い絵』を読んだり絵を見たりしたことはありますか?

崎山:「怖い絵」はこれから読もうと思っています。

佐藤:よかったー! 僕まだなにもしてない(笑)。

崎山:ギリギリで見たい派で。その熱を持って舞台に挑みたいと思っています。こういった絵があることはもちろん知っていますが、その絵が持つ意味を考えたことはなかったので、この舞台をきっかけに「これは誰がどういう状況で描いたのかな」という思考になるのかなと思っています。

佐藤:メインビジュアルの絵(ポール・ドラローシュの『レディ・ジェーン・グレイの処刑』)も知らないですが、僕の役柄は絵のこといっぱいを説明しそうな感じなんです! 旅行先で、「美術館でなんかやってる。見よう」ってことはあるんですけど、普段は行かないから全然知らなくて。この機会に趣味が増えるといいなと思っています。


ーー家に絵を飾るとか、美術作品を買った経験というのは。

佐藤:絵は好きなので、本は買います。最近だと、名前を忘れてしまったんですが、いろんな本屋で平積みになっていた「たぶんこの世で僕しか、この風景を絵にしないと思う。」というパステルカラーの風景イラストの画集(おそらく坂口恭平の『Water』)を買ったりとか。漫画も好きなので、画集を買ったりしてます。

崎山:僕は美術館には行かないですね。絵も「この人の絵」というより、道端を歩いてていいなと思ったのを買います。あんまりこだわりはないです。

佐藤:家に絵を飾られてるんですか?

崎山:うん、飾ってある。でも、それがなんなのかは分からないです。

佐藤:調べないんですね。面白い。

崎山:わざわざ絵を買いに行ってるんじゃなくて、インスピレーションで選ぶみたいな感じです。

ーーこの作品では、キャスト皆さん含みを持っている感じですが、お二人が思う自分が持っている含みは。

崎山:自分が演じた役で、見た人だけが分かればいいなっていう部分を作ったりします。「こう見せたい」というより「こういう人だと思うからこういうことをするだろう」と考えてした表情や動きが、一人とか二人でもいいから見てる人の心に響けばいいなって。映像だと抜き取られちゃうのもあるので、そういうことをするのは舞台のときが多いですが、やりたいことは監督に相談しますね。自分が演じることの意味がそういうところに出てくるとも思うので。

佐藤:そんな深い回答出ないですよ(笑)。なんだろう、怒った時の「間」とか? 自分が怒られてる時も、相手の目や雰囲気に含まれるものから怒りを測ってますね(笑)。

ーー最後に改めて、この作品の見所を教えてください。

崎山:まずは中野京子さんの『怖い絵』を舞台化するというのが一つの見どころです。舞台上に5人しかいない中で繰り広げられる世界。「怖い」にもいろんな種類があるし、一人ひとり感じ方も違うと思うので、それがお客さんに伝染したらいいなと思います。鈴木さんの脚本なので一筋縄ではいかないでしょうから、お客さんと一緒に絵を観覧するような舞台になったらいいと思います。

佐藤:僕は美術や衣裳が楽しみですね。ポスターの撮影でも、すごく凝っているなと思ったし、仕上がりを見てもおしゃれな感じになりそうだなと。絵もたくさん出てきますし、この舞台が衣裳やキャストを含めた『怖い絵』という芸術を鑑賞できる空間になりそうだなと。出来上がりが楽しみです。

(左から)佐藤寛太、崎山つばさ

(左から)佐藤寛太、崎山つばさ

鈴木おさむから「次こそは一緒に舞台をやりたい」という要望があったという崎山と、朗読劇『BOOK ACT』を経て、鈴木が「一度彼とちゃんと芝居をやってみたい」と感じてキャスティングされたという佐藤。二人がこの作品でどんな活躍を見せてくれるのか期待が高まる。

本作は2022年3月4日(金)〜21日(月・祝)まで東京公演、3月24日(木)〜27日(日)まで大阪公演が行われる。

取材・文=吉田沙奈  撮影=中田智章