注目のピアニスト4人が一堂に会するライブ『NEO PIANO Far Beyond』(ねぴふぁび)が2022年4月24日(日)に、TACHIKAWA STAGE GARDEN(東京都立川市)で行われた。約2時間半で19曲を披露したステージのアンコールでは、ござ、菊池亮太、石井琢磨、Jacob Koller(ジェイコブ・コーラー)が《革命のエチュード》で共演。演奏中にピアノを入れ替わるなどして会場を沸かせた。ライブは5月4日(水・祝)23:59まで、イープラス「Streaming+」でアーカイブ配信されている。


真っ暗な舞台。落とされたスポットライトが真ん中に集結すると、スタインウェイのグランドピアノと、石井琢磨の姿が浮かび上がった。祈るように空を見つめた石井は一音一音を編み上げるように《アヴェ・ヴェルム・コルプス》を演奏。優しい音色を客席に響かせた。

トップバッターを務めた石井は「素晴らしいピアニスト4人で、一夜限りの“ねぴふぁび”をどうぞお楽しみください」と呼びかけ。続く《ウィーンの夜会》では、ウィーン在住の石井ならではの感性で、音符がワルツを踊っているような軽やかな演奏で魅了した。クラシックは敷居が高いと感じている人に、「クラシックはスッと心に入ってきて、寄り添ってくれる部分がある」という石井は、その思いを込めて《献呈》を演奏。柔らかい音色が聴き手の身体を包み込んでいた。



「連弾をしたいと思います」と話した石井は、菊池亮太を呼び込み。「速くて勢いがある曲をやりたい」という菊池の思いに応え、2人で1台のピアノに向かった《剣の舞》では鍵盤の上で互いの手をクロスさせるなどしてノリノリに。息ぴったりの演奏に、大きな拍手が送られていた。

「ウィーンの風を吹かせながら帰っていった」と石井を見送った菊池は、オリジナル曲の《パガニーニの主題による変奏曲》でステージをスタート。不協和音や《エリーゼのために》のフレーズを盛り込んだ独創的なアレンジで観客の心をグッとつかんでいた。

MCでは「僕がライブをする日は雨が降る確率が高い。すごい雨男なんです。でもその中でこの曲をやることにシンパシーを感じる。ショパンの繊細さとダイナミックさを感じてほしい」と《雨だれ》を演奏。雨を思わせる照明の中で、ノスタルジックな《雨だれ》を奏でた。



「世界は大変な状況」と口を開いたMCでは、2カ月以上続くロシアによるウクライナ侵攻について触れ、「僕はピアノを弾くことしかできない。祈りの思いを込めて弾きたい」とロシアの作曲家ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」を構成する曲のひとつ、《キエフの大門》を披露。鍵盤に思いをぶつけるような渾身の音色で圧倒した。

ラストには東京都庁の南展望室に設置されている「都庁おもいでピアノ」で出会ったというジェイコブ・コーラーを舞台に招き入れ。2台のピアノで会話するように、ディズニーの名曲《いつか王子様が》をジャズアレンジで披露した。演奏後は「すごく楽しかった」とグータッチした2人。笑顔で互いを称えていた。

2009年にアメリカ・アリゾナ州から来日して以降、日本を拠点に活動しているジェイコブは、「ジャズアレンジしたアニメメドレーをやります」とピアノに向かっていく。鍵盤に滑らせた十指が生んだのは、劇場版の最新作が公開中の『名探偵コナン』から《メインテーマ》と、『銀河鉄道999』から同名の主題歌《銀河鉄道999》。楽しい選曲で集まった人を喜ばせていた。



続いて演奏した《Jazz Piano Meguri》は、アップライトピアノを軽トラックに積み山形県内を8カ所ほど巡った際に、作ったというオリジナル曲。《いとしのエリー》ではジェイコブの合図に合わせて会場が手拍子を送り、聴衆とひとつになっていた。

達成感に満ちた表情で「みんなのワクワク感がエネルギーになった」と話したジェイコブは、ござを呼び込むと、「《クレオパトラの夢》で、こてこてジャズセッションをしたい」とお願い。快諾したござと2人で心地よいグルーブを生み、会場をスイングさせた。

ジェイコブからのバトンを受け取ったござは、「4人、4色の音色を聴けるライブ。最初の1音で思いました」と3人のライブを振り返り。「僕のタッチを楽しんでほしい」とデビューアルバム『EnVision』に収録した《花》で幕開けした。



春爛漫のステージの後は、繊細な音色が印象的な《ダニーボーイ》で酔わせた。一息ついたMCではござが「秘密にされていた方々、ご登場ください」と声かけ。舞台に8人のストリングス奏者と指揮者を招くと、「2曲やりたい」と意気込み、《小フーガ ト短調》で音を合わせていく。初挑戦とは思えない厳かな旋律で観客をくぎ付けにしていた。

ラストはオリジナル曲《清新の風》で共演。壮大な演奏を終えると「気持ちいい。幸せな瞬間」と感無量の表情を見せた。ござは「僕の4曲は終わりましたが、ゲストを呼び込みたい」と、盟友・菊池を呼び込み。カウントをして始めた《ユーモレスク》では、クラシックな要素も交えた息があったセッションで楽しませた。


アンコールでは1番手を務めた石井が「ただいま」と再登場。「聴いていてわくわくする演奏だった。でね、みんなで弾きたいと思って」と3人を呼び込んだ。ジェイコブは「幅広いジャンル、スタイルの4人が一緒に弾いたらどんなものになるか」と話すと、「弾いてみよう」と3人。下手のピアノに向かった石井が、意を決した表情で《革命のエチュード》の演奏をスタートすると、上手のピアノに3人が並び音を合わせていく。

ユニークなアイデアに石井は「聴いたこともない《革命》を演奏させていただきました。弾いていてみなさんの演奏も聞いて。弾いたことない《革命》になり興奮しています」と頬を高揚させた。「大変だったでしょう」とねぎらったござに、石井は「3人の圧を感じた」と本音を漏らしていた。

最後は「ジャズとクラシックの間にある曲をやろう」というござの提案で、《ラプソディ・イン・ブルー》を披露することに。ストリングスチームを再度招くと、石井や菊池が演奏するピアノをござが行き来しながら演奏するなど、トリッキーな時間も。4人それぞれの個性が光るステージで、会場を歓喜の渦で包み込んでいた。

『NEO PIANO Far Beyond』は、2022年5月4日(水・祝)23:59までイープラス「Streaming+」にて配信中(視聴券購入は同日21:00まで)。

取材・文=翡翠 撮影=中田智章