『日比谷ノンフィクション』
2022.5.15 日比谷野外音楽堂

Base Ball Bearにとって日比谷野外音楽堂で開催するライブイベントシリーズ『日比谷ノンフィクション』が、いかに特別なものであるか。ときに対バン形式をとることもありながら回を重ね、今年で9回目の開催となった『日比谷ノンフィクション』は、彼らがバンドとしてのマインドであり音楽的なモードの現在地を開放的に示す“リアルな祝祭”として存在してきた。付け加えると、このイベントはことごとく天気を味方につけきた。この日も時折、小雨がパラつくことはあったが、むしろ快適に感じられる気温だった。そして、今回はバンド結成20周年にして3年ぶりの開催。さらにはこの2年強は新型コロナウイルス感染症対策に則ってキャパシティを制限しながら主催公演を行ってきた彼らにとっては、実に久々の“満キャパ”仕様のライブであり、いつにも増して感慨深い『日比谷ノンフィクション』となった。

Base Ball Bear

Base Ball Bear

Base Ball Bear

Base Ball Bear

Base Ball Bear

Base Ball Bear

事実、小出祐介(Vo/G)はMCで「満キャパのお客さんを眼前にするのは久々。緊張してます。感慨に動揺してる(笑)」と語っていたが、1曲目「BREEEEZE GIRL」の時点では名状しがたい緊張感が演奏からもヒシヒシと伝わってきた。しかし、そこからメンバーは(あるいはオーディエンスもそうだったかもしれない)これまで育んできた「日比谷ノンフィクション」の感触を思い出し、スリーピースバンドとしてのBase Ball Bearが練り上げてきたアンサンブルの強度を確かめ満員の会場に威風堂々とそれを提示するようにしながらライブをグルーヴさせていった。序盤で特に印象的だったのは、小出のソリッドなギターワークを柱に濃厚なファンクネスを充満させた「文化祭の夜」から堀之内大介(Dr/Cho)の情感豊かなドラミングとメロウな旋律の中に関根史織(Ba/Cho)のベーシストとしての充実ぶりが際立っていた「(LIKE A)TRANSFER GIRL」、ドラマティックかつポップに開けていく「Transfer girl」と繋げていった流れだ。新旧織り交ぜた楽曲群の中で、スリーピース“なのに”ここまでやれるし、スリーピース“だからこそ”ここまでやるというBase Ball Bearのストリングスタイルなロックイズムが『日比谷ノンフィクション』だからこそ生々しく伝わってきた。

Base Ball Bear、花澤香菜

Base Ball Bear、花澤香菜

Base Ball Bear、Ryohu

Base Ball Bear、Ryohu

Base Ball Bear、valknee

Base Ball Bear、valknee

さらに『日比谷ノンフィクション』ならではの特別な祝祭感が色濃く形作られていったのが、本編終盤に訪れた客演セクションだった。意外にもライブではこれが初共演となった花澤香菜との「恋する感覚」はあまりに爽やかで、最新アルバム『DIARY KEY』において唯一の客演曲であるvalkneeとの「生活PRISM」は陽性のパーティー性もありながら日比谷の官庁街の光景もあいまって現在進行系のソーシャルイシューの陰影も離れがたく想像させ、関根がベースをチャップマンスティックに持ち替えたRyohuとの「歌ってるんだ Baby.」ではサイケデリックなサウンドスケープが現出し、そして、スケジュールの都合で駆けつけられなかった福岡晃子のインターネットの友だち=チャット友だちとして登場しオーディエンスを驚かせた橋本絵莉子とRyohuを迎えた「クチビル・ディテクティブ」は間違いなくライブにおける一回性の多幸感に満ちていた。音楽的にも、客演のメンツとしてもBase Ball Bearはずっと多様性に富んできたということを、十二分に体感できるセクションだった。

Base Ball Bear、橋本絵莉子、Ryohu

Base Ball Bear、橋本絵莉子、Ryohu

Base Ball Bear、橋本絵莉子

Base Ball Bear、橋本絵莉子

本編ラストを飾った「Tabibito in the dark」と「レモンスカッシュ感覚」の前に小出は10年ほど前までは自分の実力でバンドを引っ張っていたがそれが思い上がりだったということ、2人のメンバー、スタッフ、友人たち、こうして応援してくれているオーディエンスたちに支えられていることへの感謝を真摯に語った。

そして、アンコール前のMCで大々的に発表されたのが、2022年11月10日、結成記念日の前日、つまりは20周年イヤーのラストに10年ぶり3度目の日本武道館公演を開催するというニュースだった。言うまでもなく、会場はオーディエンスの歓喜の感情が乗った大きな拍手に包まれた。大ラスの「Perfect Blue」が残した余韻は、武道館へと続いていく。

Base Ball Bearの20周年、そのクライマックスが武道館で訪れる。それと同時に、きっと彼らはそこで21年目以降のロックバンド像と矜持も示すに違いない。

Base Ball Bear

Base Ball Bear

集合写真

集合写真

文=三宅正一 撮影=@vizkage