『ボストン美術館展 芸術×力(げいじゅつとちから)』が、2022年7月23日(土)から10月2日(日)まで、東京都美術館にて開催されている。本展は当初2020年4月の開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により延期になっていたもの。2年の歳月を経て、いよいよ開幕だ。
本展ではボストン美術館が所蔵するコレクションから、世界各国のさまざまな地域で生み出されたおよそ60点の作品が来日。コレクションには日本美術も多く、それらが “里帰り” することでも注目されている。オフィシャルサポーターを務めるのは俳優の要潤。アート関連のテレビ番組に出演するほか、自身も絵画をたしなむなどアートへの関心が高い要に、本展の魅力や美術館の楽しみかた、芸術との関わりを聞いた。

※本インタビューは開幕直前の7月某日に行われました。


待ちに待った開幕、国宝級の作品が来日

ーー2年越しの開幕が近づいてきました。本展への期待のほどはいかがでしょう?

コロナウイルスの感染が拡大する以前(2019年12月)に記者発表を行い、本展の開催を大々的に発表したのですが、残念ながらコロナウイルスの影響で延期になりまして。正直なところ、もしかしたらこのまま開催できないのかな……という思いもあったんですけど、ようやくこうして開幕することができ、本当に心からうれしく、楽しみにしています。

ーー本展はボストン美術館から古今東西の傑作、西洋美術をはじめ日本美術も多く来日します。楽しみにしている作品をお知らせください。

やはり、日本にあれば国宝級と言われている作品(《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》、《吉備大臣入唐絵巻》)は楽しみですね。あとは、ポスターなどにも使われている《孔雀図》も生で見てみたいです。

ーー音声ガイドは鈴村健一さんと櫻井孝宏さんの2名がそれぞれ「オモテ」と「ウラ」を担当されます。こういった構成の音声ガイドは他ではあまり聞きませんが、どのような構成になっているのでしょうか?

作品の解説と、その時代や作家のエピソードを「オモテ」と「ウラ」で聴くことができます。音声ガイドは作品を理解するための頼りになりますし、心地のよい環境をご提供できると思いますので、ぜひお使いいただきたいですね。

美術館でしか出会えないものがある

ーー美術館は敷居が高く、なかなか足を運ぶことができないという方もいらっしゃいます。要さんはアート関連のお仕事も多くなさっていますが、ご自身の考える「芸術の楽しみかた」とはなんでしょうか。

確かに美術館って独特な空間ではありますよね。それが敷居が高いと感じる理由の一つかもしれませんが、海外だと入館料が無料だったり、写真を撮影しても良かったりと、気軽に鑑賞できるところも多くあります。

美術館に展示されている作品って、日常生活の中で目にする機会はありませんよね。“美術館でしか出会えない” ことが魅力だと思うので、気楽に立ち寄ってみてほしいです。知っている作品が1点だけだったとしても、「この作品が好きだな」と思えるものが他にもあるかもしれない。最初は難しくても、それをじっくり見たり、解説を読んだりすることで、徐々に自分なりに理解していくと思うんです。芸術といっても本当に多種多様で、絵画だけではなく彫刻など色々ありますから、美術館にはそうした新しい出会いがあると思います。

ーーこれまで訪れた美術館のうち、思い出に残っている美術館はありますか。

パリに行ったときに、ルーヴル美術館からはじまり、大小さまざまな美術館に行きました。なかでもオランジュリー美術館は特に印象に残っています。モネの《睡蓮》を飾っている美術館なのですが、睡蓮のためだけに整備された一室があり、そこに入ったときはすごく衝撃的でした。なんというか……、“その世界観に包まれる” という体験したのはオランジュリー美術館が初めてでしたね。一室、目の届く範囲全てが睡蓮。ブルーの水面に、ピンクの睡蓮が浮かんでいる作品なんですけど、なんだかまるで睡蓮の池の前に立ったような感覚になりましたし、色彩や色づかい、モネが見ていたであろう視点など、その場所に立っただけでさまざまなものを感じることができました。筆跡とか、色がのっていない部分もはっきり見えて、写真じゃなくて絵なんだと改めて実感しました。

ーーモネがお好きなんですか?

大好きなアーティストの一人です。抽象画ももちろん好きですし、ダヴィンチなどの宗教画などもよく鑑賞します。


ーーでは、最近なにかアート体験はされましたか?

自分で絵を描いています。今、この年齢になって自分が感じることを大切にしてみようかなと思って。これまでは風景なんかも描いていたんですけど、やっぱりすごく難しくて……。出来上がったときにどうしても、もっとこうしたほうがいい、ああすればよかったと後悔することが多いんですよ(笑)。それも良かったんですけど、今は自分が考えていることとか、理想の場所を描いてみるようにしています。自分の心がどんな状況なのか、描いた絵で再確認するという感じですね。

ーーちなみにどのような絵を描いていらっしゃるのですか?

僕はフランスとかイタリアの風景が好きみたいです。特にパリの、通り沿いの角にカフェがあるような景色が。そんな風景をイメージして描いています。

ーー出来上がった作品を、どこかで拝見できることを楽しみにしています。

いえいえ、お見せできるほどでは……(苦笑)。

2022年、もし自分が権力者だったら……

ーーもし要さんが本展の権力者のように力を持ったとしたら、どんな作品を制作したいですか?

一番はやっぱり肖像画を描くのでしょうね(笑)。一方で僕は、世界の移り変わりみたいなものも非常に大切だなと思っていて。例えば屏風(《寛政内裏遷幸図屏風》)の行列から、その時代はどんな状況であったのか、当時の様子を学ぶことができます。もし自分が今、権力者だったとしたら、2022年の日本がどういう状況だったのか残せるものを作りたい。未来永劫語り継がれるであろうものを描いてもらいたいですね。


ーー本展のチラシにある「2年、待ったゼ」というフレーズが印象的です。それにちなんで、要さんが「何年待ってもいい」と思えるものはなんでしょうか。

洋服ですかね。自分の好きなデザイナーさんに製作をお願いすることもあるのですが、それを待つのは割といつまでも平気です。何年待ってもいいと思えるくらい。手作りで仕上げられているもの、オンリーワンのものは結構待てますね。

ーー実際にどれくらい待ったことがありますか?

1年ぐらいかな。それが手元に届いて袖を通したときはすごく感激しました。待てば待つほど、その洋服の価値が自分の中で上がっていくような感覚になって……。やっと出会えた! という感動がありました。

ーー最後に、本展を楽しみにしている読者にメッセージをお願いします。

ボストン美術館は、ボストン市民の有志によって作り上げられた歴史ある美術館です。その美術館が誇るコレクションが日本に来るということで、僕もすごく楽しみにしていますし、本展では “日本国内にあれば国宝級” と言われる素晴らしい作品も来日します。展覧会のタイトルどおり「力」を感じられる場所になっていると思いますので、ぜひ足を運んでいただきたいです。

要潤がオフィシャルサポーターを務める『ボストン美術館展 芸術×力』は、2022年10月2日(日)まで、東京都美術館にて開催中。チケットは日時指定予約制のため、事前予約を忘れずに。

取材・文=SPICE編集部 撮影=大橋祐希