9月17日(土)から、京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」で『アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO』がスタートした。本展はアメリカ・ピッツバーグにあるアンディ・ウォーホル美術館の所蔵作品のみで構成される、日本初の展覧会。絵画や彫刻など約200点および映像15点のうち、100点以上が日本初公開作品となる。本展覧会は、もともと2020年の京都市京セラ美術館リニューアルオープンを記念した目玉事業として構想されてきたが、新型コロナウイルスの影響によりやむなく延期に。主催者各社の尽力でようやく実現の運びとなった。9月16日(金)には、一般公開に先駆けて開会式とメディアセッション、プレス内覧会が行われた。今回の記事では、開会式とメディアセッションの模様をレポートする。

注目度の高さを示した開会式とメディアセッション

ポップ・アートの旗手として、アメリカの大量消費社会の光と影を描いたアンディ・ウォーホル。「キャンベル・スープ」「コカ・コーラ」などの商品や「マリリン・モンロー」といった有名人をモチーフにした様々な作品を発表し、アート・音楽・ファッション・マスメディアなど幅広い分野に影響を与えたことは、広く世に知られているだろう。しかし、彼が生前に2度京都を訪れていることは、あまり知られていないのではないだろうか。京都への旅行が彼の作品や人生観に大きく影響を与えたという点で、今回の展覧会が京都で開催されることは非常に意義深い。注目度も相まって、開会式には多くのメディア関係者が集まっていた。

朝9時半。MBSアナウンサー・高井美紀が司会をつとめる中、東山キューブロビーで開会式が行われた。開会式には京都市長の門川大作氏、アンディ・ウォーホル美術館館長のパトリック・ムーア氏、ソニー・ミュージックエンタテインメント取締役執行役員の渡辺和則氏が登壇。そして展覧会オーディオガイドのナレーターをつとめた乃木坂46の齋藤飛鳥、主催者各社の代表者らが出席した。

アンディ・ウォーホルが人間としてアーティストとして成長する上で、京都は重要な場所

京都市長 門川大作氏

京都市長 門川大作氏

まずは京都市長の門川大作氏が挨拶。「待ちに待ったアンディ・ウォーホル」としみじみした様子で話し始めた。アンディ・ウォーホルが1956年と1974年に京都を訪れたことに触れ、「京都の風景や人物を清書されたり、生け花を楽しまれたり。彼の作品を見る時に京都で大事にしていた美意識を感じるのは、そのことが影響かなと感じさせていただきました。巡回展ではございませんので、日本中のファンの方が京都に来ていただいてご覧いただくことを願っております」と、京都で開催する意味合いを滲ませつつ、多くの来場を願った。

さらに「文化庁がいよいよ機能強化して、来年3月に京都に全面的に移転します。京都市はこの事業を文化庁移転記念事業と位置づけております。文化によって日本中を元気にする。より世界から尊敬される日本にしていこうという、政府のご英断でございます。文化庁の移転も含めて文化が果たす役割。まるで文化やアートが不要不急の象徴のような扱いになっておりますが、決してそうではない。人間が人間らしく、人をつなぎ生きていくために、アートの果たす役割と偉大さを改めて実感しております」と真剣な表情で語った。

ソニー・ミュージックエンタテインメント取締役執行役員 渡辺和則氏

ソニー・ミュージックエンタテインメント取締役執行役員 渡辺和則氏

主催者からは、ソニー・ミュージックエンタテインメント取締役執行役員・渡辺和則氏が挨拶。本展が無事に開催できたことへの感謝と、ソニー・ミュージックが音楽からアニメやゲーム、そしてアートへと、様々な縁をきっかけにビジネスの幅を広げてきたと述べ、「今回の展覧会には出ておりませんが、アンディ・ウォーホルというとやはりザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)やジョン・レノンのレコードジャケット。実は弊社のラッツ&スターというグループが、1980年代にアンディ・ウォーホルにお願いしてジャケットを作っていただいたご縁があります。ソニー・ミュージックが本展に関わらせていただくことは、そういう意味でも非常にご縁がある話だと嬉しく思っております。来年2月までの長い期間にはなりますが、“京都とウォーホル” というキーワードで盛り上がっていくよう、弊社もできることにトライしていこうと考えております」と意気込みを述べた。

アンディ・ウォーホル美術館 館長 パトリック・ムーア氏

アンディ・ウォーホル美術館 館長 パトリック・ムーア氏

淡いパステルピンクのスラックスがよく似合っていたアンディ・ウォーホル美術館館長のパトリック・ムーア氏は「この展覧会はアンディ・ウォーホル美術館のコレクションから、京都のお客様のために特別にキュレーションした内容となっております。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により展覧会は延期されましたが、アンディ・ウォーホルが人間として、そしてアーティストとして成長する上で、日本、とりわけ京都は重要な場所であるため、主催者がこの展覧会にこだわり続けてくれたことを心より感謝申し上げます」と話した。

アンディ・ウォーホルの京都旅行は、1950年代の初回は世界旅行の一環として、1970年代の2度目はセレブリティになった後、日本での展覧会の合間に立ち寄った。「忘れてならないのは1956年に京都を訪れた時は若干28歳だったということです。ニューヨークで数年間仕事をしていたとはいえ、この旅は彼にとって全く新しい文化に触れる始めての機会だった。彼自身、ピッツバーグからニューヨークに出て、イラストレーターとして成功を収め、自分としても世界中を回ってこんなに美しい異国文化に触れるところまで僕は来たんだ、という気持ちに強くなったと思います。特に京都の寺院の美しさに彼が目を見張ったのは容易に想像がつきます。ピッツバーグの東方カトリック教会で育った自身の宗教的環境とは全く異なる一方、金箔の使い方や凝った内装にはどこか親しみを覚えたのではないでしょうか。実際に金箔などを使用するようになった直接的な影響も見られます。また、生け花の気品溢れる芸術も彼の目に留まり、町の生け花シリーズのドローイングにつながります。京都には独特の静寂があり、アンディ・ウォーホルの映画作品『エンパイア』にも通じるものがあると私は考えております」と解説。

アンディ・ウォーホル美術館 館長 パトリック・ムーア氏

アンディ・ウォーホル美術館 館長 パトリック・ムーア氏

さらに「私にとって京都がウォーホルに与えた最も直接的で美しい影響は、舞妓さんを描いた初期のドローイングにあるのではないかと思います。私も初めて京都を訪れた際、置屋から舞妓さんたちが出てくるのを何人もの人たちがじっと見守っているのを見て心を奪われたものです。伝統の習慣が現在の京都にもしっかり生き続け、日本人ならではの威厳と優雅さを守っているということを理解しました」と自身の体験を含めて話した。

展示内容については「アンディ・ウォーホル美術館以外ではほとんど見ることのできない《三つのマリリン》をはじめとする、最も有名な作品の数々をご覧いただくことができます。同時に主催者の方々が、若い人たちにウォーホルを理解してもらうためのワークショップや、ソニーグループ株式会社様にご協力いただいた《銀の雲》のインスタレーションで、この展覧会を独自のものにしてくださったことを大変ありがたく感じております。これは京都市にふさわしい、他のどこでも見ることのできないウォーホル展です」と述べ、最後に「私にとっては他国や異文化の人々と出会うだけでなく、友情を育むことも仕事の大きな楽しみのひとつです。今回のプロジェクトも例に漏れず、本当に長い間、対面できる日を待ち望んだ友人たちと共にこの場にいることを大変嬉しく思います。この展覧会を日本の皆様に見ていただけることを心より楽しみにしております」と力強く語り、挨拶を結んだ。

開会式のテープカットの様子

開会式のテープカットの様子

そして、乃木坂46の齋藤飛鳥を加えた4名によるテープカットが行われた。コロナ禍で、この日を迎えるまでに紆余曲折があったであろう主催者の面々は、喜びと安堵の表情を浮かべるように笑顔を見せていた。こうして『アンディ・ウォーホル・キョウト』は、満を持して開幕した。

いよいよ『アンディ・ウォーホル・キョウト』が開幕

いよいよ『アンディ・ウォーホル・キョウト』が開幕

有名なアンディ・ウォーホルと知られざるアンディ・ウォーホルの両方を見ることができる

続いて行われたメディアセッションでは、アンディ・ウォーホル美術館館長のパトリック・ムーア氏、本展キュレーターをつとめたアンディ・ウォーホル美術館のホセ・カルロス・ディアズ氏、音声ガイドのナレーターを担当した乃木坂46の齋藤飛鳥が、記者からの質疑応答に回答した。

アンディ・ウォーホル美術館所蔵の50万点の中から出展作品を選りすぐった本展。全てを把握しているものの、所蔵物の中にはじっくり探したことがない作品や資料もあったという。今回の展覧会で新しい知見はあるかと聞かれたパトリック・ムーア館長は、「アンディ・ウォーホルが約60年前に世界旅行に行き、京都に訪れて制作した作品があったことを今回知り、これを伝えたいと新しくアーカイブからピックアップしたものがいくつもありました。それは京都や日本旅行の日程表、京都の旅の記念に取っておいたもの。同時に日本の文化・京都の文化がアメリカに影響を与えた観点でもありました。それほど彼は日本が好きだった」と、今回の展覧会に際して新たな視点でキュレーションが行われたことを話した。

キュレーターとして力を入れた部分を聞かれたホセ・カルロス・ディアズ氏は「誰もが知っている非常に有名な “ウォーホルといえばこれ” という作品と、彼のプライベートの側面も含めた “知らなかったウォーホル” に着目していただきたいと思います。特に彼が世界的に有名になる前に訪れた1950年代の京都の旅は、知られざるアンディ・ウォーホルの側面です。他には絵画だけでなく、プリント技術やフィルム。1966年に作られた《銀の雲》というインスタレーション作品も再現しました。そして《三つのマリリン》が展示されることは非常に珍しい。セレブとしてのマリリンと、彼女が持つ儚さも表現された作品として見ていただきたいと思います。さらにもうひとつの目玉である《最後の晩餐》はミラノで一度展示されて以降、初めての展示になります」と貴重な作品が揃っていることを解説した。

展覧会オーディオガイドナレーターをつとめた齋藤飛鳥(乃木坂46)

展覧会オーディオガイドナレーターをつとめた齋藤飛鳥(乃木坂46)

音声ガイドをつとめた齋藤飛鳥は、以前からアンディ・ウォーホルの名前は知っていたという。「音楽が好きだったので、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのバナナのジャケットだとか、有名な作品はいくつか知っていたんですけれども、彼がどういう人生を送って、どういう功績を残した人なのかという詳しい部分は全く知りませんでした。私が今回やらせていただくのが、声で作品についてご案内する役目だったので、音声ガイドを録る直前にスタッフの方にアンディ・ウォーホルの歴史を直接全て教えていただきました。そこで発見があったり、面白いお話を沢山聞けたので、新鮮な気持ちのまま収録できたのかなと思います」と、音声ガイド収録について振り返った。

実際に展示を見た感想については「飾りたい作品がめちゃめちゃありました。ママとグッズも沢山買ってしまって(笑)。お二人(ムーア館長とホセ氏)にずっとついていただいて、「この作品はこうなんだよ」と説明していただきながら観られたので、おかげですごく楽しくて。音声ガイドを聴いて作品を観てみようと思ってくれた人にも、説明してもらいながら回る楽しさを感じていただけたら嬉しいです」と語った。

また、京都の印象について「私は東京に住んでいますけど、京都は東京とは別の魅力があると思いますし、アンディ・ウォーホルが実際に描いたスケッチなどを観て、こんなに素敵だったんだと改めて理解が深まったような気がします。京都がウォーホルの心にも響くような街だというのは、日本人としてはすごく誇らしいと思います」と述べた。

『アンディ・ウォーホル・キョウト』は2023年2月12日(日) まで、京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」にて開催中。なお巡回は行われない。京都だからできた展示内容であるし、「アンディ・ウォーホルと京都」をより濃く感じることのできる展覧会となっている。SPICEでは、プレス内覧会の模様もたっぷりお届けするので、ぜひ楽しみにしてほしい。

文・撮影=ERI KUBOTA