日本武道館単独禊『慈愚挫愚』
2022.11.15 日本武道館

2016年1月に本格的な活動をスタートさせると同時に、優れた音楽性とミステリアスなキャラクターを持った個性的な存在として注目を集めてきた-真天地開闢集団-ジグザグ。着実にスケールアップを果たしていった彼らは2019年にベーシストが脱退するというアクシデントに見舞われるが、ギタリストの龍矢 -ryuya-がベースに転向することで危機を乗り越え、以降より多くのリスナーを虜にしてきた。そんな-真天地開闢集団-ジグザグが、彼らにとって初となる日本武道館での禊(ライブ)を11月15日に行なった。


『日本武道館単独禊「慈愚挫愚」』と銘打たれた同公演のチケットは全券種がソールドアウトとなり、当日は立ち見客が出るほどの盛況ぶり。会場に駆けつけたオーディエンスのタイプは様々で、ヴィジュアル系のフィールドで始動したバンドでいながら現在の彼らはヴィジュアル系フリークに留まることなく、幅広い層のリスナーから熱い支持を得ていることは間違いないようだ。そして、今回の公演は“背伸びした武道館”などではなく、-真天地開闢集団-ジグザグが日本武道館で禊を行なえるレベルのバンドになったことを実感させる中でのライブとなった。

日本武道館の場内が暗転して和が香るオープニングSEが流れ、ステージ前面に降ろされた薄い紗幕にいくつもの暗示的な映像が映し出された。スッと惹き込まれて見つめていると命 -mikoto-が奏でるギターリフが鳴り響き、禊は「タガタメ」からスタート。神社を思わせる巨大なステージセットと紗幕に浮かび上がる歌詞、そして“ピン!”と糸が張ったような轟音などがひとつになった空間は非日常感に溢れていて、広大な日本武道館の場内は一気に-真天地開闢集団-ジグザグの世界へと化した。

-真天地開闢集団-ジグザグ/命 -mikoto-

-真天地開闢集団-ジグザグ/命 -mikoto-

「タガタメ」が終わると紗幕が落ち、爽やかな味わいの「Promise」や激しさとキャッチーさを融合させた「メイドカフェに行きたくて」、エモーショナルに疾走する「コノハ」が続けて演奏された。ステージ中央に立って圧倒的な存在感を放ちながら表情豊かなボーカルを聴かせ、テクニカルなギターソロを余裕で決める命 -mikoto-。客席を見渡しながらファットにドライブする重厚なベースサウンドを紡いでいく龍矢 -ryuya-。タイトさと手数の多さを兼ね備えたハイレベルなドラミングをパワフルに叩ききる影丸 -kagemaru-。落ち着いた表情で心地いいサウンドを聴かせるメンバーたちの姿からは彼らが極度の緊張に襲われたり、逆に舞い上がったりすることもなく、非常にいい状態で武道館のステージに立ったことが伝わってきた。

「コノハ」を聴かせた後、命 -mikoto-が「愚かなる者どもよ、よくぞやって来たな。武道館禊へ、ようこそ!」と挨拶。「いやぁ、広いねぇ(笑)。“ワァーッ”いうてね。後ろの方も楽しんでもらえるように、私がもう全力でそちらまで愛をぶん投げますので。楽しんでいただけるようにがんばりますので、本日よろしくお願いします!」(命 -mikoto-)

「正直、昨日まで……というか、今日の朝まであまり実感がなかったというか、どこか他人事みたいなところがあって、やっと今実感が湧いて、急激に緊張してきました(笑)。今日はちょっと珍しいくらいに本番前、緊張感がなかったんですよ。でも、やっぱり違いますね。なので、もしももう1度武道館でやることができれば、死ぬほど緊張するやろうなと思います(笑)。今日は本当に皆さん来ていただいて、ありがとうございます!」(龍矢 -ryuya-)

「ヘイヘイヘイ! 武道館! もう本当にね、こんな景色を見れるとは思わなんだ! イェーイ! ありがとうございます! 今まで、こんなに見上げて演奏することはなかったじゃないですか。見上げ過ぎていて、「コノハ」のサビの頭でシンバルが“スカッ”てなりました(笑)。それくらい、僕は今日、高まってまーす! 皆さん、最後まで盛り上がっていきましょう!」(影丸 -kagemaru-)

-真天地開闢集団-ジグザグ/龍矢 -ryuya-

-真天地開闢集団-ジグザグ/龍矢 -ryuya-

明るいMCで場内を和ませた後は、知的な雰囲気のイントロ/インターセクションと伸びやかなメロディーのサビパートを融合させた「僕ノ旋律」や切迫感を放つ「嘘つき」、せつなさを湛えた「五月ノ雪」などが届けられた。-真天地開闢集団-ジグザグの楽曲は転調や変拍子、大胆な場面転換などを用いたものが多いが、トリッキーに感じさせないどころか純粋に良い曲に仕上げているのはさすがの一言。彼らの音楽的なセンスの良さは群を抜いているし、演奏力の高さもポイントといえる。緻密な構成の楽曲をガチャガチャさせることなくクリアに聴かせると共に、それぞれの楽曲のエモーションをしっかり表現するスキルの高さがライブを通して光っていた。

「いろいろ紆余曲折ありながら歩んで来ましたが、3年前かな、ずっと共に歩んできた仲間が“もう、やめなアカン”と言って。その人はすごく人気があったので、“ガーン!”と人気が落ちまして。もう自他ともに認めるオワコンと化したんですよ。これはもう終わったな、もうやめようかなとも思いました。でも、やめても何もないし、音楽やるしかないな。もう売れんでもいいから、地道に作り続けようと思ったんです。止まない雨はないと言うんでね、いつか眩しい……まさに、今日のこんな景色を思い描きながらね……」。

話ながら思いがこみ上げて涙をこぼした命 -mikoto-に向けて、客席から温かみに満ちた拍手が湧き起こる。クールだったり、シニカルだったりする印象の命 -mikoto-のピュアな側面を見ることできたという意味で、このシーンはその場にいた誰しもの心に深く焼きついたに違いない。

-真天地開闢集団-ジグザグ/影丸 -kagemaru-

-真天地開闢集団-ジグザグ/影丸 -kagemaru-

ライブ中盤では和テイストと心に響くサビを活かした「其れでも花よ、咲け。」やハイエナジー&エモーショナルな「Requiem」、ヘヴィな歌中とアブナい雰囲気のサビのコントラストが光る「顔が好き」、命 -mikoto-の激情的なボーカルをフィーチャーしたシリアスなスローチューンの「忘却の彼方」などを披露。メリハリを効かせた構成や現代の音楽にふさわしいスピード感などを備えた多彩な楽曲を相次いで聴かせる彼らのライブは、心地よさに満ちている。テンポの良さと凝縮感を兼ね備え、今のリスナーが求めているものと見事に一致していて、この辺りからは-真天地開闢集団-ジグザグが時代感を読み取れる力も持っていることがわかる。彼らの禊は中だるみしたり、観飽きてくることは全くなく、場内が終始いいムードに包まれていることが印象的だった。


多数のダンサーを交えて華やかに演奏された新曲の「スマイル★かわいいねん」を皮切りに、禊後半では狂騒的なハードチューンの「愛シ貴女狂怪性」や突き抜けるような力を放つ「燦然世界」、気持ちを駆り立てられる「復讐は正義」などが怒涛の勢いで演奏された。広いステージの全体を使ったスケールの大きいパフォーマンスを展開しながら爽快感に溢れたサウンドを鳴り響かせるメンバーたちと、そんな彼らに応えてヘッドバンギングや折り畳み、拳振りといった激しいリアクションを見せるオーディエンス。双方が放出するエネルギーが溶け合って、場内のボルテージはどんどん高まっていった。


バラードの「傷と嘘」でオーディエンスが手にしたスマホの光が場内を埋め尽くすという感動的なシーンを作り上げた後、命 -mikoto-の「最後はやっぱりこれでしょう。かわいくなりましょう!」という声と共にラストソングとして「きちゅねのよめいり」をプレイ。キュートかつアッパーなナンバーにオーディエンスは一体感に溢れた華やかな盛り上がりを見せ、-真天地開闢集団-ジグザグは日本武道館の場内を完全にひとつに纏め上げて禊を締め括った。


初の日本武道館での禊を、大成功で終わらせた-真天地開闢集団-ジグザグ。オーディエンスの様々な感情を喚起させる彼らのライブは唯一無二の魅力に溢れていて、何度でも体感したくなる強い“病みつき感”がある。禊の内容が非常に良かったことに加えて、日本武道館の広大さを全く感じさせなかったこともあり、今後の-真天地開闢集団-ジグザグはさらなるスケールアップを果たしていくに違いない。2023年の活動計画も発表され、今後の彼らにも大いに注目していきたいと思う。

取材・文=村上孝之 撮影=YU KUBO