太鼓を中心とした伝統的な音楽芸能に無限の可能性を見いだし、現代への再創造を試みる集団、太鼓芸能集団鼓童。2022年11月23日(水・祝)佐渡市・アミューズメント佐渡 大ホールにて開幕した、『鼓童ワン・アース・ツアー2022〜ミチカケ』の初日開幕コメント&舞台写真が到着、そして新衣裳が公開された。

本公演は、全編新曲で構成された新作舞台。近年の鼓童全体の表現を総合的に手掛ける鼓童代表の船橋裕一郎と、舞台の要となる楽曲を次々と生み出している注目演奏者の住吉佑太が連携し作り上げる、革新的な意欲作だ。夜明けから深夜まで変わり続ける自然界のリズム「日の出日の入り」「潮の満ち引き」「月の満ち欠け」。その長い周期感や、「数」に秘められた律動を太鼓音楽で探求する新作を、全国主要都市にておくる。

  撮影:岡本隆史

  撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

今回、本ツアーから衣裳がリニューアル。新衣裳は、いのうえ歌舞伎『狐清明九尾狩』やシネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT阿弖流為(アテルイ)』などの演劇、コンテンポラリーダンス、舞踏、オペラ等の美術・衣裳デザイン製作を広く手がける、舞台衣裳家・堂本教子が手掛けている。

演出・鼓童代表/船橋裕一郎 コメント

演出・鼓童代表/船橋裕一郎   撮影:岡本隆史

演出・鼓童代表/船橋裕一郎   撮影:岡本隆史

今回は重層的で複雑な、音の情報量がかなり多い舞台になると予想していました。見る人の受け取る量を100だとすると、音の情報がすごい分、それ以外のものはシンプルにすることで作品がよりよく伝わるんじゃないかなと、演出はまっさらな状態から削ぐイメージではじめました。舞台では、陰影や光と影、表と裏、そういう表現を取り入れながら、住吉の音楽や世界観、衣装や照明の自発性を活かすための調整をしています。結果、自分の予想を超える仕上がりとなりました。それぞれの楽曲は全然違うのに、ひとつになっているところが今の鼓童っぽくて面白い。太鼓の個性を広げる一途となる、楽しめる舞台ができたので、お客さまに見ていただくのがとても楽しみです。

音楽監督/住吉佑太 コメント

音楽監督/住吉佑太    撮影:岡本隆史

音楽監督/住吉佑太    撮影:岡本隆史

太鼓の持つ音楽性や可能性を全世界の人に伝えたい。その思いから、太鼓を本格的に昇華させたひとつの舞台作品を作りました。今回は、あえて日本のシンボリックな意味合いを排除し、郷土性や土着性も手放して表現しています。郷土芸能からは人の営みが見えてくると思うのですが、そこを通り越すとどうなるのか。幾何学的、数学的、空間的な太鼓からは、自然や、宇宙そのものの響きを感じるのではないかと考えました。そして、そこに人の魂がのっていくと、印象や音の伝わり方がまた全然違うものになる。今回は普段と違う入り口から入り、いつも通らない道を通って、でも最後はやっぱり本能に訴えかける。この「ミチカケ」にふんだんに盛り込まれている、太鼓というジャンルにとらわれない誰もやってない音楽と、鼓童の魂。その両方を楽しんでもらえるといいなと思っています。

衣裳/堂本教子 コメント

衣裳/堂本教子

衣裳/堂本教子

「ミチカケ」のコンセプトを伝えていただき、ぱっと頭に浮かんだのが「ほつと月がある東京に来てゐる」という、種田山頭火の句です。そこからずっと、雲の間(はざま)から見える月の満ち欠け、抽象的な物を想像しながらデザインを進めていきました。佐渡の海や空、宇宙を連想する深い紺色を表地に、裏地の銀は夜空に光る銀色帯びた月と佐渡の風で舞うイメージを込めてます。ダイナミックな動きができる機能性を持った衣裳にするために、デザインとの塩梅を考えながら創ってきました。和の要素を参考にした「片肌脱ぎ」や、「諸肌脱ぎ」が可能で、フードをかぶると表情を消し影の役割も担える、月の満ち欠けの様に多様な見せ方のできる衣裳となっています。

堂本教子 デザイン画

堂本教子 デザイン画

公演レポート

80分があっという間に終わる、太鼓で切り開いた新世界

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

鼓童『ミチカケ』11/23(水・祝)佐渡初演レポ―ト

鼓童の全新作、新衣装でつくられた舞台『ミチカケ』。立体音響作品という全く未知な舞台は、「知らないのに、なんか知ってる」と錯覚を覚えるような不思議な場面がいくつもありました。

初演となる佐渡公演当日、ホールのロビーは開場前にすでにたくさんの人でいっぱい。熱気と期待に溢れていました。入場口の列は長く伸び、開場後は席がどんどん埋まっていきます。

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

幕が上がると、音の流れの中でイメージが浮かんできます。雨や風、灰色の重たい雲の動く音。舞台上で、時に頭の中で、様々なめくるめく景色の展開。日常から切り離された圧倒的世界観への招待に、会場全体が緊張感で包まれました。
曲がすすんでいくと、圧巻の太鼓パフォーマンスに曲中も拍手が贈られ、そのリズムや動きに観客は釘付けに。そんな展開に、演奏者のギアがさらにあがるのを肌で感じるのも興味深かったです。

きいたことのない音や、衣装で表現される陰影と肉体美、リズムを飛び越えた周期感という表現。鼓童の新しい姿や表現、世界観は、まるで木から伸びた枝葉のように自由に広がっていきます。同時に、まがうことなき鼓童の濃いDNAが根本にあることを思い知らされる舞台でもありました。

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

太鼓からこの音がするの?という発見や、太鼓演奏のイメージしかない演奏者も参加する笛の重奏は圧巻かつ新鮮です。吊るされたドラはやわらかで遠くまで広がる音を響かせ、時として太陽や月のメタファーとして想像をかきたてます。照明の効果で手が浮かんで見え、衣装のフードが表情を隠して不気味さと得体の知れなさを加速させる。コミカルな曲では、演奏者が音に操られているように動き、つい口元が緩んでいました。

コンセプトに統一感があることで、どんどん新しい鼓童の世界に引き込まれ、80分があっという間に過ぎ去りました。最初、まばらだった拍手が、会場全体で大きくなるのと同時に、演奏者と観客の気持ちが一緒に高まっていきます。

音が星の様にゆっくりと流れ、風の様に回転し、強い渦になってぱっと消え、時に跳ね、楽しそうに遊び、羽ばたいていく。最後は、太鼓も音も、まるで生き物のように大声で吠え、まるで掴みかかってくるようでした。私にも、見えないはずの音が見える。なるほど、これが音の立体作品かと、舞台の後も興奮が冷めません。

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

コロナ禍ということもあり、ずっと画面の中の鼓童を追う日々でした。でも、全身で受ける太鼓の音の波、汗の見える距離で演奏者のだすヒリヒリした一打を目の当たりにし、一緒に見ている観客と胸いっぱいの同じ気持ちでする拍手は、やはり舞台の醍醐味です。

面白かったのは、鼓童が、観客の曲の「ここがピークかな」という期待をゆうに越えてくる熱量と超絶技巧を連発していたこと。観る者の「まだいくの!?」という感動と心の高まりが伝わっているのを、閉幕挨拶での演奏者たちの笑顔で確信しました。

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

 撮影:岡本隆史

まっさらな気持ちでも、鼓童の古参のファンでも、大満足できる舞台『ミチカケ』。難しいことは考えず「太鼓、すごい!」を分かち合うために、是非足を運んでみてください。

文=坂本実紀

本公演は、新潟、宮城、広島、京都、愛知、香川、東京、埼玉、千葉など、国内各地で開催される。