今年結成10周年を迎えた最強のライブバンド、The BONEZ。彼らは喪失の中で生まれ、何度も壁にぶち当たりながらエモーショナルな音を鳴らし続けてきたバンドだ。ベースのT$UYO$HIとドラマーのZAXが所属するバンド、Pay money To my Painのボーカル、Kを失うという絶望の中、P.T.P.の光を灯し続けるという志の元、2013年に彼らはThe BONEZとしての一歩を踏み出した。だが、JESSEの逮捕、NAKAの脱退、そして世界中を覆い尽くしたコロナ禍。多くの課題に立ち向かう中、サポート・ギターを務めていたKOKIが新メンバーとして加入。「全員がこのバンドを好きで、ここが自分の居場所だと再確認できた」と語る彼らの10年の軌跡と、5年ぶりとなる渾身のフルアルバム『Yours』を提げた47都道府県を巡るバンド史上最大級の全国ツアー『10th Anniversary Tour 47AREAS』について、4人全員に話を訊いた。

JESSE(Vo.Gt)

JESSE(Vo.Gt)

あの時は申し訳ない思いで人前に立ってた
でもこれは通るべき道だと思ってた

ーー喪失から始まったThe BONEZが迎えた10周年。特別なその10年の中でも、活動休止を経て2020年に猪苗代湖で行われた復活ライブは、やはり大きな節目だった気がします。あの時の演奏やメッセージ、そのままJESSE自身に伝えたい!と思った人も多いかもしれない……。

JESSE(Vo.Gt):自分でもそうしてたかもしれないというか。自分に向けて歌ってたところはすごくある。あのライブはいろんな1ページ目が重なってたというか。僕らの久し振りのライブであり、俺が留学して帰ってきた後でもあり(苦笑)、KOKIが入ったお披露目でもあり。いつもは自分がお客さんを勇気づける……じゃないけど、お客さんを引っ張っていく中で自分も引っ張ってもらう感じだったけど、あの時のライブは、自分が引っ張ってもらえたなと思う。ただあの日は俺、歯がめちゃくちゃ痛くて。緊急手術になるぐらいだったの。あと1日遅れたら死んでたかもと言われたぐらいだったから、あんま覚えてないんだよ、痛すぎて(一同爆笑)。

ーー死ななくてよかった……。

JESSE:やっぱ当時はね、自分のせいなんですけど、ライブをする喜びよりも、何だろうな……申し訳ない思いで人前に立つ気持ちの方が大きかったから、楽しめてはなかったかな? けど俺、これは通らないといけない道なんだなとすごく思った。『Yours』はそういう全部をひっくるめた歌詞になってるかもしれない。峠を乗り越えたとしても、つらかった道のりは一生消えることはない。俺は俺の歩み方でそれを経験したけど、他の人も違う内容で、挫折を経験したり、人を傷つけたり傷つけられたり。十人十色の理由だけど、誰にでもそういうことが少なからずあるわけじゃないですか。ようやく今、それが言えるというか、自分の言葉を受け入れられるっていうか。そういうちょうどいいタイミングで『Yours』というアルバムを出せたのはすごく嬉しいし、自分自身も曲に勇気づけられてる、というのは確か。

ーーそんなアルバムの1曲目が、この3年間分の禊にも聞こえる「Love Song」というのが熱いです。

JESSE:ラブソングは、世界で一番多いジャンルなのかな? RIZEで「missing you」というラブソングを書いたけど、あれは俺の間違った過去だから(苦笑)。「Love Song」もストレートなラブソングじゃないけど、これが俺が書くラブソングなんだと思えて嬉しかった。やっぱこう、ほんとムカつく、こいつ嫌い、絶対もう一生付き合わない、あ〜!大好きだ!みたいな(笑)。最終的に嫌いだ!が勝つときもあるじゃん? そういう究極のところまでヘイトの感情が行かないと気付けないこともあるし、そういう両方の感情がI LOVE YOUというか、愛なのかなと思う。だから、これはそういう両極の感情を描いたラブソングかな。

ーーそれ、JESSEが留学することになった時のBONERの気持ちかもしれない(笑)。

ZAX:あの当時のね(笑)。

ーーそう。信じてたのに!最低だ!でも……でもやっぱり大好きだ!みたいな(笑)。

JESSE:じゃあ、それで(一同大爆笑)。

ーー「Love Song」を作曲したT$UYO$HIさんは当初、そんな愛憎が交錯するラブソングになると想定してました?

T$UYO$HI:してないよ(笑)。

ーーツアーでファンが一緒に歌いたい1曲かもしれない。

ZAX:でもツアーでやらないかもしれないよ(笑)。

JESSE:MVまで作っておいて?(笑)

ーーMVには「新しい学校のリーダーズ」も出てましたね。

JESSE:前から俺が友達で。彼女らの初期のMV(『Free Your Mind』)に俺がカメオ出演してたから、逆に今度はこっちに出てよっていう。だから、借りを返してもらった感じかな(笑)。

いつしか本当にナチュラルに
人のために何かを作ってる感があった

T$UYO$HI(Ba)

T$UYO$HI(Ba)

ーー2ndアルバム『To a person that may save someone』を出した時、「誰かを救うであろう君に」というタイトルはJESSE自身の願いであり、The BONEZというバンドの存在意義と話してましたよね。でもこの数年、もしそれがJESSEにとって大きな負担になってたのかなっていう不安が、きっとファンの中にもあったと思うんです。

JESSE:最初、『Yours』のタイトルはすごくシンプルに、『We are The BONEZ』でよくないかなと言ってて。あと、やっぱ4枚目だし『4』とか。でもそうなるとインタビューで、『4人になったからですか、もしくは4枚目のアルバムかだからですか』ときっと言われそうじゃない? そしたら取材がそこで終わりそうだからやめようって(笑)。あと、「束ねる」という意味のラバーバンドの『バンド』とか、旅行とかで使うトランクも、一つのものに多くのものを束ねるという意味だから『トランク』もいいねとか。いろいろ話した中で最終的に『Yours』になったのね。なんかもう、いつしか本当にナチュラルに、人のために何かを作ってる感があって。後付けだけど、これを聴いた1人1人の背中を押してあげられるアルバムになるといいなと、すごく思いました。

ーー「Here we are」もまさにそんな1曲かも。

JESSE:例えばビースティ・ボーイズが「Here we are」という曲出したら、「俺らはここにいるぜ!」って感じのアガる曲になるように、言葉自体はそういう意味だけど、俺らの「Here we are」は、自分で命を絶つことを考えてたり、いじめを受けて無視されまくってたり、自分の存在すら疑問に感じてしまってるような人たち全員のハートが、ぶわっとあったかくなるような曲だと思ってる。曲を聴いてると辛い気持ちも思い出すかもしれないけど……この世界にはいろんな色があって、なるべく違う色であることが「Here we are」、ここにいることの証というか。LPサイズ版の中ジャケットのイラストのイメージかな。イラストの色はうちの嫁が塗ったんだけど、クレジット入ってなくて傷ついて怒ってた(笑)。

ZAX:怒ってたんや(笑)。

JESSE:当初、「Here we are」はサビの<Here we are/Here we are>ってとこだけあって。その時はただのポジティヴソングだったのね。で、どういう人が俺はここにいるって思うんだろう?って考えた時に、<why did you push her off the building>ってフレーズのモチーフになったニュースを見て。その時、「いってきまーす」つって学校に行く俺の娘が側にいたんだけど、命を絶った子は、親にいじめられていたことを伝えられてなかったんだよね。「どう、学校楽しいの?」って娘に聞いたら、「楽しいよ?学校行くね」つってて家出てって。その姿を見て、もし娘が俺に言えてないことがあったらどうしよう?それに気づいた時は何て声をかければいいんだろう?って。だから、そういう人たちの何か手助けしたいっていう気持ちが「Here we are」の歌詞になったかな。

The BONEZは帰る家であり居場所
とくに俺とZAXはそれを再確認した10年だった

ZAX(Dr)

ZAX(Dr)

ーーT$UYO$HIさんの場合、『Yours』の作曲のモチベーションは何だったのですか?

T$UYO$HI:2020年の『re:BIRTH』ツアーで小箱を回ろうってことになった時、もう1回、イチからアッパーな曲でかまそう!と思ってそういう曲を書いてたけど、結局コロナでツアーができなくなって。その後、みんなで模索しながらライブをやり続けて、KOKIがサポートから正式メンバーになって。そういう中で、この4人が今やりたいこと、バンドとしての今の4人がいちばん活きることを日々探る中で、まだライブができるかわからない状況だったから、アルバム出す意味あんのかな?という思いがすごくあった。お客さんの優先順位としてはきっと、新しい曲よりも、コロナ禍以前のように、何も気にせずに一緒に歌ってライブを見ることなんだろうなって思っちゃってて……。

ーー実際、まだライブの現場には多くの制限がありましたよね。

T$UYO$HI:そう。だったらせめて新しい曲を楽しみたいだろうなと思って、前回のミニアルバム『LAB』を出したんだけど、ここ半年ぐらいでやっといろんな状況が戻ってきて、2023年は活きる!って思えたことが(曲作りの)モチベーションになったかな。

ーー「We’are The BONEZ」という曲で終わる『Yours』を作り終えた今、改めてメンバーにとってのThe BONEZというバンドはどんな存在なのでしょうか?

ZAX:家ですよね、うん。ぶっちゃけ、家族よりも一緒にいますからね。帰ってくるところでもあり、落ち着くところでもあり、自分の居場所でもある。いちばん自分らしくいる場所ですね、はい。

JESSE:学校か何かの宿題の感想じゃないんだから(笑)。

T$UYO$HI:でも俺も同じかな。家っていうか居場所というか。特に楽器をやってる人って、今は1人でYouTubeで配信したりとかも出来るけど、やっぱり本当は誰かとやりたくて始める人は多いと思う。でも、もしバンドを始めても、メンバーとうまくいかなかったり、誰かが辞めちゃったり、メンバーが見つからなかったり。それで辞めてっちゃう人がほとんどだからね。なおかつ、もしバンドがいい感じに行ってても、1人メンバーがいなくなったりすることもある。仮にメンバーチェンジをしても、やっぱりバンドという集合体の相性というか、組み合わせというのは、このパートがいなくなったからこいつを入れようという感じではうまくいくことじゃなかったりするからね。

ーー音楽以外の相性、重要ですよね。

T$UYO$HI:パズルじゃないけど、そういう全部がハマった時だけが、いい感じになるっていうものだから、バンドマンにとって、そういうメンバーと巡り会えるかがいちばんのポイントだと思う。どんなに演奏が上手いかよりも、自分を必要としてくれて、自分も相手が必要で、それが組み合わさったやつはやっぱバンドを続けていけてるし、そのピースがなくなっちゃったやつは、どんだけいいとこにいても急に、あれ?みたいなことになっちゃうわけだし。それこそ、ZAXと俺は10年前そうだったわけだし。

ZAX:(うなずく)

T$UYO$HI:急に自分の苗字がなくなるんですよ。P.T.P.のT$UYO$HIですと言えてたのが、バンドがなくなっちゃうと、ただのベースやってるT$UYO$HIです、になる。普段はそんなこと全く考えてないけど、いざ苗字がなくなると、「俺って何者なの?」みたいな感じが、たぶんみんなあると思う。だから自分の苗字となるバンドがあることがもう、本当にラッキーというか。もちろん自分で掴んだものなんだけど、本当にそこに巡り合えるかどうかが、バンドマンにとっていちばん大きいことなのかなと思う。KOKIの加入もそうだよね。こういうタイミングじゃなかったらメンバーになってなかったかもしれないし。NAKAが辞めることになって、いろんなことがあったタイミングでKOKIがいたからこうなったわけで。逆にKOKIがいなかったら、俺らもどうなったかわからないし。だから、自分にとって苗字がある、居場所があるってことは大事で、それを再確認したのがこの3年であり、10年だったかなと思う。

俺は何でもわりと自分からアクションを起こして行動するタイプなんだけど、もう1回パズルを作ろうなんて思ってもいなかった。自分の意思で決めて一歩踏み出したわけではなく、何かのタイミングときっかけで始まったけど、それがこんなにも自分の人生の中で大きなものになるってこともあるんだなって思ったし、そうやって始まったものがどんどん自分の大事なものになっていく。さっき話した「Love Song」の話じゃないけど、やっぱ感情は止められないよね。やっぱみんなこのバンドが好きだし、自分の今の苗字だってことを、特にこの3年は再確認したかな。

KOKI:俺の場合は……やっぱ自分はバンドの中で最年少ですし、人生の経験も活動歴も含めて、全部自分が下なので……つっても35のおっちゃんなんですけどね(笑)。でも音楽活動というよりは、人との接し方であったり、物事の捉え方であったり、The BONEZはみんながそれを背中で見せてくれる場所、という感覚がすごくある。T$UYO$HIくんが言うパズルのピースがこの4人だとしたら、3人がすごく大事なものを教えてくれるんですよ。みんな表向きは明るくニコニコやってても、裏ではそれぞれいろんなことがあるってことも、メンバーだからわかりますし。こういうことをやってんだとか、こういうこと気にしてくれてるんだとか。そういうことを背中で教わりながら、その上で自分は何ができるんだろう?かとすごく考えます。NAKAさんがドキュメンタリーで「歯車」と言ってたかな? 永遠に続くものはないと思ってるからだと言ってましたけど、メンバー全員がThe BONEZを回せる歯車とかパズルのピースでありたいと思ってます。

JESSE:もしコロナ禍がなかったとしても、10周年はきっと濃い時間になってたと思う。でも特にこの3年間は、俺らにとって大事だった。この3年間で俺らはさらに結束が固くなって、KOKIも入って、本当にメンバーのテンションはかつてないぐらい高いし、20周年まで、日に日に男子校化していくだろうね(笑)。

『10th Anniversary Tour 47AREAS』は「感情のリハビリ・ツアー」
きっと俺たちの人生の中でも大事なツアーになる

KOKI(Gt)

KOKI(Gt)

ーー最後に改めて、5年ぶりとなるフルアルバム『Yours』を携えて47都道府県を巡るバンド史上最大の全国ツアー『10th Anniversary Tour 47AREAS』への思いを聞かせてください。

JESSE:この3年間、みんな我慢して自粛して、だいぶ頑張ったと思う。人によって違うかもしれないけど、自分が生きてきた数十年の習慣をそんなにいきなり変えられねぇよ!と思ってたけど、たかが3年でマスクで隠してた顔を出すのすら恥ずかしくなったり怖くなったりする人もいて。逆にいい変化もあったと思う。ダイバーが来るから、コロナ前はステージの最前に子供がいる景色なんて見たことなかったけど、最近は最前でお母さんやお父さんと一緒にくぎ付けになって、ステージで俺らが暴れてるのを見たり、音を浴びるわけじゃん。その子たちの5年後、もしくは10年後の未来が楽しみだなと思う。

あと、くしゃみとかでかい声を出す時に、ちょっと近場にいる人を気にするようになったり。そういうモラルやマナーっていうのは、人が共存して生きるために原始時代からあったと思うけど、それがより磨かれていったのはすごくいいと思う。けど、人間が生まれ持つ感情を出すな、って言われ続けたのがこの3年間で。そんな日々の中で唯一、音楽を聞く時だけが感情が溢れ出す時間で。涙を流したり笑ったり、みんなの喜びはイヤホンやヘッドホンの中にいっぱいあったけど、これからはライブで好き放題、感情をあらわにしてほしいなって思う。だから47都道府県を回る今回のツアーは、俺らも含めて「感情のリハビリ・ツアー」だね。みんなやっと心のギプスが取れて、ちょっと歩き始めた頃だと思うの。そういう人たちの背中を押すツアーにしたいなっていう気持ちがあるし、元に戻るんじゃなくて、みんなと一緒に進化していけたらいいなと思ってる。

ーーだからこそ47都道府県の「ライブハウス」を回ろう、と?

JESSE:この3年間でライブハウスがどんどん潰れていって……ライブが出来るってことが全くもって当たり前じゃなくて、ライブができることの喜びだったりを、改めて知ることができた気がする。どこかのライブハウスの店長に叱られて学んで、で、戻った時に「おかえり」と言ってもらえることが嬉しかったりとか。俺は20歳でRIZEとしてデビューしちゃったから、そういう大事なことを経験せず、ただステージに上がれば全部用意されてるっていう贅沢なところでやってきたから、もしThe BONEZをやってなかったら、そういうことを知らないまま大人になってたと思う。

実際、もう得るものはないな、もう結構見たな、あとはこれを繰り返していくだけだなと思ってたし。ファンへの対応だったり、人との対応だったり、曲への向き合い方だったり、全てにおいてね。だからThe BONEZが俺を、人として、男としての格を上げてくれた一つだと思う。俺がこんな歌を歌うなんて思ってなかったし、それを引き出してくれたのはZAXとイッシー(T$UYO$HI)の2人だからね。で、KOKIが入って、彼は英語が喋れるから、歌詞の内容で煮詰まったりレコーディングでハモる時とかに、ちょっとした言葉の丸さとかを確認できる。今までは1人でやってたからね。まぁ結局、「俺、ネイティヴじゃないんでわかんないすけど」みたいに言われるんだけど(笑)。

ZAX:言いそう!

KOKI:わははははは。

JESSE:だから、どこまでもいけるなっていう感覚を、The BONEZは俺にもたらしてくれるんだよね。だからワクワクしてしょうがないし、そんなワクワクがあるところがホームであって、自分の居場所であって。こういうバンド作りたいな、こういうバンドに入りたいなって思ってたバンドに今自分がいる。それはすごいラッキーですよね。そんな俺らが47都道府県を回ることで、うちのライブに来る人たちの気持ちを上げたいし、若い世代のバンドマンに、47都道府県を回るっていう手もあるのか!と思わせることが出来たら、きっとライブハウスは潰れないと思うんだよね。The BONEZでこれだけガッツリ全国津々浦々回るのは初めてだけど、この4人なら大丈夫かなと思う。きっと今後の自分の人生の中でも大事なツアーになると思う。


取材・文=早川加奈子 撮影=Hoshina Ogawa