2023年12月7日(木)〜12月10日(日)シアタートラムにて、シアタートラム・ネクストジェネレーションvol.15 −フィジカル−room.Onaya Rion『Pupa』が上演される。

「シアタートラム・ネクストジェネレーション」とは、2008年、若い才能の発掘と育成を目的に開始され、日本国内で舞台芸術活動を行う団体・個人を幅広く募集し、選考により決定した
アーティストにシアタートラムでの上演機会を提供。公演実施にあたっては、世田谷パブリックシアターが、会場提供だけでなく、参加アーティストのさらなるステップアップ、作品の醸成をバックアップするというもの。

節目となるvol.15からは、「演劇」と「フィジカル」にジャンルを分け、隔年で募集を開始した。リニューアル後、初のフィジカル部門のアーティストとして選出されたのが、女屋理音(room.Onaya Rion)だ。

女屋理音   撮影:田中洋二

女屋理音   撮影:田中洋二

女屋は、3歳からクラシックバレエを始め、ピナ・バウシュとの出会いを機にコンテンポラリーダンスへの道を歩み始めたという経歴を持つ。お茶の水女子大学舞踊教育学コース在学中はピナ・バウシュを中心に作家研究を行いながら、能美健志、梅田宏明、ハラサオリなどの振付家の作品に参加。同時に自身の作品も作り始め、『I'm not a liar.』(21年)で横浜ダンスコレクション最優秀新人振付家賞を受賞。現在は、DaBYレジデンスアーティストとしても活動するなど、令和のコンテンポラリーダンスを担う若手のひとりとして注目されている。

今回上演する『Pupa』作のモチーフは“昆虫”。蛹(さなぎ)を意味する『Pupa』をタイトルに置き、〈内的感覚〉や〈記憶の循環〉に着目した新作をおくる。演劇的要素も多く取り入れ、独自の感性が散りばめられた作品作りに定評のある女屋が創造する新作舞踊公演に、注目しよう。

振付・演出・出演:女屋理音 コメント

女屋理音    撮影:飯田耕治

女屋理音    撮影:飯田耕治

蝶の幼虫は、羽化のために一度蛹の中でその形状を失います。その創造のための破壊は、人間の営みの健全な姿であるようにも感じます。
現代では技術によって同じクオリティのものが大量に作られ、それらを消費できる仕組みが出来上がり、エネルギーが循環していく機会を失いつつあります。
私は作品を通して、身体を用いたエネルギーの循環、つまり有機的に他者と繋がる可能性を探していきたいと思っています。そして観客の皆さんとそれをどう共有できるのか、一緒に探る時間になれば幸いです。

女屋理音(おなや りおん) プロフィール
1998年新宿生まれ、群馬県育ち。3歳の終わりにバレエ教室に通い始め、瀬山紀子にクラシックバレエを学ぶ。ピナ・バウシュの存在を知り、衝撃を受けたのが小学生の頃。同スタジオにて、ファビアン・プリオヴィル、瀬山亜津咲らのワークショップや作品出演を通して、モダンダンスのテクニックや創作の基礎を学ぶ。ジャズダンス、キャラクターダンスなど、多様なジャンルの踊りを経験した後、お茶の水女子大学舞踊教育学コースに入学する。在学中はピナ・バウシュを中心に作家研究を行いつつ、能美健志、梅田宏明、ハラサオリなど、様々な振付家の作品に参加。現在は、DaBY レジデンスアーティストしても活動中。
在学中より自身の作品を作り始め、2021年、横浜ダンスコレクションにて最優秀新人振付家賞を受賞。その後も創作活動を続けている。作品創作を通して、意味を持つ前の言葉の羅列や、振付が生まれる前の身体の状態など、曖昧な領域に対する確かな共有を探っている。

また、「シアタートラム・ネクストジェネレーション」リニューアル後、初の演劇部門となる vol.16 には、くによし組が選出された。

くによし組は、國吉咲貴が主宰する団体で2015年に設立された。「異常で、日常で、シュール」をコンセプトに、日常と非日常を明るいタッチで映し出す劇作が高く評価され、佐藤佐吉賞(最優秀作品賞、優秀脚本賞ほか)、関西演劇祭 2020(脚本賞・演出賞)などを受賞。そのほか、せんだい短編戯曲賞、劇作家協会新人戯曲賞、北海道戯曲賞などで最終候補に選ばれる実力を持つ、今後ブレイクする可能性を大いに秘めている団体のひとつだ。

くによし組『人人』(2020年)

くによし組『人人』(2020年)

くによし組『ななめ島』(2023年)     撮影:坂井亜由美

くによし組『ななめ島』(2023年)     撮影:坂井亜由美

シアタートラム・ネクストジェネレーション vol.16では、戯曲の執筆力に注目し、これからの飛躍が期待される団体として、選出したとのこと。世田谷パブリックシアターは、2024年12月のシアタートラム公演までバックアップしていく。

世田谷パブリックシアター芸術監督・白井晃:選出コメント

世田谷パブリックシアター芸術監督・白井晃

世田谷パブリックシアター芸術監督・白井晃

國吉さんの作品は、いつも虚実が隣り合わせにある。隣り合わせと言っても、普通の距離感の隣り合わせではなく、本当に隣接していてくっつくように存在している。むしろ虚実がめり込んで存在していると言っても良い。だから一見不条理劇のようにも見えるが、不条理劇ではない。
むしろ、國吉さんの世界の登場人物はとても条理にかなっているものだから、これが今の私たちの現実だと思い知らされる。そして、彼らの会話を通して、私たちを取り囲む不条理な世界が浮き上がって見えてくるのだ。
上演予定の、コロナ禍の前に書かれた作品が、改めてシアタートラムの空間の中でどのように現出されるのかとても楽しみだ。もしかしたら、私たちはもっともっと不条理になった世界の中で、國吉さんの世界の清々しさを感じることなるかもしれない。

國吉咲貴(くによし さき)プロフィール

國吉咲貴

國吉咲貴

俳優・脚本家・劇作家・演出家、埼玉県出身。
受賞歴に、関西演劇祭 2020『トランポリンさん』脚本賞・演出賞、若手演出家コンクール(2018年および2020年優秀賞)、佐藤佐吉賞(2015年優秀助演女優賞・2017年優秀脚本賞『サバンナモンキーの憂鬱」・2018 年優秀脚本賞『ケレン・ヘラー』・2019年優秀主演女優賞・2021年優秀脚本賞『人人』)受賞。北海道戯曲賞、せんだい短編戯曲賞、第 21 回劇作家協会新人戯曲賞、伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞2016短編部門などで最終候補となる。
くによし組公演以外にドラマ、アニメ、他劇団の脚本・演出なども多数執筆。映像作品に、ABCテレビ・テレビ朝日系『何曜日に生まれたの』スピンオフドラマ、福井放送『はじめてのかがやき〜北陸新幹線福井・敦賀開業1年前記念ドラマ〜』、テレビ東京『イケメン共よ飯を喰え』、BS松竹東急『悪女のすべて』、関西テレビ『イケドラ』、テレビ東京アニメ『それだけがネック』、テレビ東京アニメ『闇芝居』など。