芥川賞作家で、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹(39)が10日、都内で最新刊「人間」(毎日出版)の発売記念記者会見に臨んだ。

 ノーネクタイのスーツ姿にスニーカー履き。書店でサイン会を終えてから出席し、「『楽しみにしていた』という声もあり、『体調を心配した』という声も頂いた。連載が9カ月続き、その前の準備期間を入れると約1年。中断無く書いていたのでようやく本になったなって気持ち。早く読みたいですね」と語った。

 「火花」で第153回芥川賞を受けてから約4年3カ月。映画化されて来年公開となる「劇場」に続く第3弾は、又吉にとって初の長編小説。18年9月から今年5月まで毎日新聞夕刊で続いた連載の書籍化だ。

 過去2作品と比べて「一番大きい違いは連載だったこと。長い時間をかけて書いたこと。1作目、2作目を書いたから今回の作品がある。つながっている部分もある」と解説した。

 過去2作品は、青春まっただ中の若者の夢や挫折を描いたのに対して、執筆時の本人と同じ38歳の男性が主人公。「青春のその後」の残酷さと、仄(ほの)かな救済がテーマとなっている。

 「せっかく連載だったので、連載ならではのライブ感を感じながらやりたいところもあった。あえて戻らずに、前日に自分が書いたことを背負って進んでいくことが前2作とは違った。本当に締め切りが」とも。過去2作は「家とか書斎とか喫茶店とか集中できる場所」で書いたが、今回は「どこでも書けた。町中でも書いていた。どこでも書けるということで成長できたんじゃないですかね」と振り返った。

 主人公と同世代の女優・佐藤仁美がちょうどこの日結婚したことについては「本当に祝福したいですし、うらやましいと言う言葉しか出てこない。誰かが幸せになるということは凄く良いことです」とコメント。自身の結婚については「人を愛する準備は出来ているんですけど…頑張ります」とつぶやいた。

 今夜発表されるノーベル文学賞に日本人が候補にあがっていることについて、受賞となれば「いやすごく、それでまた書店に行く人が増えて盛り上がっていいんじゃないかなと思います」。候補者の一人、村上春樹氏については「大きな賞をとっても、とらなくても村上春樹さんの作品は変わらない。僕も村上春樹さんの作品が好きで読んできたんですが、個人的には(受賞してもしなくても)どっちでもいいです。受賞すれば盛り上がっていいと思います」と述べた。

 自身はノーベル文学賞を受賞するかどうかについては「(これ以上コメントすると)恥さらしみたいになるんで。ものつくる時の動機って、もうちょっと違うところにある」と受賞は執筆の動機ではないことを強調した。

 他分野での日本人のノーベル賞受賞には「長い時間をかけた積み重ね。そういうものが正しく評価されたことは後に研究とかにつながっていくと思います。尊敬しています」と語った。

 相方の綾部祐二(41)の反応については「リアクションは入ってきていない。1作目も2作目も手に取ってくれていて。僕が書いた時間よりも、時間をかけて読んでくれたんで。今度は長編なので時間がかかると思います」と長い視野で待つ様子。「漫才は綾部が帰ってきたとき綾部が持ち帰ってきたものを入れてやりたいと思います。もちろんコントも」と力を込めた。