9日に20歳のバースデーを迎えた藤田菜七子。16年ぶりに誕生したJRA女性騎手として一身に注目を集めた昨年3月のデビューから1年半。人生の節目を前に、改めてフィーバーを振り返りながら、現在、そして今後に向けての抱負など率直な胸の内を語ってもらった。また、これまでレース騎乗のため4カ国へ渡航。遠征先での貴重なオフショットも提供してくれた。

 ――20歳を迎えます。今の気持ちは?

 「20歳になったら大人になるのかなと思っていたけど、自分の思っていた20歳とは程遠い気がする。もっと大人かなと思っていたので」

 ――誕生日の思い出は?

 「小学校の時は夏休み中だから、誰とも会わず祝ってもらえない。お盆も近くてみんな遊んでくれないし、誕生日が休み中じゃない人は祝ってもらえていいなあと思っていた」

 ――デビューから1年半がたちました。デビュー当時は競馬以外の媒体を含めて毎日、大きく扱われました。

 「競馬学校を卒業したばかりで、何が何だか分からない状態でした。ありがたい半面、既に地方や海外には女性騎手がいる中で、なぜこんなに取り上げられるのだろう?同期もいて、自分の何がそんなに特別なんだろう?という気持ちでした」

 ――過度の注目の中、1年目は6勝。

 「注目してもらっているのに勝てない、思い通りに乗れない。でも、同期はどんどん勝っていく。凄く焦りがありました。今も、実はあるのですが…」

 ――それをどう乗り越えた?

 「秋くらいに、他の人と比べても仕方がないと、ふと気付いたんです。そうしたら、スッと変な力が抜けました」

 ――切り替えられるようになった?

 「そうですね。レースが続くと切り替えるのは大変なんですが、今はデビュー当初よりは切り替えられるようになりました」

 ――デビュー前と今では、騎手についての考え方の違いはありますか?

 「想像以上に勝負の世界はシビアだと感じます。乗り代わりとか。苦しいことはいっぱいありますが、それでも1つ勝てば全てが吹き飛ぶんです。先頭でゴールする、勝った時のあの感覚は、ジョッキーにしか分からない喜びかもしれません。昔、憧れていた“かっこいい存在”である騎手に、今自分がなっているんだ、っていう。今でも本当に魅力的な仕事だと思いますし、辞めたいと思ったことは一度もありません」

 ――ストレス発散方法は?

 「買い物ですかね。最近は(美浦トレセン近くの)阿見のアウトレットに行って帽子、サンダル、シャツを買いました。値段が高い物よりも、安い物を多く買ってしまうんです」

 ――休日に友達と出掛けたりしますか?

 「中学校の同級生とは今も仲が良くて、先日は私が車を出して横浜の中華街、コスモワールド、赤レンガ倉庫に行きました。友達はほとんど学生ですが、ご飯は割り勘です(笑い)。その辺は、逆に友達が気を使ってくれているのかもしれません」

 ――20代も、競馬界では注目される存在に。

 「たくさん注目される中で結果を出せていないし、もっと頑張らないと、という思いはありますが、思い過ぎると自分を追い詰めるということにも気付いた。技術が足りなくて未熟なので、頑張っていかないと。もっと成績を上げて女性だからではなく、一人の人として取り上げられるようにならないと、と思います」

 ≪取材後記≫「騎手ってかっこいい」。ただただ純粋な気持ちでこの世界に飛び込み、ひたむきに夢を追い、かなえた小さな18歳の少女にとって、昨年3月の「菜七子フィーバー」は確かに重すぎたかもしれない。精神的に“いっぱいいっぱい”になり、必要以上に語ることを避けるような時期もあった。

 しかし、このインタビューでも吐露してくれたように、困難を自ら乗り越え、力に変えた。強くなった最近の菜七子は、本当にいい、自然体の表情で話をしてくれるし、またその精神状態が競馬でも表れているのか、勝ち星も重ねられるようになった。

 「女性」「可愛い」ところばかりが取り上げられるのは、今は仕方のないことかもしれないが、いつか、本人が望むように、こちらも「一人の騎手」として菜七子をクローズアップできる日が来たらいいなと思う。

 ◆藤田 菜七子(ふじた・ななこ)1997年(平9)8月9日、茨城県出身の20歳。16年3月5日、美浦・根本厩舎からデビュー。同年3月20日、スプリングSモウカッテルで重賞初騎乗(9着)。同年4月10日の福島9Rサニーデイズで初勝利(51戦目)。JRA通算498戦13勝(8日現在)。1メートル57.4、45.6キロ。血液型A。