今月8日、巨人の坂本勇人内野手(32)が、東京ドームで行われたヤクルト戦で通算2000安打を達成した。記者は坂本が入団2年目で遊撃のレギュラーを奪った2008年から3年間、巨人担当を務め、近くで取材する機会が多かった。当時はいつレギュラーを外されるか分からない立場で、今よりも喜怒哀楽が表に出ていた印象だ。

 特に印象に残っている会話は08年。どこかの地方球場で、相手チームの練習中に一塁ベンチに座って雑談した時だ。「子供の頃、プロ野球で3割打つのって簡単やと思ってました。だってゲームだと簡単に打てる。2割5分でもダサいと思ってましたもんね」。二岡(現3軍監督)の故障もあって遊撃のポジションを与えられてはいたが、まだまだ高卒2年目。日々、練習では試行錯誤を続けていた。そんな18歳が漏らした本音。相手の主力選手の打撃練習を食い入るように見つめていた横顔が思い出される。

 大半の野球少年と同じように、坂本も小学生時代は野球のテレビゲームに熱中した。前年成績がその選手の能力に反映されることが多いため、巨人や西武など能力が高い選手が集まっているチームを選択していたそうだ。坂本より少し世代は上だが、今年43歳の記者もいわゆる「ファミコン世代」でゲームに熱中した期間があるだけに、坂本の言葉に妙に納得した。

 10年以上前、思わぬところからゲーム談義となったが、坂本はこうも言った。「来年、ゲームをする子供たちに馬鹿にされないように、打率を少しでも上げたいですね」。高卒2年目ながら最終的には134安打を放って、打率・257。阪神との最大13ゲーム差を大逆転したリーグ2連覇に大きく貢献した。

 坂本はたとえ0―10の9回2死走者なしで打席に立っても「今日が1年に1度の球場観戦の子供もいるかもしれない」という思いを胸に打席で全力を尽くす。積み上げた2000本以上の安打には、全国の子供たちへの思いが詰まっている。(記者コラム・山田 忠範)