その去就に注目が集まっていた香川真司がドルトムントとの契約延長を発表した。契約期間は2020年6月末まで。推定年俸は500万ユーロ(約6億5000万円)で、これはマルコ・ロイスやマリオ・ゲッツェといった選手に次ぐドルトムントで5番目の金額になる。この待遇はもちろんだが、今回の発表方法からも、ドルトムントの香川に対する姿勢がうかがえた。

 今回、ドルトムントが香川の契約更新を発表する場に選んだのは、浦和対ドルトムント戦の前日会見だった。チームがアジアツアー最初の目的地である日本に到着し、熱狂的な歓迎を受ける様子が様々なメディアで報じられる中、クラブは日本のファンにとって一番インパクトのあるニュースを用意していた。

 昨シーズン終盤から、ドルトムントは香川との契約延長を望んでいることを表明しており、地元メディアの間でもサインは時間の問題と見られていた。

 ドルトムントは7月7日、ブンデスリーガのクラブとしては最も遅く今シーズンの準備を始めたが、香川はチームの始動日には合流せずに日本に残った。脱臼した左肩が完治していなかったこともあるが、始動から6日後にはアジアツアーで日本へ向かうことになる。2年前のアジアツアーでドルトムントが来日したときと同様、移動の負担を考慮した判断と考えられる。

 香川が日本でチームに合流するという事実を地元メディアがつかむと、「日本で華々しく契約更新を発表するのでは?」という噂が流れ、それが現実のものになったというわけだ。

 日本のスター選手との契約更新を生まれた国で発表する。アジアツアーにおけるプロモーションとしても、これ以上ないシナリオだ。ドルトムントと日本の関係が特別であることを示す上でも、意味のある行動だった。
 
 近年、海外ツアーで日本を訪れる欧州クラブは多いとはいえない。すでに欧州サッカーの人気が定着し、爆発的な成長を望めない日本よりは、大きなポテンシャルを持つ中国や東南アジア、アメリカのほうが好まれるからだ。そんな中で2年前、ドルトムントが初めての海外ツアーの目的地に選んだのは香川の母国である日本、そしてブンデスリーガが海外オフィスをオープンしたシンガポールだった。

 香川が日本のスター選手であることはもちろんドルトムントも分かっているが、ドルトムントというクラブがどのくらい受け入れられるかは未知数だった。そして、日本での熱狂的な歓迎に感銘を受けたドルトムントは、極東の島国に確固たるファンベースがあることを確信し、再び日本に戻ってくることを誓った。

 香川が日本において、ドルトムントの親善大使として果たす役割は果てしなく大きい。近年、ドルトムントの人気は世界中で高まってはいるが、日本ほどの人気を誇っている国はドイツ国外では見当たらない。ドルトムントにとって、日本は手厚く扱いたい国なのだ。

 クラブとしては、香川がドルトムントの一員として浦和戦に出場してくれることが理想だっただろう。ボールを蹴ることができる状態にまで回復していることを考えれば、無理をすれば数分だけでも香川をピッチに立たせることもできたはずだ。ただ、ドルトムントはプロに徹した。

 もちろん、ドルトムントは戦力として香川に大きな期待をしている。そうでなければこれほど好待遇の契約を結んだりはしない。ただ、クラブが香川にプラスアルファ、アンバサダーとしての役割を期待しているのも事実だ。ドルトムントはアジアツアー最後の目的地として中国に向かったが、そこでも高い人気を誇る香川に大きな注目が集まるのは間違いない。