この新型マツダCX-5は、2016年末にフルモデルチェンジされた2世代目となる。前身の初代CX-5(第71回参照)といえば、クルマのスミズミにいたるまで、それ以前のマツダ車と決別した完全新世代商品の第1弾で、現在のマツダ人気の土台となったクルマだ。

 そんな初代CX-5の発売は2012年2月だった。つまり、CX-5は5年を待たずに2代目の新型に世代交代した計算になるわけで、初代CX-5の寿命は最近ではかなり短い部類に入る。しかも、せっかくのフルチェンジなのに、少なくとも写真やカタログを見るかぎり、新型CX-5の”新しい感”はかなり薄い。




 ……というか、初代も最後まで古びた感はまるでなかったし、新型の基本プロポーションやデザインの思想や方向性も初代からあまり変わっていない。ボディサイズも初代とほぼ同じ。今のマツダ車は毎年のように改良の手が入って、新しい要素技術はモデル途中でもどんどん入れられるので、この2代目CX-5の技術内容も、マニアなら「当然そうなるわな」と予測がつくものが大半だ。意地悪にいうと、新型車なのに新鮮味がまるでない!

 だから、新型CX-5を初代と比較しても「室内がこんなに広くなった!」とか「今まで積めなかった○○も楽々収納よん?」、あるいは「信号ダッシュで先代を置き去り♪」、もしくは「燃費が△割もアップして、お得よね〜」みたいな、わかりやすい進化のツボは皆無に近い(笑)。他人事ながら「せっかく大金かけたフルチェンジなんだから、もっと新味を出せばいいのに」とか「この程度のリフレッシュなら、急いでフルチェンジする必要はなかった!?」と、ツッコミを入れたくなる。

 だが、新型CX-5を実際に見て、触れて、乗ってみると、これがもうビックリである。  なにより、室内が猛烈に静かになった。といっても、単純に遮音材や吸音材を大量追加したわけではなく、この静かさは走行中のエンジン内部の爆発を緻密にコントロールしたり、ボディ各部にあるアナの数や大きさをひとつひとつ、丹念に見直したりした結果だという。ここでいう”アナ”とは、配管や部品を貫通させるためや、工場での生産過程で使う穴のことで、実際には外からは見えなかったり、クルマが完成すると不要になったりする穴である。




 また、新型の運転感覚も「CX-5そのもの」としかいえないのだが、走行中の上屋の安定感、タイヤの吸いつき、人間の操作に対するミリ以下の正確な反応……といった”走りの機微(きび)”としかいいようがない部分が、だれもが一瞬で気づくほど初代とちがうのだ。

 インテリアの仕上げもちょっと感動するレベル。たとえば、ダッシュボードは左右いっぱいにステッチが走るレザー張り。最近は縫い目までプラスチック成型で再現できるので、安いコンパクトカーもステッチ(風)の内装を使っているが、CX-5のそれは、ひと針ずつ縫われたホンモノ。最新の成型技術がいかに高度になっても、その”ありがたみ”は、フェイク成型とはまるで別物というほかない。

 写真や言葉の説明では変わり映えしないが……いや、一見変わっていないように見えて、じつは別物に進化したCX-5は、まさに作り手の信念、情念、執念、怨念(?)をひっくるめた”念の作品”というほかない。

 まあ、そこはあくまでクルマだから”念”で機械がよくなるはずもなく、実際は前記のように「アナをとことん突き詰める」みたいな地道な物理の結集である。

 いずれにしても、新型CX-5は魅力のベクトルは初代そのままに、なんというか、値段が100万円くらい高くなったように錯覚するクルマなのだ。もちろん、実際の価格は初代と実質的には同等といっていい。

 CX-5といえば発売以来、ディーゼルエンジン車がいちばん人気で、新型でもディーゼルとは思えないバツグンの静かさが自慢ではある。しかし、クルマ全体の高級感がここまで増すと、個人的にツボったのは、ディーゼルより手ごろなガソリン車。200万円台後半の値札をさげる2.0リッターモデルだった。




 今のマツダはグレードによって細部をわざとショボく見せるズルい小技は使わないので、この安価な2.0リッターでも内外装の仕立てはまったく安っぽくない。もちろん、自慢のステッチもホンモノである。

 今回の取材車はそんな2.0リッター車に自慢の自動運転系安全機能をフル装備した”20Sプロアクティブ”というグレードで、さらに電動式の運転席シートやシートヒーター、ステアリングヒーターをセットにしたパッケージオプションが追加されていたが、それでも合計価格はまだ300万円に届かないのだ。

 ちなみに、そのパッケージオプションの名前は”ドライビングポジションパッケージ”というが、こういう命名センスもまた、走りの機微への”念”がほとばしるマツダのツボである。

 それにしても、これほどの”念”がこもった高級感あるミドルSUVが300万円以下で手に入るとは、いやホント、新型CX-5は涙が出るほど安い……といいきってしまいたい。




【スペック】

マツダCX-5 20Sプロアクティブ

全長×全幅×全高:4545×1840×1690mmホイールベース:2700mm車両重量:1510kgエンジン:直列4気筒DOHC・1997cc最高出力:155ps/6000rpm最大トルク:196Nm/4000rpm変速機:6ATJC08モード燃費:16.0km/L乗車定員:5名車両本体価格:268万9200円

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