7月10、11日の両日、日本最大のサラブレッド市場「セレクトセール2017」(主催・JRHA日本競走馬協会)が、北海道苫小牧市のノーザンホースパークにて行なわれた。

 今回で20回目の節目となる開催で、例年、売上額の上昇がとどまるところを知らないこのセールだが、既にスポーツ紙等の報道でもあったように、今年もその数字を伸ばし、2日間で1歳馬と当歳馬の合計462頭が上場、そのうち406頭が売却されて、落札総額は173億2700万円(税抜き、以下同)と、5年連続で過去最高を更新した。内訳として、1億円以上の取引値がついた馬は、昨年の23頭を大きく上回る32頭に上った。これに呼応するように、1億円より下の価格帯でも、軒並み取引が活発となり、全体の売却率、平均価格も上昇し、過去最高額につながることとなった。

 その要因のひとつとして考えられるのが、この1年でのセレクトセール出身馬による好成績だ。一昨年のセレクトセール以降の1年間でGI勝利はミッキークイーンの秋華賞のみだったのが、昨年のセレクトセールからの1年間では合計8つのGI(海外を含む)勝利を記録した。

 とりわけ大活躍だったのは、「サトノ」の冠名でおなじみの里見治氏の所有馬だ。サトノダイヤモンド、サトノクラウンでGIを各2勝、サトノアラジン、そしてこのセール出身ではないがサトノアレスでGIを1勝ずつと、これまでGIを勝てそうで勝てなかったのが嘘のような快進撃を見せている。ここ数年は億単位の高額購買の常連で、もともとの潤沢な資金に加え、今年はレース賞金も加わったため、今回はより多くの購買が予想されていた。

 実際、その期待に応えるような高額落札を連発した。中でも、上場番号107の母リッスンの2016(牡1歳/父ディープインパクト)は、2億7000万円と、1歳セッションでの最高値を記録。これを含めて、ディープインパクト産駒6頭、ロードカナロア産駒1頭の”億超え”ホースを購買。総額では16億9700万円とセリ参加者の中でもダントツ、里見氏自身としても昨年の13億2700万円を3億以上も超える購買となった。

 昨年、アイルランドの競走馬グループ、クールモアとの競りをジャパンマネーで退けたように、今年も存在感を示した里見氏であったが、2日目の当歳セッションで上場番号362イルーシヴウェーヴの2017(牡0歳/父ディープインパクト)を巡っては、超高額の攻防の末に敗れることとなった。2日間を通じて最高落札額の5億8000万円で落札したのは、「アドマイヤ」の冠名でおなじみの近藤利一氏だった。今年、GIヴィクトリアマイルを制したアドマイヤリードもこのセール出身だ。

 3億を超えてからの攻防は間髪入れずに1000万円単位で入札額が上乗せされていく、まさに札束のボクシング。かつてはセレクトセールにおいて「億超え」購買の常連だったが、ここ数年は大きな買い物は少なかった近藤氏。「まだまだ健在という意地を見せたかった」と、久々に「らしさ」を見せて、ノーガードの打ち合いを制した形となった。

 このほか、「ダノン」の冠名でお馴染みの(株)ダノックス、「ミッキー」冠名の野田みづき氏も例年どおりの購買力を見せていた。

 一方で、昨年までよりもトーンが落ち着き気味だったのが、昨年の日本ダービーをマカヒキで制した金子真人氏(名義は(株)金子真人ホールディングス)や、「トーセン」の島川隆哉氏といった面々。それでも全体が盛況であった要因は、新世代の台頭にあった。

 中でも大きなインパクトを残したのは、動画配信やオンラインゲームなどのネットエンターテインメントの巨艦、DMMの参入だった。

 今年のセレクトセールで、GI馬の全きょうだい(父も母も同じ)の上場馬は、ラヴズオンリーミーの2016(牝1歳/父ディープインパクト、全兄リアルスティール)、ドナブリーニの2017(牝0歳/父ディープインパクト、全姉ジェンティルドンナ)、シュガーハートの2017(牡0歳、父ブラックタイド、全兄キタサンブラック)の3頭のみだったが、DMMはこの3頭を根こそぎ持っていってしまったのだ。同社は既に新規クラブ法人馬主の準備体制を整えており、今年中にはサービスを開始する見込みだ。これまでは1頭に対し、多くても400口に分けて出資するのが主流だったものを、1頭1万口で募集し、より手軽なクラブ法人を目指すのだという。購入した3頭は、血統に詳しくなくてもわかりやすい良血で、このことからも、入念に血統や馬体を検討するファンではなく、よりカジュアルに「名馬の弟(または妹)」を持ちたいといった層がメインターゲットであることが伝わってくる。

 はたして新たなタイプの「一口馬主」は今後、競馬サークルにどのような風を吹き込むだろうか。