「セレッソはすごくいいチームだったね。キャプテン(柿谷曜一朗)は高い技術を備えているし、ストライカー(杉本健勇)はとてもパワフルだ。GK(キム・ジンヒョン)も素晴らしい能力を持っていて、彼のファインセーブがなければ、うちはもっと得点できていたはず。でも、なんとか試合をコントロールして勝利を収めることができた。暑さと湿気にはまいったけど、ピッチ上に問題があれば、僕らはしっかり対応して解決策を見出すんだ」

 7月17日に、ヤンマースタジアム長居でセレッソ大阪に3−1の勝利を収めた後、セビージャFCのミカエル・クローン=デリはそう語った。前日の練習後には、「相手は日本のリーグの首位チーム。今季は20試合近くこなしているようだから、シーズンオフの我々とはコンディションが違う。それでも、勝つために全力を尽くすよ」と話していた34歳の元デンマーク代表は、記者への対応と同じく、この親善試合にも真摯に臨んだ。

 実際、セビージャはこのベテランが自負する「対応力」を見せた。序盤はホームのセレッソがスペインの強豪を相手に互角に近い戦いを繰り広げ、4分には柿谷のクロスから水沼宏太がフリーでヘディングを放ったが、これはGKセルヒオ・リコに阻まれた。その13分後にも杉本が惜しいミドルシュートを見舞った。しかし、昨シーズンのラ・リーガ4位のチームは相手と状況に慣れていくと、徐々に「ピッチ上の問題」を解決していった。

 20分あたりから完全にボールを支配しはじめ、ゲームはほぼセレッソ陣内で展開されるようになる。パス回しの中心になっていたのは、試合後に松田陸が「レベルが違いすぎた」と舌を巻いたステベン・エンゾンジ。相手がプレスにくればワンタッチでいなし、中央が密集してくれば大きくサイドチェンジしてボールを保持した。

 セレッソが全体的に下がり始めると、フランコ・バスケスやセルヒオ・エスクデロが強烈なミドルでGKを強襲する。それが警戒されると、今度は深い位置でも細かくつなぐ。セビージャはウィサム・ベン・イェデルの先制点まで42分を要したが、それは決まるべくして決まったものだった。

 ハーフタイム開けも試合の趨勢(すうせい)は変わらず、後半から投入されたガンソが、さっそく50分に得意のスルーパスでパブロ・サラビアの決定機を演出した。さらにその5分後、ガンソはホアキン・コレアにも絶妙なパスを通し、GKに倒されたコレアがPKを獲得。ベン・イェデルが落ち着いてこれを決めた。サントス時代にネイマールのパートナーを務めたガンソは、運動量の少ない古典的な司令塔タイプで、欧州ではまだ成功を収められていないが、この日の大阪では天才的なスキルを随所に見せつけた。

 対するセレッソも終盤に反撃に転じる。80分にカウンターからリカルド・サントスが関口訓充とのワンツーで抜け出すと、最後はガラ空きのゴールに福満隆貴が押し込んで1点を返した。ホームのサポーターは歓喜し、同点に追いつくことを願ってチームをさらに後押ししたが、最後は相手GKのロングフィードから、ルイス・ムリエルにダメ押しの3点目を決められてしまった。

 試合後の会見で、セレッソのユン・ジョンファン監督は「学ぶところがたくさんあった。セビージャのコンディションはあまりよくなかったが、それにもかかわらず、ボールを持った時と持っていない時の質がすごく高かった。選手全員の連動性あるプレーがすごくよかったと思う。攻守の切り替えも早かった」と相手を称賛した。

 また、水沼宏太は「パスの質、動きの質に差を感じた。コンディションが上がっていなくても、『1、2歩動いて少し角度をつけるだけでパスは回していけるんだな』と、あらためてよくわかった。普段のリーグでは味わえないことが味わえたので、いい試合だったと思う」と、この試合で学習した点を明かしてくれた。

 多くの意味合いにおいて、セレッソにとっては悔しい結果だったはずだ。しかし、山村和也が言うように、「相手のいいところを参考」にして、今週末に控える浦和戦で成長した姿を見せられれば、大いに意義のある親善試合だったと言えるだろう。

 一方のアンダルシアの名門は、サミル・ナスリら昨季の主力の数人がチームを離れ、指揮官も代わって新たな船出を切ったばかり。さまざまな不利を抱えていたが、危なげなくJリーグの首位チームを下した。シュート数はセレッソの9本に対して21本を記録しており、スコア以上の完勝だったと言える。エドゥアルド・ベリッソ新監督も「新シーズンに向けて、いい準備ができている」と手応えを口にした。

 攻撃時にはボランチの位置でボールを受け、守備時には中央のスペースを消すなど、臨機応変な対応力を示した左SBエスクデロは、「簡単な試合ではなかったけど、僕らは真剣に戦って勝利をもぎとった。それにしても、日本はいいところだね。気に入ったよ」と笑顔で話してくれた。

 昨今、外国人旅行者から高く評価される日本。Jクラブと欧州クラブとのつながりは、日本人選手の移籍などを通じて強固になっているはずだし、来日した選手もスタッフも滞在を楽しんでくれている。この日、セレッソの選手たちがピッチ上で感じた彼我(ひが)の差を埋めていくためにも、こうした試みを継続していってほしい。