7月22日、味の素フィールド西が丘。J3リーグ第18節、敵地に乗り込んだギラヴァンツ北九州は、1−2でFC東京U−23を下している。試合終盤は選手交代によってU−18のようになった相手チームに追撃されて手を焼いたが、”大人の意地”を見せて、どうにか勝ち点3を稼いだ。8位に沈んでいた順位をひとつ上げたが、J2昇格条件の2位以上にはまだ遠い。

「前半、後半と、いい時間で点が取れました。その後の戦いでは課題が出たと思いますが、後期スタートで勝てたのでよかったです。フィジカルや戦い方の面で整理していきたいですね」(北九州・原田武男監督)

 昨シーズン、J2から降格した北九州は1年での復帰を目指すが、その道のりは平坦ではないだろう。2014年からスタートしたJ3。実はこれまで5チームがJ2から降格(ガイナーレ鳥取、カターレ富山、大分トリニータ、栃木SC、北九州)しているが、大分しか復帰できていない現実があるのだ。

 はたして、カテゴリーの降格がもたらす困難とは──。まず、J3では選手のサラリー面が厳しくなる。J1選手の平均月収は約150万円、J2では約50万円と言われる。それがJ3では10万円台にまで落ちる。J3クラブは「3人以上がプロ契約」だが、それ以外の選手の給与は限られる。多くの選手にとって、後がない。

 クラブとしても、1年での昇格は至上命題になる。降格したクラブはその年、J3の平均以上のサラリーを支出することになる。だが昇格に失敗した場合、その戦力は維持できなくなる。スペイン語、イタリア語、ポルトガル語では、下部リーグを「地獄」と表現するが、これは降格したときのダメージを指している。底なし沼や蟻地獄にはまった感覚だろうか。

「降格したら次のシーズンに戻らなければならない。それに失敗すると、下に引きずり込まれる。資金繰りが苦しくなり、選手は自信を失い、昇格の体力が尽きる」

 これは欧州サッカーリーグで言われる鉄則で、当然ながらJリーグにも当てはまる。降格した場合、まず収益が落ちる。同時に、チームの求心力が落ちるのだ。

 例えば2013年にJ2からJ3への降格が決まって以来、這い上がれずにいる鳥取は、J2時代に平均4000人以上だった観客が、今や1000人台に落ち込んでいる。このように集客が半分以下になるという現実がある。さらにメディアなどへの露出が減ってチームとしての魅力が下がり、スポンサー獲得が難しくなる……そんな負の連鎖が起こる。一度落ちた穴から這い上がるには、エネルギーが必要になるわけだが、落ちたクラブはそもそも勢いを失っている。

「1年で戻る。それだけで戦ってきた。決して負けられない、という気持ちで」

 昨シーズン、J2・J3入れ替え戦で栃木SCを取材したとき、スタッフがそう洩らしていたが、結局、昇格は果たせなかった。

「決して負けられない」

 その心理は失敗への恐怖に直結し、大胆さや冷静さを欠くことになる。切迫した思いこそが、下に引きずられる引力の正体なのかもしれない。これは何もJ3だけでなく、名門と言われながらJ2からJ1に戻れないクラブにも当てはまるだろう。

 クラブは生き物で、勢いが出るものだ。

 今シーズンのJ3も、首位に立っているのはJFLから昇格したブラウブリッツ秋田である。同じくアスルクラロ沼津もリーグ最多得点で勢いを感じさせ、天皇杯ではJ2京都サンガを撃破し、J1横浜F・マリノスに食い下がるなど存在感を見せている。一方、”降格組”の富山、栃木は昇格圏内にいるものの、鳥取は下位に沈んでいる。

 では、北九州は勢いをつかめるか。GK山岸範宏、FW平井将生のように、A代表や年代別での日本代表歴のある選手も擁する。この日、決勝点を叩き込んだ池本友樹は、J3得点王争いで2位につけている。J3最高の戦力を揃えたと言っていい。今のところ思うような結果がついてきていないが、もし苦しい戦いを勝ち抜くことができたら──。


 一昨年のツエーゲン金沢、昨年のレノファ山口、町田ゼルビア。昇格したチームはそのシーズン、J2で存在感を示している。それはJ3での熾烈な争いで勝ち上がって、力をつけた証拠と言えるだろう。そして今シーズンJ3からJ2に復帰した大分も、J1昇格を狙えるポジションにいるのだ。

「どんな状況でも勝ち点3を取れたのはよかった。(後半戦に向けては)競争の中でレベルアップできるようにしたいです」

 北九州の原田監督は試合後に語った。もう一度、這い上がるには、自分たちのエネルギーを最大限に燃焼させるしかない。