2017年のメジャーリーグはシーズン後半戦へと突入しました。地区優勝争いが激化するに伴い、プレーオフ進出を視野に入れた球団は新たな戦力を補強すべく、7月31日のトレード期限に向けて水面下で交渉を進めている時期でしょう。

 シーズン前半戦を振り返ると、日本人メジャーリーガーの活躍は例年と比べ、日本のメディアで大きく話題になることが少なかったように感じます。ただ、日本人メジャーリーガーの評価が揃って悪いわけではありません。

 まず、現地で変わらず高評価を得ているのは、テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有投手です。今年は4度目のオールスターに選出されたように、その実力の高さには他球団も一目置いているのは間違いありません。シーズン前半戦は6勝8敗と負け越してしまいましたが、防御率3.49はア・リーグ9位。投球回数5位(118イニング3分の2)、そして奪三振数3位(125個)と、いずれも上位の成績でシーズンを折り返しています。

 なかでも特筆すべきは、WARの数値の高さでしょう。WARとはセイバーメトリクスによる選手の総合評価指標で、各ポジションの平均選手と比べてその選手がどのくらいチームの勝利数を上積みしたかを示す値です。

 ア・リーグ先発投手のWARを見てみると、1位はカンザスシティ・ロイヤルズのジェイソン・バルガス。オールスターまでにリーグ最多の12勝を挙げ、防御率2.62もリーグ1位でした。2位はボストン・レッドソックスのクリス・セール。前半戦だけでリーグトップとなる178奪三振を記録し、今年のオールスターでは昨年に続いて先発投手を務めました。

 そして3位に食い込んだのが、ダルビッシュ投手です。前半戦の投手3冠を占めた両投手に次ぐWARを記録しているので、ダルビッシュの評価はア・リーグの先発投手全体で上から3番目と言っても過言ではないでしょう。

 今シーズンは右ひじのトミー・ジョン手術から復帰してフルシーズン1年目。好投が勝敗に結びつかない試合が続いていますが、アメリカでは勝ち星だけですべてを評価することはありません。レンジャーズのGMはトレードを否定していますが、ア・リーグ西地区4位(47勝50敗)というチーム状況なだけに、他球団との交渉が一気に加速する可能性は十分にあります。

 7月22日現在、ダルビッシュ投手は21試合に先発し、そのうち15試合でクオリティスタートを記録。ア・リーグ最下位のチーム打率.236と奮わないレンジャーズ打線を背負いながら、常に安定したピッチングを続けるエース右腕の去就にも注目です。

 一方、調子の上がらないチームで孤軍奮闘しているダルビッシュ投手と対照的に、圧倒的な強さで邁進するチームで健闘している日本人メジャーリーガーもいます。それが、ロサンゼルス・ドジャースの前田健太投手と、ヒューストン・アストロズの青木宣親選手です。

 今シーズン、前田投手は開幕2戦目の先発を任されました。つまり、エースのクレイトン・カーショウに次ぐ先発2番手という評価です。昨年メジャー1年目で16勝をマークした期待の表れでしょう。

 ところが10試合の先発で4勝3敗・防御率5.16と精彩を欠き、6月上旬には先発ローテーションから外されることになりました。その後、ふたたび先発に戻るものの、シーズン前半戦の成績は16試合のうち14試合に先発し、7勝4敗・防御率4.38。先発投手として6イニング以上投げたのは3度だけという、少し物足りない内容でした。

 しかしながら、前田投手の置かれている状況は、他のチームと事情が異なります。今シーズンのドジャースは球団史上最高レベルの快進撃を続けており、シーズン前半戦はメジャートップの61勝(29敗)をマーク。オールスターまでに60勝に到達したのは、ドジャースの長い歴史のなかでも3度目の快挙です。現在も67勝31敗・勝率.684でナ・リーグ西地区を独走しています。

 前半戦で特筆すべきは、投手陣の活躍ぶりでしょう。メジャー1位のチーム防御率3.16をはじめ、WHIP(1.13※)や被打率(.226)など、いずれも投手力を示す部門でトップの数値を記録しています。

※WHIP=被安打数と与四球数(与死球数は含まない)を投球回数で割った数字で、1イニングあたり何人の走者を出したかを示す数値。

 なかでも目立っているのは、リリーフ陣です。抜群の安定感を誇り、リリーバーの防御率2.88はナ・リーグ2位のシカゴ・カブス(防御率3.50)を大きく引き離すダントツの数値。先発陣が長いイニングを投げる必要もないほどリリーフ陣が磐石なので、前田投手が余裕をもって投げていても5回途中で降板させるケースもありました。

 今年のオールスターにも、ドジャースからはピッチャーが3人も選出されています。現在リーグトップの15勝(2敗)で勝ちまくっているクレイトン・カーショウ、11勝1敗と絶好調のアレックス・ウッド、そして4勝0敗・防御率0.88と驚異の成績でリーグ2位の24セーブをマークしているケンリー・ジャンセン。今シーズン、ドジャースは伝統の投手王国を見事に復活させたと言えるでしょう。

 7月19日のシカゴ・ホワイトソックス戦に先発した前田投手は、5イニングを5安打・1失点で守り抜き、今シーズン日本人最多となる8勝目(4敗)をマークしました。ドジャースも今季最長となる11連勝。最強投手陣の一員として勢いを止めずにコンスタントに投げているだけでも、前田投手はもっと評価されるべきだと思います。

 そして、アストロズでプレーしている青木選手も、前田投手と同じような環境のなかで大健闘しています。今シーズン前半戦のアストロズはドジャースに次ぐメジャー2位の60勝(29敗)をマーク。驚異的なペースで勝ち星を積み重ねており、ア・リーグの他球団と比べるとその差は歴然です。現在、アストロズの成績が65勝32敗・勝率.670に対し、2番目の勝ち星を挙げているのはボストン・レッドソックスの55勝44敗・勝率.556。まさにぶっちぎりの勝率です。

 投手陣の光るドジャースとは対照的に、アストロズの強みは打撃陣です。574得点、987安打、215二塁打、161本塁打、打率.291、OPS(出塁率+長打率).858はいずれもメジャートップ。打撃部門を総ナメにし、1試合平均5.92得点と、毎試合ほぼ6点も奪っている強力打線なのです。

 オールスターのア・リーグ先発ラインナップにも、1番から5番までに3人のアストロズ選手が名を連ねていました。1番ホセ・アルトゥーベ、4番ジョージ・スプリンガー、5番カルロス・コレア。ア・リーグの屈強なスラッガーたちを差し置いて上位打順を占めるほど、今年のアストロズ打線は群を抜いているのです。

 アストロズの強さは、下位打線をみればわかります。控え選手にもレギュラー級の実力者を擁しており、7番から9番の下位ですら打率3割前後を叩き出しています。元横浜DeNAのユリエスキ・グリエルですら7番や8番なので、このメンツで青木選手が出場しているだけでもすごいことだと思います。

 今シーズンの青木選手は主に9番打者として、シーズン前半戦は61試合に出場して打率.264・1本塁打・12打点・5盗塁という成績でした。現在ヒットの数は50本で、今年はシーズン100本に届かないかもしれません。ただ、与えられたチャンスを確実にモノにしている青木選手は、快進撃を続けるアストロズの勝利に大きく貢献しています。

 ドジャースとアストロズ。圧倒的な勝率を考えれば、今年のワールドシリーズがこの2チームになる可能性も十分にあるでしょう。投手王国ドジャースでローテーション入りしている前田投手と、超強力打線アストロズでラインナップに名を連ねている青木選手。トレード期限が近づき、ダルビッシュ投手の話題ばかりが先行していますが、常勝チームで奮闘しているふたりの日本人メジャーリーガーにも注目してほしいと思います。