シリーズ・部活の現場に行ってみた!(3)
初のインターハイに挑む東海大相模サッカー部

 7月29日に開幕を迎える高校サッカーインターハイ。各地の予選を勝ち上がった強者たちが最終調整に入る中、インターハイ初出場となる東海大相模も”ジャイアントキリング”を狙って牙を研いでいる。

 高校野球で有名な東海大相模は、サッカーでも全国屈指の激戦区である神奈川県で急速に力をつけてきた新鋭だ。約180人の部員はいくつかのチームに分かれ、そのトップチームは昨年、神奈川県U−18サッカーリーグの1部(K1リーグ)に昇格を果たした。そのK1リーグでは、10節を終えた時点で首位。リーグ真っ只中に行なわれたインターハイ予選も、前年覇者の横浜創英を破るなど、堂々の1位で全国への切符を手にした。

 チームの強化を語る上で、4年前に完成した人工芝のグラウンドは外せない。チームを率いて7年目になる有馬信二監督も計画の実行委員に加わり、「マンチェスター・ユナイテッドの練習場と同じ人工芝です」と胸を張るグラウンドには、熱を吸収するチップとクッション性のあるパッドが敷かれている。

 整った環境で練習ができることが認知され、有馬監督の就任時に約80人だった部員は年々増加。有望選手の入部も増え、徐々にチーム力を上げていったが、有馬監督は今年のチームについて「スピードと勝負強さが例年とは違う」と評価する。

「単純に足が速い選手も多いんですが、それよりもプレーの判断が速いことが強みですね。うちが実践しているのはポゼッションサッカー。なるべく少ないタッチでボールをつなぐことを徹底しているので、判断が遅れるとチャンスを逃したり、逆にピンチを招いたりすることにつながりますから。

 この考えはずっと変わらないんですが、今のチームは加えて、接戦をモノにできる力もあります。格上のチームにも臆さずに立ち向かい、ここぞという時に結果を出せる。K1リーグで厳しい戦いを経験しているので、同点やビハインドの場面でも、選手たちが焦ることはありません」(有馬監督)

 実際に、県予選3回戦の弥栄との試合は、後半アディショナルタイムで2−2の同点に追いつき、延長に入ってからの2ゴールで突き放した。同じくインターハイ出場を決めていた日大藤沢との決勝でも、やはりアディショナルタイムの劇的な決勝弾で勝利している。

 接戦に強いからといって、守備重視の戦略を採っているわけではない。有馬監督の長男で、中盤のレギュラーとして活躍する有馬和希(2年)が「父、いや、監督からは『攻撃では、リスク覚悟で得点を狙いにいけ』と常に言われています」と明かす通り、インターハイ出場がかかった湘南工大附との準決勝では、5点を奪って大勝した。

 その試合では、東海大相模の「層の厚さ」が活きた。2−0とリードした後半途中からピッチに送られた3年生の3選手が、疲れの見える湘南工大附を翻弄。多くのチャンスを演出しただけでなく、それぞれ1ゴールずつを決めて勝利を決定づけた。

「3人ともスピードがあり、得点能力に長けた選手。スタメンで出ても十分にやってくれますが、途中出場のほうがプレッシャーを与えることができます。言うなれば、”適材適所”ですかね。疲労が溜まっているところでチームの圧力が増すわけですから、相手にとっては嫌だと思いますよ」(有馬監督)

 180人に及ぶ部員たちを指導するのは簡単ではないが、3人のコーチと共に練習を見ることでカバーしている。選手ひとりひとりの調子や特長を見極め、情報を密に交換することでトップチームに起用する選手を選んでいく。

 また、選手の能力に応じたコンバートも積極的に行なう。主将で守備の要となっているCBの水越陽也は、もともとボランチやトップ下でプレーしていた。しかし、今の2年生に中盤で力を発揮する選手が多いのに加え、有馬監督の「水越は空中戦が強く、ミスが少ない。フィードも正確で最終ラインからビルドアップできる」という狙いから、ポジションを変更。当の水越は、そのコンバートをすんなり受け入れられたという。

「コンバートの際に監督に何かを言われたわけではないですが、やるからには結果を出そうと思いました。もうひとりのCBも元はFWの選手ですし、チーム力を上げるための変更ですからね。自分が希望とは違うポジションに移っても不満を言う選手はいません。任されたところで実力を発揮できる選手ばかりです」(水越)

 交代選手の起用やポジション変更を柔軟に行なう有馬監督だが、”エースストライカー”に関しては「1度決めたら代えない」という信念がある。

 現在、エースを担うのは3年の井上蔵馬。インターハイ予選の準決勝では先制点を決めてチームを勢いづかせ、決勝でのアディショナルタイムのゴールも井上の右足から生まれた。

 有馬監督は井上を「ネイマールのようなプレーをする」と賞賛する。監督自ら中学にスカウトに訪れて熱烈な勧誘を行なったほどの逸材だが、先輩のエースストライカーの壁に阻まれ、2年生になってもトップチームでの出番に恵まれなかった。

 井上は「同年代で試合に出ている人もいたので、正直、悔しさはありました」と当時を振り返ったものの、そこで腐ることはなかった。有馬監督は、井上をあえて県の3部リーグに参戦する下のチームで試合に出し、実戦経験を積ませたのだ。

「そこで点を取っていましたし、『自分たちの代になったらやってやろう』と気持ちを切り替えることができました。常に自信を失うことなく準備できていたのが、今の結果につながっていると思います。トーナメント形式の大会では、1試合1点を目標にしているので、インターハイでも勝利につながる点を取っていきたい。それが僕の役割ですから」(井上)

 試合を重ねるごとに成長する東海大相模は、インターハイの初戦で北海道大谷室蘭と対戦する。有馬監督は「うちのよさが出せれば十分にチャンスがある」と述べたが、勝ち進めば同じブロックには前橋育英、青森山田、東福岡といった強豪たちが控えている。

 しかし、主将の水越は「出るだけでは意味がない。”初出場”で終わるのではなく、そこに”初優勝”という文字を加えたいです」と力強く語る。その言葉通りに、センセーションを巻き起こすことができるか。黄色と黒のユニフォームを身にまとった東海大相模イレブンが、初の全国の舞台で快挙達成に挑む。