前評判どおりに強豪校が凱歌を響かせるのか、それとも新興勢力が新たな歴史を刻むのか――。

 宮城県で開催される全国高等学校総合体育大会(以下、総体。通称インターハイ)。都道府県の代表55校(北海道、宮城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府の代表は2校)が出場するサッカー競技は7月29日に開幕し、8月4日に決勝戦が行なわれる。

 通常より短い35分ハーフ(決勝以外は延長戦なしの即PK戦)で行なわれるとはいえ、炎天下の中での戦いは実に過酷だ。しかも、最後まで勝ち上がれば、1回戦から決勝までの最大6試合を7日間で消化するハードスケジュールとなる。気力と体力がなければ、頂点に立つことはできない。

 さて、今年は各地で有力校が順当に出場権を獲得し、全国大会に駒を進めてきた。そのなかで優勝候補に挙げられるのは、昨年の高円宮杯U−18チャンピオンシップを制し、高校選手権でも悲願の初優勝を遂げた青森山田(青森県)に、選手権準Vの前橋育英(群馬県)、そして昨年の総体覇者である市立船橋(千葉県2)と、一昨年の総体と選手権の二冠に輝いた東福岡(福岡県)の4校だ。

 そのうち、全国大会の冬、夏連覇を狙う青森山田がV候補の筆頭であることは間違いない。昨年からレギュラーとして活躍してきたU−18日本代表のMF郷家友太(ごうけ・ゆうた/3年)と、主将のDF小山内慎一郎(おさない・しんいちろう/3年)が攻守の要となり、ふたりを中心にして今年もハイレベルなサッカーを展開する。

 さらに、この春先には柏レイソルU−18からU−18日本代表のFW中村駿太(なかむら・しゅんた/3年)が加入。前線の核として存在感を増しており、攻守に隙のない陣容は昨年のチームと比べても見劣りしない。それほど充実した戦力がそろっているだけあって、高円宮杯U−18プレミアリーグEAST(※)でも現在2位という好結果を残している。
※高校とクラブなど第2種登録チームのすべてが参戦し、ユース年代のトップを決めるリーグ戦。最高峰のリーグは『プレミアリーグ』と呼ばれ、EAST10チーム、WEST10チームで争われる。その下のクラスに、各地域(北海道、東北、関東、北信越、東海、関西、中国、四国、九州の9地域)ごとに行なわれている『プリンスリーグ』がある。

 ただし、青森山田のブロックには、先述したV候補の東福岡と前橋育英が控えている。順当なら、2回戦で東福岡と、3回戦で前橋育英とぶつかることになる。その壁を破るのは、決して容易なことではない。

 東福岡は今年も豊富なタレントをそろえ、覇権奪回を虎視眈々と狙っている。中心となるのは、U−20日本代表候補のDF阿部海大(あべ・かいと/3年)と、大会屈指の技巧派アタッカーであり、主将を務めるMF福田湧矢(ふくだ・ゆうや/3年)。それぞれ、複数のJクラブが注目している逸材だ。

 その他、脇を固める人材も粒ぞろい。自慢の攻撃力が爆発すれば、最大の激戦区を突破する可能性は十分にある。青森山田、前橋育英といった難敵を打ち破れば、一気に頂点が見えてくるだろう。

 前橋育英は、1月の選手権決勝で涙を飲んだ面々が多く残っていて、経験値の高さでは他の追随を許さない。その分、選手の質が高く、とりわけ最終ラインの顔ぶれは豪華だ。

 すでにJ1のアルビレックス新潟入りが内定している左サイドバックの渡邊泰基(わたなべ・たいき/3年)をはじめ、U−18日本代表のDF松田陸(まつだ・りく/3年)、フィード力に優れたDF角田涼太朗(つのだ・りょうたろう/3年)と皆、昨年から主軸を務め、安定した守備力を誇る。

 強力な最終ラインを後ろ盾にした、前線の戦力も魅力的だ。中盤には洗練された技術が光る双子、田部井悠(たべい・ゆう/3年)と田部井涼(たべい・りょう/3年)が君臨し、最前線には高校選抜のFW飯島陸(いいじま・りく/3年)が構えている。そんな攻守に多彩な人材をそろえた「上州のタイガー軍団」を、優勝の最有力候補に挙げる声も少なくない。

 これら「3強」以外では、米子北(鳥取県)、京都橘(京都府)、昨年の準優勝校である流通経済大柏(千葉県1)あたりが同じブロックでは有力。「3強」が潰し合って消耗するようなことがあれば、代わって決勝まで駒を進めてもおかしくない。

 一方、「3強」とは逆ブロックに入った前回王者の市立船橋。春先からメンバーを固定できず、「(チーム作りは)予想以上に苦しんだ」と、指揮官の朝岡隆蔵監督は語る。それでも、ここに来てメンバーも固まりつつあり、チーム力も日に日にアップしている。夏の大一番を前にして、そこで戦えるチームをきっちり仕上げてくるあたりはさすがだ。

 チームの軸となるのは、J2のジェフユナイテッド千葉入りが内定しているU−20日本代表のDF杉山弾斗(すぎやま・だんと/3年)と、U−17日本代表で昨夏大ブレイクしたアタッカーのMF郡司篤也(ぐんじ・あつや/2年)。彼らを中心にして、今年も市立船橋らしい組織的な守備と攻撃を見せる。

 抜群の攻撃力を持つ昌平(埼玉県1)や、U−18日本代表のFW高橋大悟(たかはし・だいご/3年)を擁する神村学園(鹿児島県)なども好チームだが、伝統的に引き継がれてきた”勝負強さ”では市立船橋が一枚上。連覇を狙う同校が、順当に決勝まで勝ち進んでいくのではないだろうか。

 無論、勝負事には「絶対」はない。厳しい暑さの中、35分ハーフなどの特異なレギュレーションによって、総体では波乱が起こりやすい。V候補に挙げた4校も足をすくわれる可能性は大いにある。予想もしなかった高校の台頭があっても不思議ではない。

 また、選手個人にしてみれば、ここで活躍することによって、未来を切り開くチャンスとなる。昨年も数多くの選手が総体で好プレーを披露し、世代別の代表入りやプロ入りを決めた。これまで無名だった選手が台頭するなど、新たなスター選手の登場も期待したい。

 今年の総体は注目度の高い有力校、選手が評判どおりの結果を残すのか。はたまた無名校の躍進、無名選手の思わぬブレイクが見られるのか。若き精鋭たちが奮闘する真夏の熱き戦いから目が離せない。