夏の北海道シリーズも舞台は札幌競馬場へ。開幕週のメインを飾るのは、牝馬限定のGIIIクイーンS(7月30日/芝1800m)だ。

 今年は、古馬牝馬の「春の女王決定戦」となるGIヴィクトリアマイル(5月14日/東京・芝1600m)を制したアドマイヤリード(牝4歳)と、3歳の「マイル王決定戦」GINHKマイルC(5月7日/東京・芝1600m)を快勝したアエロリット(牝3歳)の、2頭のGIウイナーが出走予定。これほどの実績馬が出走するのは珍しく、人気もこの2頭に集中しそうだ。

 では実際に、レースもこのGI馬2頭であっさり決まってしまうのか。現地・札幌入りして取材中のスポーツニッポンの村松由季子記者はこう語る。

「毎年、いかにも夏のGIIIといったメンバーで、頭数もそんなに多くはならないのですが、今年はGI馬2頭を中心になかなかいいメンバーがそろいました。ただ、洋芝で、開幕週という特異な状況だけに、ひと筋縄ではいかないとも考えています」

 村松記者はGI馬2頭にも付け入る隙は十分にあるという。そして、こう続けた。

「アドマイヤリードは、力は断然だと思う反面、洋芝が初めて。しかも、脚質的に小回りの開幕週が課題となります。アエロリットも、初の古馬相手。さらに、初距離、初の洋芝と”初物づくし”なのは気になるところです。もちろん、それらの課題をクリアしてここで結果を出すようなら、ともに秋に向けて視界は良好と言えます。

 ですが、かなりの人気を背負うでしょうから、心配材料があることを考えれば、他の馬に食指が動きます。2頭の前で競馬ができるクロコスミア(牝4歳)を狙ってみたいです」

 クロコスミアは、昨年のGIIローズS(2着。阪神・芝1800m)でも果敢に先行。最後はオークス馬のシンハライトにハナ差かわされたものの、”あわや”というシーンを作り出した。

「実際に馬の状態を見ても、滞在競馬が合っているようで、馬体重410kg前後の小さな馬にもかかわらず、そこまでの小ささを感じません。北海道の洋芝にも実績があり、前走でも函館の1000万条件・北斗特別(6月18日/芝1800m)を完勝。時計がかなり速い特殊な馬場だったといえ、レコード勝ちと目下の充実ぶりを感じさせます。

 その前走後は、短期放牧に出て7月8日に入厩。ここまで順調に来ています。昨年のローズSのような力のいる馬場にも対応できますし、人気2頭がけん制し合うようなら、この馬がひと泡吹かせるかもしれません」

 同じく札幌で取材するスポーツ報知の石野静香記者は、昨年のGI秋華賞(京都・芝2000m)で2着に入ったパールコード(牝4歳)を推す。

「(パールコードは)重賞で勝ち負けできる力がありながら、もうあと一歩というところで勝てないでいる。陣営としても、(勝利へ)何が足りないのか、貪欲に模索しているみたいです」

 事実、パールコードは前走、地方の交流重賞であるマリーンC(5着。4月12日/船橋・ダート1600m)に出走。初のダート戦に挑むなど、あらゆる可能性を探っているようだ。

「前走のダート戦参戦も、足りない”あと一歩”を補う狙いがあったようです。結果は5着。力を出し切れなかったのは、道悪のうえに、内で包まれたことが影響したのでしょう。芝に戻る今回、人気を落とすようなら、絶好の狙い目。今春、海外GIのドバイターフを勝った秋華賞馬ヴィブロスとの力関係(秋華賞ではコンマ1秒差)から見て、勝機は十分にあります。

 今回も、鞍上には川田将雅騎手を早くから確保。洋芝は初めてですが、担当の片山裕也助手は『試せるものは、全部試したい』と話していて、きっかけひとつで”大化け”する可能性があります。ここで秘めた素質が開花するのか、期待が膨らみますね」

 ところで、クイーンSをデータ的に見るとどうなのか。

「過去10年で1番人気は、3勝、2着4回、3着1回、着外2回。2011年以降は、6年連続で馬券圏内に入っていて信頼度は高いです。一方で、6番人気以下が必ず1頭は馬券に絡んでいて、昨年も1着=9番人気、2着=1番人気、3着=11番人気での決着。上位人気だけでは決まらないのが、このレースの特徴です」

 そう言って傾向を説明してくれたのは、勝馬・南関東版の豊岡加奈子記者。メイン担当は地方競馬の南関東となるが、毎年『中央競馬 重賞競走データBOOK』(にちぶんMOOK)の執筆もしていて、中央競馬におけるデータには精通している。

「意外に穴をあけるのが、”母父サンデーサイレンス”の血統。過去10年で21頭出走し、4勝、2着4回、3着1回、着外12回の成績を残しています。2013年には8番人気のスピードリッパーが2着、2014年には6番人気のアロマティコが2着、2015年には7番人気のメイショウスザンナが勝利するなど、人気薄でも上位入線を果たしています。

 今年は2頭の該当馬が出走予定で、そのうち注目はトーセンビクトリー(牝5歳)。前走のGIIIマーメイドS(6月11日/阪神・芝2000m)では、1番人気で9着と人気を裏切る結果となりましたが、2000mより実績のある1800m戦へと条件が変わるのはプラスとなるはずです。

 別定戦のため、斤量55kgの馬が最も多いということもあるのですが、実は2013年から4年連続でその55kgの馬が1〜3着を独占しています。そして、2014年以降はすべて関西馬。そうした点でも、トーセンビクトリーは合致します。

 コース適性も加味するなら、シャルール(牝5歳)も要注意です。近走成績は不振が続いていますが、昨年の2着馬で、札幌コースでは1勝、2着3回と連対を外していませんからね」

 シャルールについては、石野記者も気になるという。

「2014年に札幌でデビュー勝ちしたときに現地で取材していまして、そのときの強さが印象に残っています。最近は結果が出ていませんが、昨年もヴィクトリアマイルの大敗(18着)から得意の舞台で巻き返しました。軽視は禁物だと思います」

 まさにひと筋縄でいかない真夏の牝馬決戦。ここは、気まぐれな”乙女たち”の気持ちもよくわかるであろう、競馬メディアを代表する女性記者たちの視点を信じたほうがいいかもしれない。