7月14日からハンガリーのブダペストで開催されている世界水泳選手権。23日から行なわれている競泳競技では、男子50m平泳ぎでアダム・ピーティー(イギリス)が2度世界記録を更新するなど、”記録ラッシュ”が続いている。

 日本競泳陣も、24日の女子200m個人メドレーで日本新記録を更新した大橋悠依が、2分07秒91のタイムで銀メダルを獲得した。そんな、コンマ数秒を争う選手たちの戦いを支えるのは、常に進化を続けるさまざまなハイテク計時システムだ。

 競泳競技が始まる前日の22日、この大会のオフィシャルタイムキーパーを務めるオメガが、メディアを対象に”タイムキーピングツアー”を開催した。

 オメガが競泳のタイムキーパーを務めるようになったのは、1932年ロサンゼルス五輪から。当時は計時係員がストップウオッチを持ってタイムを計測し、着順判定も目視で行なわれていた。

 そのシステムが大きく変わったのは1967年だった。1960年ローマ五輪で、目視での着順判定が激しい論争になったことから、オメガはタッチパッドシステムを開発した。これは、泳いできた選手がパッドに1.5〜2.5kgの圧力をかければタイマーが止まるというシステム。計時競技では唯一、選手自身が時計を止める装置になる。

 近年では、ゴールのタッチパネルとスタート台を映すハイスピードビデオカメラが4台設置されている。その映像を、微妙な着順判定やリレー種目での違反スタートの判定などに審判が活用するなど、判定の厳格性にも大きく貢献している。

 また、スタート台も大きく改良されてきており、リアクションタイムも足が離れた瞬間に計測を開始することが可能になった。スタート合図のシステムも小型のパネルとなり、コールの音声とスタートのブザー音を各スタート台の下に内蔵したスピーカーから出すことで、レーンによってのタイムラグが生まれないようになっている。スタート台に関しては、足を置いて蹴るためのスターティングブロックや、背泳ぎのスタートのための着脱式装置も開発し、競技性を高める改良も行なっている。

 一方の計時システムは、非常にコンパクトながら100万分の1秒単位での計測ができる、最新の「クァンタム・アクアティクス・タイマー」を導入。数値を保存するだけではなく、瞬時にデータとして世界中に配信できるようにもなっている。

 競技中は、アリーナの天井に設置された3台のビデオカメラが、選手たちの泳ぐ姿を撮影。その映像データはライブでパソコン上に写し出される。頭部は黄色、指先は緑のラインで示され、各選手の差だけではなく、それぞれの泳速も瞬時に測定されてテレビ放映のデータなどに活かされている。800mや1500mなどの長距離選手の心理的負担を軽減させるために、各レーンとも50m折り返しの5m前の水底にはラップカウンターも設置されている。

 そんな競泳のタイム計測だけではなく、この大会でオメガは飛込みやシンクロナイズドスイミング、オープンウォーターでも記録の集計や即時のデータ配信などを行ない、大会のスムーズな運営にはなくてはならない存在になっている。

 このタイムキーピングツアー後には、世界選手権の恒例でもあるオメガ主催のメディアレースも開催された。各国のメディア関係者が実際にメインプールを泳ぎ、導入されているハイテクシステムを身をもって体験。27日には、国際水泳連盟や大会組織委員会、テレビ局などのチームが参加する混合4×50mフリーリレーが行なわれ、テレビ朝日チームで出場した松田丈志や北島康介が、”かつての戦場”で現役スイマーに負けない泳ぎを披露した。

 連日、熱いレースが続く世界水泳。選手たちの力強い泳ぎはもちろんだが、そのレースを支えているシステムにも、ぜひ注目してもらいたい。