17歳、池江璃花子(ルネサンス亀戸)の世界水泳が終わった。個人戦4種目、リレー3種目で、予選からを合わせると13レースに出場し、本来の力を発揮できずに、メダルなしという結果に終わった。

 しかし、大会競技開始前日には、明るい表情でこんな風に状態を話していた。

「ブダペストに入ってからは気持ちも調子も上がってきています。今思うと何で不安だったのかわからないくらいなんです」

 池江にとって最もメダルに近い女子100mバタフライは、競泳初日の最初の種目。その予選では、「前半からいった」と、57秒45で全体4位通過を果たした。

 見る限り、リラックスした余裕のある大きな泳ぎだった。

「隣を見ながら泳ぐ癖があるので、4レーンのケイシー(・ウォレル/アメリカ)が出ているのを見て、ちょっと焦って体が固まってしまった」と説明するが、前半の折り返しは4番手ながら、終盤に追い込んで順位を上げるとウォレルに次ぐ2位でゴール。レース後は「リオ五輪も予選は前半を突っ込んで泳いで、準決勝は前半を抑えて後半で勝負し、決勝は両方合わせるようにしたので……。今回もそういう形にしたいと思っています」と話した。

 その準決勝は「自分では抑える感じで泳いだ」とはいうが、前半は26秒77と自身が持つ日本記録のラップタイムより0秒04速かった。結果は日本記録に迫る56秒89で、またしても全体4位通過。

「ターンのタッチが少し合わなかったけど、それさえ合えば自己ベストは出たんじゃないかと思います。ゴールしてタイムを見た瞬間は『あとちょっとだったな』と……。悔しいというより『これなら(自己ベストは)絶対に出るな』と思いました。気持ちとしてはだいぶ抑えて泳いだけど、前半からけっこういいタイムで泳げたので、感覚としてはいいと思います」と明るい表情で話し、メダル獲得への意欲を高めていた。

 だが、24日の決勝ではその狙いが狂ってしまう。前半のストローク数はこれまでと変わらず18で、動き自体も準決勝と同じように見えたが、折り返したタイムは予選より遅い27秒03で最下位。そこから終盤にかけて追い上げたものの、ふたりかわすのが精一杯。後半の50mは準決勝より0秒07速い30秒05だったが、ゴールタイムは57秒08で6位にとどまった。

「自分のバタフライの持ち味は後半にあるので、前半は自分のペースで泳いで後半上げていこうというプランだったけれど、なかなかうまく上がってこなかった。ターンをして浮き上がった時は(2位の)エマ・マキオン選手(オーストラリア)が近くに見えたので、『頑張ればいける。メダルを獲りたい』と思って泳いでいました。最後は『動く、動く』と自分に言い聞かせながら泳ぎ切りましたが、自己ベストも出なかったし、ヨーロッパグランプリの時から意識していた7レーンの韓国のアン選手にも負けたのがすごく悔しい。やっぱり実力不足だなと思いました」

 準決勝までの「いける!」という自信とタイムのギャップが、「着実に泳いでメダルを狙いたい」と考えた決勝では足かせになってしまったのだろう。

「決勝はタイムとどんな気持ちで泳ぐかを重視したい」と話していた池江だが、今回の100mバタフライの決勝は、狙って泳ぐことの難しさを味わうレースになった。

 その後は100m自由形に出場して予選敗退、4×200mリレーでは日本記録での5位入賞に貢献した。28日には、池江にとってもうひとつのメイン種目で、今季世界ランキング2位で臨む50mバタフライに出場。予選は25秒72で3位通過と、メダル獲得への可能性を感じさせる泳ぎを見せた。しかし、世界記録保持者のサラ・ショーストロム(スウェーデン)の隣で泳いだ午後の準決勝では、精彩を欠く動きで伸びず、25秒90の13位で決勝進出を逃してしまった。

「100mバタフライの時はメダルを獲りたいという気持ちと、『やっぱり獲れないのでは』という不安が混ざり合って、不安の方がすごく大きかったのですが、今日の準決勝はけっこう自信を持って入場することができました。でも、いざ泳ぎ出したら、すごく緊張して体がガチガチになったので、思った以上に詰まった泳ぎになっていたんじゃないかと思います」

 100mバタフライとともに、精神面でのタフさの必要性を思い知らされる結果になった。

 それでも、最後の個人種目だった29日の50m自由形は予選を16位で通過し、準決勝でも順位は上げられなかったがタイムを上げた。さらに、この日の最終種目であるミックス4×100mリレーにも志願して出場し、3泳を53秒50のラップでアンカーの最後の五十嵐千尋(日体大)につないで、この大会すべてのレースを終えた。

「4継の1泳でも、個人種目の100m自由形でもなかなか53秒台が出ていなかったので、リレーの引き継ぎではありますが、ここで53秒台が出たのはうれしかったし、チームに貢献できたという実感がわいた。途中はすごく苦しかったり、悔しかったりでしたけど、最後がよかったので、本当にいい経験がたくさんできた、いい大会になったと思います」

 ただし、50mバタフライと50m自由形に関していえば、ともに自己記録に届いていれば決勝進出はできていた。多種目に出た疲労はあったに違いない。それでも、自己ベストがひとつも出なかったというのは、大きな課題でもある。池江はそのことについてこう話す。

「去年のリオ五輪は12レースに出て、今回はそれよりも1レース多い大会でした。それがタフだったかと言えば、そうではなかったと思います。すべての種目で決勝に進むとか、自己ベストを出せれば、タフさや達成感を得られるのだと思います。サラ・ショーストロム選手は本当にたくさんの種目に出て、世界記録を出したりメダルを獲ったりしているのに、それと比べると私はタフでもないし結果も出していない。そういう強い選手を見習って、これから頑張りたいと思いました」

 池江自身、今年はリオ五輪の年のような強化ができてシーズンに臨めたわけではなかった。そんな状況だったからこそ、「これからの最初の課題は、自分が満足するような練習をしっかりやること」と話す。

 池江の言葉からも、悔しい結果が多かったこの世界選手権は “上を見る目”を育てる大会になったと言えるだろう。ここからのさらなる成長が楽しみだ。