第11戦・ハンガリーGP決勝でフェルナンド・アロンソが今季最高位の6位でチェッカードフラッグを受け、ストフェル・バンドーンも10位でフィニッシュし、マクラーレン・ホンダは今季初のダブル入賞を果たした。チームスタッフたちはピットウォールによじ登って彼らを出迎え、この結果に沸いた。

 アロンソもついに手にした好結果に笑顔を見せたが、羽目を外して大喜びするようなことはなかった。

「ペースはとてもよかったし、いいレースだった。だけど、6位というのはリカルド(レッドブル)のリタイアがあったからで、それがなければ7位・8位というのが本来の結果。それも想定していたとおりだよ。今日の僕らにとっては、最大限の結果を手に入れたんだ」

 中団グループのトップである6位を手に入れた。スタートでトロロッソのカルロス・サインツに先行され、密集した集団のなかでピットストップのタイミングが難しく、同時ピットインとなってしまいアンダーカットできなかったが、新品タイヤの威力を使ってアロンソがコース上で抜いて6位を手に入れた。バンドーンもピットストップの停止ミスで6.7秒もの静止時間になっていなければ9位でフィニッシュできたし、前がクリアなときにはアロンソと同等以上のペースで走ることもできていた。

 しかし、レース週末を前に語っていたとおり、3強チームの壁は厚かった。

「努力が報われたことはうれしいが、入賞程度でハッピーとは言いたくない。我々が目指しているのはもっと上なのだから」

 現場のレース運営を担うマクラーレンのあるエンジニアはそう語る。それは、車体性能だけで言えば「3強チームから遠く離れた4番目」ではなく、もっと上だからだ。

「車体性能だけで言えば、今回は4番目よりももう少し上だった。ここではメルセデスAMGがタイヤの扱いに苦労していたからだ」

 では、ライバルたちと比べて車体性能はどんなポジションにいるのか?

 開発の中枢にいるチーフエンジニアリングディレクターのマット・モリスは、ハンガロリンクでのパワーユニットによる不利を次のように説明する。

「ここではフェラーリに対してラップタイムにして約0.6秒、予選モードのメルセデスAMGに対しては約0.8秒の不利を抱えていることになる」

 予選でマクラーレン・ホンダは8位(アロンソ)・9位(バンドーン)というポジションにつけたが、ライバルたちとのタイム差は決して小さくはなかった。アロンソの予選タイムを基準にすると、次のようになる。

【ハンガリーGP予選】
1位:セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)-1.273秒
3位:バルテリ・ボッタス(メルセデスAMG)-1.019秒
5位:マックス・フェルスタッペン(レッドブル)-0.752秒
7位:ニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)-0.081秒
8位:フェルナンド・アロンソ(マクラーレン・ホンダ)1分17秒549
10位:カルロス・サインツ(トロロッソ)+0.392秒
12位:エステバン・オコン(フォースインディア)+0.576秒
15位:ロマン・グロージャン(ハース)+0.852秒
※トロロッソ以下はQ2のタイム差(アロンソ=1分17秒919)

 このタイム差からモリスが言うパワーユニットの差を引けば、車体性能を比較することができる。ルノー製パワーユニットはフェラーリからもやや差をつけられ、20kW(ハンガロリンクで約0.3秒)ほどの差があると言われている。

 これを整理すると、ハンガロリンクでの「車体性能ランキング」は次のようになる。

1位:フェラーリ(-0.6秒)
2位:レッドブル(-0.4秒)
3位:メルセデスAMG(-0.2秒)
4位:マクラーレン
5位:ルノー(+0.3秒)
6位:トロロッソ(+0.7秒)
7位:フォースインディア、ハース(+1.3秒)

 メルセデスAMGのワークスパワーユニットは予選Q3でさらにパワーを引き出しているという説もあり、それを考慮すれば前出のエンジニアの発言のように、ハンガロリンクではマクラーレンMCL32の車体はメルセデスAMG W08と同等だったという見方もできるようだ。ただし、前出のエンジニアが「今週のメルセデスAMGはタイヤの扱いに苦労していた」と語るように、それが本来の速さとは言い切れない部分もある。

 ハンガロリンクでメルセデスAMGが遅く、フェラーリが速かったのにはもうひとつ理由がある。空力効率うんぬんよりも、車体が持つ最大ダウンフォース量が問われるサーキットだったということだ。

「過去2戦のレッドブルリンク(第9戦)やシルバーストン(第10戦)は最大ダウンフォース仕様ではなく、空気抵抗を抑えながらダウンフォースをつけて走るサーキット。パワーがあれば(最高速は犠牲にすることなく)そのぶんだけ空気抵抗が増えても構わないから、それだけダウンフォースをつけることができる。しかし、モナコ(第6戦)やハンガロリンクはマックスダウンフォースだから、ダウンフォース量があればあっただけ速く走ることができる」

 つまり、ただ全開率が低いとかストレートが短いというだけではなく、空力効率よりも最大ダウンフォース量が問われるコース特性がMCL32にとって大きな追い風になったのだ。その点でMCL32はライバルたちから大きく引き離されてはいない。

 マシンのアップデートが着実に進んでいることも、それを後押ししている。

 第4戦・ロシアGPを終えた時点でトップのフェラーリから1.25秒(1周1分33秒のサーキットで1.34%)離されていた車体性能差は、第11戦・ハンガリーGPでは0.6秒(1周1分16秒のサーキットで0.78%)まで縮まってきた。また、第5戦・スペインGPと第6戦・モナコGP、そして細かな改良を経てハンガリーGPでさらに大きなアップデートを投入したことで、MCL32の車体性能は格段の進歩を見せている。

「今回は3段式のTウイング、リアウイングのモンキーシート、ディフューザーなど大きなアップデートを持ち込んできた。それらはすべてきちんと機能しているし、車体の改良はうまく進んでいると言えるだろう」(モリス)

 それに加えて、ホンダも第9戦・オーストリアGPから実戦投入してきたスペック3でライバルとの差を縮めてきた。

 実際のところ、オーストリアでもイギリスでもQ3に進み、入賞するチャンスは十分にあった。結果に結びつかなかったのは、スタート直後のアクシデントやピット戦略ミスなどがあったからで、ハンガリーGPで急に速くなったわけではない。

 ホンダの長谷川祐介F1総責任者は言う。

「ホンダとしては、スペック3でようやく開幕時点にあるべきだった位置まで追いついた、スタートラインに立ったレベルです。スペック3が入ってからは、オーストリアでも十分にチャンスがあったはずなのにポイントが獲れなかったし、イギリスもそれなりにいいペースだったのに獲れなかった。だから今回は絶対に結果につなげなければならなかったし、実力を遺憾なく発揮して、いい結果を掴み取ってくれてよかったと思っています」

 車体性能の向上だけでなく、マックスダウンフォース仕様を使って最大ダウンフォース量が問われるサーキットであったこと、そしてパワー差が出にくいサーキットであったことが絡み合って、マクラーレン・ホンダはハンガリーGPで中団グループのトップというポジションに立った。加えて言えば、車体性能だけを見れば実力はもっと上だ。

 しかし、まだまだ3強との差が大きいことを見せつけられたことも、また事実だ。

 フェラーリと比べれば車体で0.6秒、パワーユニットで0.6秒の差がある。決勝ではステアリングトラブルに苦しみ、ペースが上げられなかったセバスチャン・ベッテルにさえ71秒の差をつけられた。

 中団の雄を目指すのならば、この結果で大満足できる。しかし、それでは優勝はおろか表彰台さえ獲れない。優勝を目指すのならば、アロンソや前出のエンジニアたちが語るように、こんなところで浮かれている場合ではないのだ。

 シーズン後半戦でどこまで巻き返すことができるか。そのためには、車体とパワーユニットの双方がよくならなければならないことが明白になった。

 来季を巡って不穏な噂が飛び交うなかで、この結果を突きつけられたマクラーレンとホンダがどのような決断を下し、後半戦に臨むのか。彼ら双方の賢明な判断と、後半戦の逆襲に期待したい。