なでしこジャパンがブラジル、オーストラリア、アメリカと対戦したトーナメント・オブ・ネイションズが3日(日本時間4日)に全日程を終了し、日本は1分2敗の3位に終わった。

 最終戦となったアメリカ戦の前に行なわれた試合で、オーストラリアが6−1でブラジルを圧勝し、アメリカはすでに優勝を逃していたが2万3千人を超える観衆の前で、そのモチベーションが冷めることは一切なかった。

 立ち上がり15分の猛攻――アメリカと対峙するとき、日本が最初に越えなければならない壁である。フルパワーで先制攻撃を仕掛けてくるアメリカのスタイルは今回も健在していた。アメリカ遠征の集大成とすべく、ベストメンバーで臨んだ日本だったが、抑え切ることができなかった。

 それもそのはず、ピッチに立つ半数以上がアメリカとは初対戦となる。一糸乱れぬ統一感を持てというのは無理な話。それでも何とか食らいついていたが、12分、ロングフィードを受けたクリスティン・プレスが中へ送るとメーガン・ラピノーが鮫島彩(INAC神戸)をフェイントで振り切り先制ゴールを奪われた。

 とはいえ、失点は折り込み済みのところでもあった。日本も阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)から緩急をつけた縦パスが配給され、34分には押し出したボールを田中美南(日テレ・ベレーザ)がワンタッチでGKをかわしてシュートに持ち込む。これはジュリー・アーツに掻き出されてしまうが、惜しい場面だった。

 日本はこの後、60分に宇津木瑠美(シアトル)と北川ひかる(浦和L)の間を崩され、80分には左サイドからの攻撃で2点を失うのだが、そのいずれも途中交代で入ったテイラー・スミスのアシストによるものだった。そのスルーパスを目の当たりにした阪口が「驚愕だった」とこぼすほど、精度の高いボールではあったが、一方で日本が走り込む選手を見逃したり、ボールに行くのか、人に行くのかなど、守備の曖昧さが引き起こした失点でもあった。

 終始縦への展開を意識していた阪口。前の2試合と比べれば、その点では確かに攻撃の推進力は向上した。「最後のところの崩しのアイデアがないことを痛感しました。縦への意識は表現できたところもあったけど、結果0−3ですから。負けたら意味ないです」(阪口)

 大舞台でアメリカと何度も戦ってきた阪口が感じる”差”は、若手よりもある意味大きいのだろう。ボールの奪われ方のマズさからの失点も、「いつも同じことを繰り返している」とこれまでにない厳しい表情を見せた。

 そんな阪口が唯一可能性を口にしたのが櫨(はじ)まどか(伊賀FC)の存在だった。今回初招集された遅咲きの29歳。アメリカに入ってからは、紅白戦で阪口とボランチを組むこともあった。第2戦の残り11分でピッチに投入された際は、右サイドハーフでの起用。そしてアメリカ戦で櫨が掴んだのは、スタメン2トップの一角だった。かねてより高倉麻子監督が試したかったポジションだ。

「めちゃくちゃ緊張しました」という櫨だが、それも前半の途中まで。落ち着いた状況判断で、キープ、ドリブル、パスと的確なチョイスで攻撃に彩りを加えていく。派手さはないが、これまで地道に積み上げてきた経験から、慌てることがない。

 何より、トレーニングで田中と組んだ以外はピッチの面々とは初顔合わせで、阪口からの縦パスを前向きで足元におさめたり、右サイドバックの鮫島とのワンツーパスで突破を試みてみたり、後半に長谷川唯(日テレ・ベレーザ)が入れば、その機動性を生かすべく、すぐさまサポートを切り替えてみたりと、櫨が見せた変幻自在なプレーは今の日本に最も必要とするものだった。

 なかでも横山久美(フランクフルト)との相性はいいようで、互いの距離感には全く違和感がなかった。この日、最大の決定機はこの2人から生まれたもの。横山がDFを引きつけて前線へ送ったボールは櫨の足元に。放ったシュートはわずかに右に逸(そ)れた。

「自分でもあれはないと思います……」と反省しきりな櫨だったが、ボールが懐に入るのを待つのではなく、相手の前で必ず受けに行く姿勢が随所で効いていた。「そういうプレー(をしようと)は決めていました」とは櫨。そんな彼女のプレースタイルと初めて出会った阪口は「櫨となら、自分が追い越して前に出られる気がする」と伸びしろを感じていた。

 1分2敗――対戦相手の実力を考えれば妥当なラインではあるが、その想定範囲を打ち破るプレーというものは少なかった。3ゴール8失点――数字が示す通り失点が多すぎるが、守備については選手が揃い、距離感を整えることである程度までは落ち着かせることは可能だろう。

 失点の場面は元をたどれば、攻撃に転じている際の奪われ方に起因している。問題はやはり攻撃にある。パスの長短、弱さ、トラップ、そのわずかなズレを相手は狙っている。相手がアメリカともなれば、そこから一気にゴール前まで運ばれ、切り替えが同じスタートでは間に合うはずもない。パスの精度を確実に上げていかなければ、返り討ちの失点を減らすことは難しいだろう。

 ここからは、本格的に”なでしこジャパンの攻撃”の色を作っていかなければならない。アメリカやオーストラリアは相手のミスを確実に得点につなげることができ、日本はそれができない。決定力の差はこの部分だけでも歴然としていた。

「いい形を作った場面もありますが、結局フィニッシュを取ることができない。シュートが弱い。身体がブレる。そこはインターナショナルマッチで戦えるレベルではないなと思います」とは高倉監督。個のレベルアップは今までもこれからも求められ続ける。それだけでなく、何かひとつ、これが”このなでしこジャパンのプレーだ”という軸が欲しい。それを体感できれば選手たちの中にあるそれぞれのイメージが統一されていくはずだ。来年に控えたFIFA女子ワールドカップ予選へ向けて、指揮官の”選択”と”落とし込み”の時期に入るが、生みの苦しみはもうしばらく続きそうだ。