園田学園女子大学教授の荒木香織氏は以前、ラグビー日本代表やセーリング・シンガポール代表などの現場で、メンタルコンサルテーションという重要な役割を担った。その仕事のひとつに選手や指導者への自信づけがある。チームの勝利のカギを握る”心理的スキル”をいかにして教示したのか。荒木氏が教えてくれた。

 自信がある選手と、ない選手とがいますが、子供からの成長過程で、周囲が自信をつけるようなことを言ってくれていると違ってきます。引っ込み思案でも、パスやキックなど、スポーツを通じて「できる」という経験を積んでいくと、ピンポイントでコーチから「よかった」と褒められる場面が出てきます。選手が得意なプレーを多用するのは、ピンポイントで褒められた経験が多いからで、それが持ち味にもなります。持ち味を伸ばすのは大切ですよね。

 ただ、結局は自分で自信をつけるしかないんです。「これでいい」という瞬間を積み重ねることが大切で、それが自信になります。あとは、ひとつ、ふたつ学年が上のお兄さん、お姉さんに憧れることも大切です。上級生と同じプレーができたり、チームメイトになったりして憧れが現実になると、確実に自信をつけていくことができるからです。

 もちろん、指導者が何でも褒めればいいわけではありません。成長をきめ細やかに見ることが大切。昨日よりも身体の使い方が上手にできていたら、前よりよくなったね、でも身体の角度をこう変えたらもっともうまくいくよ、というような指導が褒めることなのです。

 さらに、褒めたからといって、その動作を再度繰り返せるとは限りません。選手としては、条件、状況は違うので、もう一回やりたくてもできないことが多い。そこで指導者は、選手の成長を見ながら、プレーがうまくいった、コントロールが上手にできたなどレベルに応じて評価したり、あるいはスムーズにいかなくても取り組もうとした勇気を讃えたりと、褒めるにしても”ポイント”に気をつけること。子供から大人まで、日本代表レベルでもそうですよ。

 自信があるのか、ないのか、それは本人にしかわからないので、私なら、まずはそれを選手に聞きますね。本当に自信がないのか、ただ単に自信がなさそうに見えるのか。だいたいは、本人も何に自信がないのかわからないんですよ。気づいていないので、どこに自信がないのか聞いてあげる。自信とは大雑把な概念なので、具合的に試合や練習のどの場面に対してなのか、あるいはスキルに対してなのか、それとも誰かとコミュニケーションを取ることなのか、を確認していきます。

 自信づけのひとつに「勝利者のように振る舞え」というのがあります。弱そうに見えるチームが勝てるわけがありません。凹んでいて「どうしよう」という選手は下を向いているでしょう。目線、姿勢はチーム、選手のエネルギーの象徴です。試合前、「負けるだろう」と思っているのか、それとも「○○のようなプレーをしよう」と堂々と振る舞って試合会場に入るのか、そこが大切です。実際、私はラグビー日本代表でもそのような指導をしていました。日本人は特に外国人に対するコンプレックスがありましたので。日本代表の選手も一般的には大柄ではありますが、タックルされたら怖いという相談はあります。一番多かったかもしれませんね。身体の大きさ、性別、年齢は関係ありません(笑)。

 選手が試合前に眠れなかったりするのは、自信がないわけではなくて、漠然とした不安があるから。その不安をうまく噛み砕いて解消してあげると不安がなくなります。

 選手からではなく、監督や指導者からも相談されることはあります。相談内容は実は自信がない場合が多くて、大きな試合の前にはビビっていることが多い。監督や指導者だから弱みを見せてはいけないというわけではありません。むしろ不安に気づいて「どうすれば不安を解消できるのか?」と相談してもらえる方がいい。”勝つ”ことにこだわる監督であればあるほど、最後まで詰めたいもの。あれを練習していなかった、あそこを確認していなかった、連絡すべきことを選手に伝えたかどうかなどと、不安になります。メンタルのコンサルテーションとは、常に変わる、それぞれの状況や人に応じてのオーダーメイドのコンサルでもあるんです。

 また、個人競技、チーム競技によっても指導内容は違ってきます。個人競技であればピンポイントで選手の調子を気にするけど、チームスポーツだと逆に一人ひとりへの関心が薄くなりがちです。指導者は自分の戦術、戦略がちゃんと行き渡っているかどうかに関心がある。そうすると「お前ら〜」という全体への指導となり、選手は「俺のことじゃないな」と思ってしまうんです。

 そこでチームのコーチや監督にはなるべく一人ひとりを理解するよう、指導します。「なんでこの選手はミスをするのか?」などと問うと、「元々そういう性質を持った選手だからであって……」と答える。それならば起用しなければいいとなってしまいます。ミスを選手のせいにしないで、自分の判断力と指導力を磨き、ミスをしないトレーニングを積ませてあげられるように練習内容に磨きをかけましょう、と言いますね。