「ポーランド=レバンドフスキ」

 ロシアワールドカップで日本と同じグループに入ったポーランドを分析するとき、決まってその図式で語られる。ポーランドはロシアワールドカップ欧州予選で28得点を記録しているが、バイエルン・ミュンヘンでもゴールを量産するFWロベルト・レバンドフスキはその大半の16得点を記録。その存在が突出しているのは間違いない。

「どうやったらレバンドフスキを止められるか?」

 それは日本の試合戦略上、大きなテーマになるだろう。しかし言うまでもなく、第1ポッドに入った強豪ポーランドはレバンドフスキだけのチームではない。

「日本で中盤のパサーに人気があるように、ポーランドで人気のポジションはストライカーとゴールキーパーですね」

 そう説明したのは、2014年夏から1年半、ポーランド2部のOKSストミール・オルシュティンに所属していた柴村直弥だ。

 柴村は海外プレー経験が豊富で、ラトビアでは国内カップ優勝に貢献し、UEFAヨーロッパリーグに出場。ウズベキスタンでも同国初の日本人選手になっている。Jリーグではアビスパ福岡、徳島ヴォルティス、ガイナーレ鳥取、そして2016年まではJ1ヴァンフォーレ甲府に所属していた。

「ポーランドのFWはとにかく自分で決めたい、という意識が強いですね。一度外しても打ち続ける。そこは気質的なものがあります」

 レバンドフスキを生んだ国だけのことはある。でかくて強い点取り屋はレバンドフスキだけではない。セリエAで活躍するアルカディウシュ・ミリク(ナポリ)も、十分に代役を務められるだろう。そして3番手にいるウカシュ・テオドルチュク(アンデルレヒト)はベルギーリーグ得点王だ。

「ポーランドは大柄なFWが多くて、クロスに合わせるのはうまいですね。居残りでクロスに合わせる個人練習も欠かさず、相手に触ってこぼれたボールまで計算して叩き込むんです。

 手を使うのがうまいのも特長で、並走して裏のボールを追いかけたとき、ディフェンスも手で止める動きをするんですが、その手を押さえ込むようにして、ぐっと前に出て行く。無意識のレベルでその動きができるんです。当然、長い手足を使ったキープ力も目立つし、シュート力の強さも際立ちますね」

 ポーランドではストライカーの得点力が研ぎ澄まされる。巨躯(きょく)を生かしてクロスに入るプレーは確立されており、その迫力は満点。必然的にサイドから入るクロスも重く、速い。

 中盤で細かくつないでアイデアのあるスルーパスで攻めるよりも、サイドからのプレーが攻撃の軸だろう。レバンドフスキがボルシア・ドルトムントでもコンビを組んでいたウカシュ・ピシュチェク、ヤクブ・ブワシュチコフスキの右サイドの崩しは”鉄板”だ。

 そしてペナルティエリアが格闘の場になっていることで、必然的にGKが鍛えられている。そこでゴールを守り抜く姿に、人気が出るのだ。

 ポーランドは、欧州4大リーグのクラブに多くのGKを供給している。プレミアリーグでプレーするウカシュ・ファビアンスキ(スウォンジー)、セリエAで活躍するヴォイチェフ・シュチェスニー(ユベントス)の2人はその筆頭だろう。ウカシュ・スコルプスキ(ローマ)、プシェミスワフ・ティトン(デポルティボ・ラコルーニャ)、アルトゥール・ボルツ(ボーンマス)もそれぞれセリエA、ラ・リーガ、プレミアリーグでプレーする。

 言うまでもないが、これだけのFWとGKが揃っていたら、センターバックやボランチ、セカンドストライカーの人材もそのレベルに追いついてくる。センターバックのカミル・グリク(モナコ)、センターハーフのグジェゴシュ・クリホビアク(ウエスト・ブロムビッチ・アルビオン)の2人は、欧州でも突出して評価の高い選手だ。

「ポーランドは2012年にウクライナとEUROを開催したこともあって、スタジアムなど環境面も素晴らしいです。各クラブも、天然芝の練習場を何面も持っていたり、施設は充実していますね。国内でもトッププレーヤーは年俸2億円前後を稼ぎ出します」

 柴村は国内リーグ事情をそう語った。ポーランド1部リーグの選手平均年俸は約2000万円で、J1よりも少し上だろう。日本ではあまり知られていないリーグだが、欧州各国から選手が集まってしのぎを削り(EU外の外国人選手枠は1部が2人、2部は1人)、そのレベルは想像以上に高い。

 なによりポーランド代表はEURO2016ではベスト8まで勝ち進むなど、日の出の勢いがある。

 ポーランド=レバンドフスキ。この図式は不正解ではないが、正解でもない。